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【夢日記】ある老女の一生

一人の不老不死の男の話である。

ある日、年老いた恋人がふとはっきりとした表情をして「明日死ななければならない」という。
男は何を言っているのかと訝しむが、必死に話す老女が若い頃の姿に見えて、その勢いに圧倒される。本当に美しかったのだ、この恋人は……。
しかしいつ死ぬのか、時間や場所など詳しくは分からないという。
男は考えた末、一日中老女と共に過ごすことにした。

翌日の昼、二人は町の食堂にいた。
鉄板のある小さな食堂で、女は昨日の話などなかったかのように、美味そうに焼きそばを頬張っている。男はそんな女を見ながら、ただひとの死を待つだけの時間を過ごすむなしさを感じている。

女が顔を上げる。昨日と同じ眼光の鋭さだ。大衆食堂の小さなテレビの爆音の中、男は理解した。女が今から死ぬのだ。
これから大きな列車事故が起こる、ブレーキが壊れて暴走するから、それを止めに行くと女は言う。
「君がそんなことをしなくていい」と男は言うが、女の意志は固い。線路に身を呈して止めるのだ。女はわざわざ言わなかったが、男は分かっていた。

テレビの爆音と吊り下がった裸電球の光が、湯気に反射して店内を白く満たしていた。

(2020.12.13)

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