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【小説】My dream, my shop #2

雲ひとつない晴天。道沿いに並んだ木々が眩しい。
今日も暑くなりそうだ。

「Hello.」「Hi!」
「はい、は、ハロー」
元気で明るい声が入り口から届く。

「Here, there was a flower shop, right?」
「Yes, it used to be. Now here is a book shop」
本日の最初のお客様は近くの公園にサイクリングに来た外国人の親子のようだ。
近くには大きな公園があって、サイクリングが盛んに行われている。
緑が多い地域、都心へも通える立地とあって、昔から多くの外国の方が住んでいる。

「Hey, Daddy. I want this!」
「Let me see. Mmm. It's difficult a little bit to you. How about this one? 」
「Noooo. I want this one! I want Harry Potter!」
「Mmm, okey. So why?」
「Because I like magical. I wanna be a wizard!」

なんて、可愛いのだ。なんて、微笑ましいのだ。まだ未就学の女の子は体に不釣り合いな大きさのヘルメットを被っている。それでも、主張は強い。
お父さんのちょっと困ったような、嬉しそうな横顔が本棚の上から覗いている。

この親子のやりとりを聞いていると、日本じゃない感覚を味わせてくれる。
時々、こういう現象が、このお店では起こる。

「あの〜すみません。この本ください」
ハリーポッターのペーパーバックを差し出した。女の子がお父さんの足の後ろでこちらを見つめている。目が薄いブラウン、ヘルメットからはみ出た巻き毛は、まるで天使のようだ。

「Here you are」
「Thank you」
女の子はにっこり微笑んだ。

「ありがとうございます。いってらっしゃいです」
「Thank you. Today is the best day to read a book outside. Under trees though. Have a good day!」
「bey-bey!」
「You too. Have a beautiful day」

女の子はスキップしながら店前に置いた自転車に手をかけた。
「Daddy!! I can't wait to read Harry Potter!」


私は、手を振りながら、自転車で風を切りながら遠ざかっていく二人を見送った。

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