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【小説】My dream, my shop #4(完)
チリチリ。
扉が開いた。扉の前には顔をほんのり紅くして、しっかり防寒した青年が立っていた。青年は、暖かい店内を頬に感じ取るように、ゆっくりとお花を見始めた。本棚も、ひとつひとつを眺め、店内をぐるり数周する。
「すみません。ちょっとプレゼントを探していて」
「花束作ってくれますか」
「わかりました。入れたいお花ありますか?」
「これ」指を指していたのは薄い紫のグラデーションのかかったクリスマスローズだった。
クリスマスローズを数束とって、桃色のラナンキュラス、グリーンを添えた。
「素敵です。ありがとうございます」
花束ができ終わったのを見て、さらに頬を紅くして呟いた。
「あの、彼女へのプレゼントなんですけど、何かお勧めの本、ありますか?」
ぼたん雪が落ちるように彼女の話をしてくれた。
そんな彼に菅原敏の詩集を勧めた。それは愛を綴った綺麗な詩集だった。
春から同棲を考えている二人は、きっとこれからいろんなことを経験していくだろう。楽しいことや悲しいこと、たくさん笑い、たくさん喧嘩もすることだろう。
この詩たちのように、謳うだろう。
再び扉の前に立ったとき、彼はもう頬を紅めていなかった。
まっすぐこちらを見つめ、軽く会釈して深い濃紺の先へと進んだ。
Fin.
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