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057:「全体」でありながら,バルクは消えてしまう

表面と内部の違いをとりわけはっきりさせたい時,表面に対して内部を“バルク”と呼び,表面に対する内部の特性をバルク特性と呼んで区別する.バルクとは“全体”という意味である.p.11
表面と界面の不思議,丸井智敬・井上雅雄・村田逞詮・桜田司

バルクとサーフェイスはそもそも同じモノでありながら,特性が異なるために違う名称が与えられている.サーフェイスがバルクという全体の一部でありながら,異なる性質を持っている.バルクとサーフェイスとは同じモノであり,全体の外側のごく薄い部分が異なる特性を持ち,サーフェイスとなっている.表面と内部との違いをはっきりさせる必要がないときは,サーフェイスはあってもバルクは存在しないこともある.「全体」でありながら,バルクは消えてしまう.そのとき,そこにはサーフェイスしかない.

“おもて”と“うら”はよく使うことばだが,実際には存在しない2次元平面での仮想的な話.現実世界は3次元.紙もホントは厚みを持つ薄い立体だ.この本のページもはじも拡大すれば,“おもて”と“うら”はつながっていて,表面としては同等である.
表面と界面の不思議,丸井智敬・井上雅雄・村田逞詮・桜田司

バルクがなくて,サーフェイスのみがある.表も裏もひとつながりの薄い立体として,サーフェイスがモノを取り囲み「厚み」をつくっているが,それがバルクと名指されるかどうかはわからない.

このようなバルクとサーフェイスとの関係は,「空白」と「欠如」をめぐる無の「厚み」とつながってくるような感じがしている.

「空白」は,「欠如」のさらに〈奥〉あるいは〈裏〉に控えている無である.「欠如」が「欠如」として成立するためにも,「空白」が奥(裏)で利用されざるをえない.
あるようにあり,なるようになる 入不二基義

「欠如」の〈裏〉はひとつながりの〈表〉とつながっているのであろうか.ここでの裏というのは,薄い立体の裏であるとすると,薄い立体とは異なる存在があることになり,「欠如」とは別に「空白」があることになるだろう.しかし,薄い立体の内部を薄い立体をひとつなぎで結ぶサーフェイス=欠如の〈裏〉だとすると,その内部の厚みが「空白」となるだろう.そうすると全体としてのバルクとサーフェイスとの関係のように,内部に全体としてのバルクを持ち,その周囲のサーフェイスが「欠如」となり,「空白」と「欠如」はひとつの存在の別の特性ということになる.そして,特に区別つける必要がないときは「欠如」のみが存在することもあると言えてしまう.しかしそのときにも「厚み」があるのだから,やはり「空白」=バルクがあると言えるだろう.



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