(ホラント卿『外交上の思い出』よりナポレオンが死んだニュースを聞いたタレーランの即評)

ナポレオンは想像を超えた天才であった精力、想像力、才智や仕事の能力、それに創造力に比肩し得る者はおりません。明敏力もあった。判断力の点ではあの人はそれほど優れておりませんでした。それにしても、あの人が時間を掛けようとしてる時には、他人の判断を利用するすべを心得ておりました。彼が判断を誤って我を忘れるというのは稀な事で、それも常に他の人の判断を求める時間のない時でした。(彼は大物としての感情は持っていましたが、洒落者としてのそれは持ち合わせていませんでした。)彼の経歴は過去1000年来初めてというほど驚くべきものです。彼は大きな間違いを3つ犯しましたが、彼の出世ぶりも劣らぬほど驚くべきその失脚ぶりは、その過ちに原因すると申さなければなりません。それはスペイン、ロシア、教皇の3つです。これら3つを除いては彼は政治面において僅かな過ちしか犯しておりません。彼が切り盛りしなければならなかった利害関係の多大さ、彼が関与した出来事の規模の大きさ、重要性、迅速性などを考慮すれば驚くほど僅かな過ちしかないのです。アレは間違いなく偉大な人物でした。桁外れの人物でした…。【彼をすぐそばでよく見ていた私は、彼の事を考え直してみて、そう思う。】私の考えでは、彼は我々の時代に生きた人、ここ何世紀もの間に生きた人の中で最も並外れた人物です。  

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