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最近の中公文庫の「渋いミステリセレクション」が素晴らしい

ども。政宗九です。
今日は軽いネタで、皆さんのご機嫌をうかがいます。

書店で仕事していると、日々の新刊が連日たくさん入ってくるので、すぐにはい次、ってな感じになって流れ作業になりがちなんですが、
時々立ち止まって吟味することも大事かな、と最近思っています。
特に文庫は、どこの出版社も毎月のようにたくさん出されることが多いので、一カ月経つともう次の新刊が出て流れていくものですが、ふと立ち止まって、あれ、なかなかいい本を文庫で出してたな、と感慨にふけります。

そんな中、ミステリマニアの私が最近気づいたことがあります。

「最近の中公文庫、渋いミステリの旧作をどんどん出してるんじゃね?」

そもそも今年(2024年)の1月に、土屋隆夫さんの『推理小説作法 増補新版』を出したあたりから、あれ、って思ってたんですよ。
ちなみにこれは、ミステリ作家になりたい方は必読の名作ですよ。ご自身の経験はもとより、アイデアの断片からどう作品にしたかを紹介したり、実際に発表された短編ミステリをテキストに、小説の書き方を詳しく講義されているのです。オススメ。

そしたら、先月、2024年5月のラインアップがこんな感じでした。

コナン・ドイル『ササッサ谷の怪 コナン・ドイル奇譚集』 2024年5月
細谷正充編『史実は謎を呼ぶ 時代ミステリ傑作選』2024年5月
坂口安吾『安吾探偵事件帖』2024年5月

その月の新刊の中に3作品も、往年の名作ミステリを出してるんですよ。
まあ、『ササッサ谷の怪』はミステリじゃないみたいですが、あのホームズシリーズのコナン・ドイルの隠れた名作集ですよね。
『史実は謎を呼ぶ』はアンソロジーですが、井沢元彦さん、小林久三さん、浜尾四郎さんなど、なかなかなラインアップです。
で、坂口安吾ですよ。
でも実はこれはある種の伏線で、間もなく出る6月の新刊に、

坂口安吾『不連続殺人事件』があるのです!


不連続は角川文庫や新潮文庫でも読めるのですが、この中公文庫の作品紹介によると、

それは、「人生最高のゲーム」だった――
日本の本格ミステリ史上屈指の名作『不連続殺人事件』。その誕生背景には、若き文学者たちが戦時下に行なった伝説の「犯人当て」イベントがあった。
荒正人・大井広介・平野謙ら、坂口安吾の〈ライヴァル探偵〉たちによる貴重な回想・証言と、小説本文を初めて一冊に。

とあるので、恐らく(まだ出てないので想像ですが)、坂口安吾が自ら懸賞金を出して犯人当ての懸賞小説として『不連続殺人事件』を連載していた、その犯人当ての顛末も全部載せてるのでは? と思います。なんとマニアックな。

そしてさらに、7月には
ドゥーセ『スミルノ博士の日記』
が出るのですよ! マジか!


これ、クリスティーの「あの作品」が世に出る前に、同じアイデアを使った作品として有名ながら、なかなか読めない作品だったんですよね。まさか『スミルノ博士の日記』が読める時が来ようとは!

なんかこの流れ、ちょっと期待してしまいませんか?
なんなら、和久峻三の『雨月荘殺人事件』の二分冊ものの復刊とか、
あの証拠品付きミステリ『マイアミ沖殺人事件』も復刊してくれないかなあ、と夢想したりします。あ、文庫では証拠品付きは無理か……。

とにかく頑張れ、中公文庫!


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