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証拠物件、公判調書、果ては「ジグソーパズル」まで! いろんなモノがついていたミステリ小説

昔のミステリには、本だけでなく、いろんなものが付いていたケースがある。付録、という表現も変だが、まあそんな感じ。
現在だと、こういうのはなかなか作れないだろうな、と思うような本をいくつか紹介したい。

・『マイアミ沖殺人事件』デニス・ウィートリー 中央公論社(現・中央公論新社)

マイアミ沖殺人事件

1982年刊。
現場の写真が載っている、だけならありがちだが、これはなんと現場に残されていた髪の毛やマッチなどの「証拠物件の現物」が付いていた。
現物を見ながら推理する、という異色のシリーズで、4冊出ていたはず。
『誰がロバート・プレンティスを殺したか』
『マリンゼー島連続殺人事件』
『手掛かりはここにあり』

最初の『マイアミ沖殺人事件』のみ文庫になっているが、こちらではさすがに現物は付いておらず、写真が載っていた。

『マイアミ沖殺人事件』を詳細に解説しているブログ「TORIO’S BLOG」があったので紹介する。
https://rsn604.github.io/book/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%9F%E6%B2%96%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%83%87%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC/

・『雨月荘殺人事件』和久峻三 中央公論社(現・中央公論新社)

雨月荘殺人事件

裁判記録をそのまま本にした、という趣向の小説。1988年刊。
かなり大きな本で、冒頭の一部は用紙や手書きの雰囲気まで公判調書そのままを模写しており、こちらも現物を読む感じだった。
公判記録をそのまま読んで面白いのか、と思われるかも知れないが、これがなかなかドラマティックで面白かったのだ。
日本推理作家協会賞受賞作。
文庫は中公文庫から「箱入り2分冊」(講義形式の解説別冊つき)で出た。
「日本推理作家協会賞受賞作全集」の1冊として、双葉文庫からも出た。どちらも入手困難。

先の「TORIO’S BLOG」にこの作品も紹介されている。
https://rsn604.github.io/book/%E9%9B%A8%E6%9C%88%E8%8D%98%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E5%92%8C%E4%B9%85%E5%B3%BB%E4%B8%89/

・『シャーロック・ホームズ10の怪事件』ゲーリー・グラディ 二見書房

シャーロック・ホームズ10の怪事件

これもかつてはよく売れた本。1986年刊。
ホームズのパロディものの一種だが、当時のロンドンの地図や新聞、住所録がついたもの。
事件発生後、関係者や容疑者と思われる人物のところに行ってそのページを読みながら推理する。ゲームブックのような雰囲気。なるべく少ない項目を読んで真相を当てた方がポイントが高くなったはず。
続編として『呪われた館』も出ていた。

ボードゲーム紹介サイト「ボドゲーマ」に紹介記事あり。
https://bodoge.hoobby.net/games/sherlock-holmes-criminal-cabinet/instructions/14732

・『あわせ鏡に飛び込んで』井上夢人 ワニブックス
1991年刊。
これは珍品中の珍品。新書版の小説に「ジグソーパズル」が付いていて、事件の謎を解くカギがジグソーパズルの絵に隠されており、パズルを完成させなければ解決できない、という趣向。
私が実際に購入して読んだのは井上夢人さんの『あわせ鏡に飛び込んで』のみだった(あまりに珍品なのと、それなりに高価だったので買えなかったのだ)。
小説は後に講談社文庫の同タイトルの短編集に収録された。

井上さんのサイトに紹介あり(下にスクロールしてください)
「まるで売れなかった」とのこと。
http://www.yumehito.com/cn7/cn20/pg347759.html

このシリーズ、約10作品出ていたそうだ。
太田忠司さんのサイトで、太田さんの作品『ペットからのメッセージ』も紹介されている。
http://tadashi-ohta.in.coocan.jp/list/fuzimori.html

井上夢人さんのサイトによる紹介によると、井上さんの元相方(岡嶋二人の片割れ)田奈純一さんも別名義で書かれていたらしい。

以上、いろんなモノがついたミステリを懐かしみながら紹介してみた。
たぶん、ほかにもいろいろあると思うのだが、私が知っているのはこのあたりまでです。

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