NPB 2023年ペナントレース順位予想


全般
①セ・リーグも、パ・リーグも、戦力は「拮抗」から「二極化」へ。
カギは「救援投手力」と「長打力」。
リリーフ、中継ぎ投手の効率的な運用と長距離砲の育成
②WBCの影響(見えない疲労、燃え尽き症候群)
③新監督・新体制(阪神、広島、西武、ロッテ)
④交流戦の影響
⑤チームとしての「一体感」が優勝に導く



①セ・リーグも、パ・リーグも、戦力は「拮抗」から「二極化」へ。
カギは「救援投手力」と「長打力」。
救援投手の効率的な運用と長距離砲の育成

セ・パともに昨年までは戦力が拮抗していたが、いよいよ「二極化」が見えてきた。

リーグ優勝のカギは「救援投手力」と「長打力」である。
近年、NPBでも救援投手への依存度が高まっている。
規定投球回数に達する先発投手がチームに一人いるかいないかという状況だ。
(だからと言って、勿論、先発投手がコマ不足でよいというわけではない)
従って、中継ぎ投手の登板過多の回避や、どの場面でどの投手を投入するのが最適か、という効率的な運用が求められている。
シーズン前半と後半で、中継ぎ投手の運用を分ける「二期作」というスタイルも増えるであろう。

「長打力」に関しては得点力に直結している。
いくら単打を積み上げても、ホームラン1本の破壊力に勝るものはない。
近年、外国人選手に長打力を頼ることが難しくなっており、各チームとも自前で長距離砲を育成できるかどうかが、チームづくりの要になる。
本拠地の広さや形状により、ホームランが出にくいチームはやはり慢性的に苦戦を強いられる。

②WBCの影響(見えない疲労、故障リスク、燃え尽き症候群)

WBCの存在も、今季のペナントレースに影響を及ぼすかもしれない。
WBCに参加した選手たちが得られるメリットは長期的には計り知れない。
今回のWBCは特に、ダルビッシュ有、大谷翔平、ラーズ・ヌートバーという現役メジャーリーガーが参加しており、一方、NPBから選出された選手たちは比較的、若くて代表経験が初めてという選手も多かった。
連日にようにダルビッシュ有が若手選手たちの「メンター」となっていた姿が報道されており、優勝という果実と共に、若手選手たちは大いなる「財産」を手にしたことだろう。
しかしながら、参加している中心選手たちはかなり早くから準備を強いられ、特に投手はWBC球への対応に腐心していた。
故障リスクも増大する。
WBCでは日本代表が見事、優勝を果たしたが、一方で優勝すればしたで、選手たちは歓喜と共に、シーズン前に疲労と「燃え尽き症候群」を味わう可能性もあり、非常に厄介である。

③新監督・新体制(阪神、広島、西武、ロッテ)

今季から新しく指揮を執るのは、阪神・岡田彰布監督、ロッテ・吉井理人監督、西武・松井稼頭央監督、広島・新井貴浩監督の4人だ。
そのうち、吉井監督、松井監督は事実上の内部昇格である。
岡田監督は2008年以来の阪神復帰、監督として指揮を執るのもオリックス監督を退いて以来、9年ぶりとなる。

新しい指揮官を迎えたチームの監督とヘッドコーチの組み合わせは以下の通りである。

阪神 岡田彰布-平田 勝男
ロッテ 吉井理人-福浦和也
西武 松井稼頭央-平石洋介
広島 新井貴浩-藤井彰人

現代の野球は、「全知全能」の監督が采配を振う、という時代ではなくなってきている。
それぞれの監督がどういう個性を持ってチームを牽引していくのか注目だ。

④交流戦の影響

交流戦の18試合をどう戦うかも、影響がある。
勿論、同一リーグのチームから勝とうが、異なるリーグのチームから勝とうが、1勝は1勝であり、過剰に神経質になる必要はない。
普段、対戦のない異なるリーグの投手や野手への対策に労力を使いすぎるのも得策ではない。特に昨シーズンのパ・リーグのように、特に同一リーグ内での星取りは、優勝を左右する。
ただ、交流戦で大きく勝ち越すに越したことはないが、最低でもあまり取りこぼさないことが重要だ。

⑤チームとしての「一体感」が優勝に導く

最後に「優勝」を決める要素は何か?について私見を述べたい。
ヤクルトとオリックスの2連覇、WBCでの日本代表の優勝を見るに、それはチームとしての「一体感」ではないかと思う。

厳しい規律はチームに一時的な緊張をもたらし、引き締めることができたとしても、アスリートといえども人間の緊張は長くは続かない。

いまの若い選手たちは、個の力を伸ばすことや、その先のMLB挑戦などの自己実現には貪欲な面もあるが、チームの優勝のために貢献する、自分を犠牲にできるかといえば、それはまた別の問題に見える。
連覇したヤクルト、オリックスは指揮官がいかに良い雰囲気で選手がプレーできるかに腐心しているように見える。
要するに、健全な「競争」の中に、「協調」が無ければ、チームとしての向上はないと言えよう。
これは近年、経営学でも、「コーペティション(co-petition)」戦略と言われ、「競合同士の企業が、ある部分において協調することでメリットを享受する」という戦略である。
野球のようなチームスポーツでは、選手間で競争しながら、一つの目標に向かって志を共にできるかがより大事になってきていると考える。

特にリーグ優勝から遠ざかってるチームは、優勝の味を知るベテランの選手たちが、「優勝はこんなに素晴らしい」ということを伝承できるかどうかに掛かっているのではないだろうか。
WBCに参加した選手がチームに優勝という体験を持ち帰ったこともプラスに働くだろう。

パ・リーグ
①ロッテ、オリックス、ソフトバンクまではリーグ優勝の可能性あり。
②しかし、ソフトバンクは戦力の入れ替え中、オリックスは吉田正尚の抜けた穴があり、効果的な補強と長距離砲を育成したロッテが抜け出す。
③各チームのエース・山本由伸、佐々木朗希などの先発ローテーションも影響。


総合力でいえば、大型補強を完成させたソフトバンク、2連覇のオリックスだろう。
ソフトバンクは近藤健介、嶺井博希、有原航平、ジョー・ガンケル、ロベルト・オスナ、オリックスは森友哉が加入した。
しかしながら、それでもソフトバンクは千賀滉大、オリックスは吉田正尚の穴を埋めることが難しい。

また、絶対的エースとの対戦もペナントレースの行方を左右する。
昨季、山本由伸に5敗を喫したロッテは5位に沈み、楽天は高橋光成に0勝4敗、千賀に0勝3敗するなど、同じ投手に何度もやられると上位への浮上は難しくなる。
山本由伸と佐々木朗希などのエース投手の先発ローテーションにも注目したい。

3位 福岡ソフトバンクホークス

ソフトバンクは若い戦力が台頭する上に、大型補強して強いように見える。
だが、まだ戦力が入れ替わっている途上だ。
先発投手陣は、千賀滉大の穴を、ガンケルと有原航平と、開幕投手が内定している大関友久らの若手で埋めれらるか。
打の中心となる柳田悠岐は故障がちでフルシーズンの活躍に疑問符が付く。
柳田の活躍に加え、故障明けの栗原陵哉が万全の状態で戻って来ることが優勝への条件になりそうだ(栗原はオープン戦首位打者と好調)。
大砲候補のリチャードの覚醒も待たれる。

2位 オリックス・バファローズ

オリックスは投手陣がかなり強力だが、吉田正尚なきあとの打線はそこまで磐石ではない。
山本由伸もMLB移籍直前のシーズンということでフル回転は憚られる。
杉本裕太郎が30本近く打って復活しても、優勝にはもう1枚、大砲が欲しい。
FA加入の森友哉は成績が隔年で変動する選手で、移籍で新たな環境という不安要素がある。
成長著しい中川圭太、新加入のマーウィン・ゴンザレス(前ニューヨーク・ヤンキース)、フランク・シュウィンデル(前シカゴ・カブス)で吉田正尚の穴をどこまでカバーできるか注目だ。

1位 千葉ロッテマリーンズ

ソフトバンクとオリックスの間隙を縫うことができそうなのがロッテだ。
井口資仁監督の辞任に伴い、吉井理人監督が就任、コーチ陣もほぼ一新された。
ロベルト・オスナを失ったのは大きいが、佐々木朗希を筆頭にパ・リーグではトップクラスの先発投手陣が揃う。
中継ぎ投手陣に不安はあるが、澤村拓一が復帰したのもプラスだ。
野手陣も、長距離砲として成長著しい山口航輝は25本、覚醒間近の安田尚憲も20本近いホームランが期待できそう。
さらにグレゴリー・ポランコが加入したことで、懸案の長打力不足も解消できそうだ。
心配なのは、WBCに参加した佐々木朗の疲労度合だ。
今季はWBCに向けて調整が早まった分、見えない疲労も蓄積している。
佐々木朗をよく知る吉井理人監督の手腕が問われるだろう。
豊富な先発陣を活用して、休養を与えながらのローテーションになるかもしれない。
また、吉井監督は勝ちパターンでの投手運用で、「レバレッジ方式」なるものをほのめかしている。
これはMLBで流行しつつある、クローザーを確定させず、場面の重要度に応じて、リリーフ陣を運用するという考え方だ。
MLBをよく知る吉井監督・黒木投手コーチがリリーフの運用に新しい風を吹き込むのか注目だ。

4位 北海道日本ハムファイターズ

新球場に移転の日本ハムは新庄剛志監督が「優勝しか狙っていない」と鼻息が荒い。
確かに、野手は近藤健介が抜けたものの、戦力がかなりそろってきた。
清宮幸太郎は30本近くホームランを打つ可能性が高く、万波中正、今川優馬も20本近く打てる力はあり、得点力のアップは期待できる。
やはり先発投手陣が伊藤大海、上沢直之、加藤貴之以外が苦しいが、オープン戦でカルロス・ポンセが好投した。
中継ぎ・抑えにも不安があったが、オープン戦を通じて好投した石川直也がクローザーに固定できそう。
優勝の味を知る伏見寅威の加入は大きく、若い投手陣の底上げに貢献するだろう。

5位 埼玉西武ライオンズ

松井稼頭央新監督を迎えた西武は、昨シーズンの投手陣は先発投手の防御率が2位、救援投手の防御率も1位と整備されており、野手も森友哉の穴はあるものの、若くて楽しみな選手も多い。
だが、課題は山川穂高以外の長距離砲が育っていないことだ。
ドラフト1位の外野手・蛭間拓哉(早稲田大学)は出場機会が与えられ、ケガさえなければ新人王候補となるだろう。

6位 東北楽天イーグルス

正念場を迎えるのが楽天だ。
中日から阿部寿樹が加入し、野手陣は厚みを増したものの、依然として長打力を浅村栄斗に頼ることになり、投手力も田中将大、則本昂大以外に確実に期待できる先発陣が不在だ。オフには石井一久監督の責任問題に発展するかもしれない。


1位 ロッテ
2位 オリックス
3位 ソフトバンク
4位 日本ハム
5位 西武
6位 楽天


セ・リーグ
①総合力はヤクルト、DeNA、投手力は阪神
②中日は来季以降に期待
③巨人は投手力ダウンが回復せずBクラス
④台風の目・広島


セ・リーグを見ると、総合力はリーグ2連覇のヤクルト、昨シーズンの夏に猛迫を見せたDeNA、そして投手力の阪神の三つ巴になるだろう。

2位 東京ヤクルトスワローズ

リーグ3連覇、日本一奪還を目指すヤクルトは、打線は村上宗隆を筆頭にトップクラスだが、投手陣には不安がある。
オープン戦で好投を続けるドラフト1位の吉村貢司郎(東芝)は開幕ローテーション入りが確実される一方、クローザーのスコット・マクガフが抜けた穴をどう埋めるか。
2021年優勝に貢献した奥川恭伸がいつ戻ってこれるのか。
2021年の今野龍太、2022年の木澤尚文のような中継ぎエースが現れるか。
リーグ2連覇中は同点、あるいはビハインドで踏ん張ってくれる中継ぎが生命線だった。
特に2022年は6回終了ビハインドからの勝敗が11勝48敗と、12球団でダントツに勝率が高かった。

優勝 横浜DeNAベイスターズ

DeNAはトレバー・バウアー(前ロサンゼルス・ドジャース)を獲得して驚かせたが、そうでなくても投手・野手ともに戦力は充実している。
先発投手に左が揃っていることが強みだ。
ショートのレギュラー候補に京田陽太を迎えたことも大きい。
ただ、毎年、主力のケガによる離脱で選手層の厚さが問われる。
今季はタイラー・オースティンの復帰が未定だ。
山崎康晃の残留は大いなるプラスだが、慢性的に中継ぎ投手の酷使も払拭されない。
しかし、戦力が揃えば、一気に優勝を狙えるのは間違いない。
声出し応援の復活で、恩恵を受けるチームの筆頭と言えよう。

3位 阪神タイガース

阪神は満を持して岡田彰布監督が再登板し、期待も高い。
投手陣は12球団でもトップクラスと言えるくらい充実している。
課題の得点力、特に長打力は、大山悠輔、佐藤輝明が合わせて60本、シェルドン・ノイジーかヨハン・ミエセスが20本近く打てば優勝も見えるが、大山、佐藤以外の野手の長打力は未知数である。
ドラフト1位の森下翔太がオープン戦で結果を残しているのは朗報だが、
特に二遊間の選手が守備・打撃面で機能するのか、中野拓夢がWBCの代表に選出されたことも影響するのではないか。
岡田監督の卓越した野球理論、采配はいまでも有効だとは思うが、就任初年度に一気に「アレ」を狙うとなると、中継ぎ投手の運用も激しくなることが予想される。
岡田監督にとってとにかく初年度が大事であって、ここでしくじれば、求心力を一気に失うことにもなりかねない。
シーズン中、投打の歯車が狂った時に、選手たちが「笛吹けども踊らず」という状態になるのが怖い。(岡田監督の最終年となった2014年のオリックス)

4位 広島東洋カ―プ

新井貴浩・新監督率いる広島は面白い存在だ。
先発投手陣は大瀬良大地、森下暢仁、九里亜蓮、床田寛樹と名前で抑えられる投手が揃っており、特に左腕の床田がケガなく完走すれば15勝、最多勝・最優秀防御率のタイトルも狙えるし、Aクラスも見えてくる。
しかし、手術明けの森下暢仁、オフにフォームを改造した九里もフルシーズンで見てどうなるか。
中継ぎはタフな投手が揃っており、適度な入れ替えもあり、クローザーの栗林良吏は腰痛でWBC日本代表を離脱して心配されたが、軽症で済んだ模様でそうであれば今季も磐石。
攻撃面も、昨シーズンは鈴木誠也の穴が埋まらなかったが、来日2年目のライアン・マクブルームが日本の野球に対応してきており、ホームラン30本近く打てば、上位への浮上が見える。
懸念はベンチワークである。
新井監督-藤井ヘッド・コンビのやりたい野球像が選手にどの程度、早く浸透するか。

5位 読売ジャイアンツ

菅野智之、戸郷翔征という新旧のエースが牽引するが、昨シーズン現れた若い先発投手たちがシーズンを通してどれくらいやれるのか、まったく読めない。
C.C.メルセデスを手放したこともマイナスだ。
クローザーは大勢がいて磐石だが、中継ぎ陣が不安だ。
育成契約の左腕の中川皓太が戻るまで、信頼できる高梨雄平の登板過多も心配である。
攻撃面は、坂本勇人の後継者としてドラフト4位ルーキーの門脇誠を評価する声も高いが、長打力で圧倒する打力がないと上位への浮上はしんどい。
岡本和真が40本近く、中田翔が30本超え、丸佳浩も20本超えして、初めてAクラスが見えてくるのではないか。
今季もBクラスとなれば、原監督の責任問題は不可避だろう。

6位 中日ドラゴンズ

巧打者の阿部寿樹を手放してまで、ベテラン右腕の涌井秀章を獲得する一方、オープン戦では二遊間に(土田)龍空、新人の田中幹也(右肩脱臼で離脱)、福永裕基を抜擢するなど、「新時代」のドラゴンズをつくろうとする強い意志は見て取れる。
投手陣も、広いバンテリンドームをバックに投げる先発・中継ぎのコマは充実している。
しかしながら、このチームも課題は長打力。
打順1番に最多安打の岡林勇希、2番に三冠王の村上宗隆と最後まで首位打者を争った大島洋平を擁しながら、クリーンアップの長打力不足で12球団最低の本塁打数・得点力となってしまった。
さらに阿部が昨シーズン、記録した57打点の穴を埋める必要がある。
新外国人選手のアリスティデス・アキーノへの期待が高まるが、もともと外角の変化球に弱く、シーズンに入ると右投手の外角低めへの変化球攻めにどう対応するかがカギとなりそうだ。

改めて、セ・リーグの順位予想は以下の通りである。

1位 DeNA
2位 ヤクルト
3位 阪神
4位 広島
5位 巨人
6位 中日


ちなみに、2022年の順位予想は以下の通りの結果に。

1位 ロッテ →5位
2位 オリックス →優勝
3位 ソフトバンク→2位
4位 楽天 →4位
5位 西武 →3位
6位 日本ハム →6位

1位 阪神 →3位
2位 ヤクルト →優勝
3位 DeNA →2位
4位 巨人 →4位
5位 中日 →6位
6位 広島 →5位

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?