巨人2代目ウグイス嬢・山中美和子さん、現役引退、3人の新ウグイス嬢にバトンタッチ

読売ジャイアンツの外野手・亀井善行が10月21日、都内のホテルで記者会見を行い、今季限りで現役引退すると発表した。
巨人はクライマックスシリーズへの進出を懸けて、レギュラーシーズンは残り2試合あるが、東京ドームで10月23日に行われる、東京ヤクルトスワローズとの本拠地最終戦の終了後に引退セレモニーを行うという。

亀井善行は奈良県出身、大阪・上宮太子高校を経て、2004年に中央大学からドラフト4位で巨人に指名され入団してから、巨人一筋17年、勝負強い打撃と確かな外野守備で、巨人ファンはもとより、他球団のファンからも愛された。原辰徳監督が代表監督を務めた2009年のWBCでは侍ジャパンの一員にも選出され、世界一にも貢献した。
2020年には球団最年長となる37歳11か月で通算1000安打に到達、今季は開幕戦で代打で登場し、自身7本目となるサヨナラ本塁打を放ち、NPB史上初となる「開幕戦での代打サヨナラホームラン」をマーク、6月5日には、NPB史上4人目の年長での通算100号本塁打を記録していた。

一方、巨人では同じ日に、亀井よりも生え抜きの「大ベテラン」が「現役引退」する予定になっている。

巨人で45年間、ウグイス嬢を務めてきた山中美和子さんである。

“ジャイアンツの2代目ウグイス嬢の山中美和子さんは、1956年(昭和31年)11月4日、神奈川県に生まれた。神奈川県立の追浜(おっぱま)高校では野球部のマネジャーを務めた。高校卒業後、神奈川県高野連に就職した。当時、県下強豪の東海大相模高校の試合の場内アナウンスを受け持ち、「四番、サード、原辰徳くん」とアナウンスしたこともある。その後、ジャイアンツの場内放送係募集に応募して採用された。”

山中美和子さんは1977年に巨人の球団職員として入社し、巨人の初代ウグイス嬢である・務台鶴さんから場内アナウンスの手ほどきを受けた。見習いとして最初に後楽園球場の場内放送室に入った試合、9月3日に、歴史的な偉業を目撃した。

その日に行われたヤクルトスワローズとのナイトゲームで、王貞治が通算756号本塁打を放って、米メジャーリーガーのハンク・アーロンがつくったMLB最多の通算755本塁打を抜いたのである。

それから45年、山中さんは巨人の主催試合で3000試合以上の場内アナウンスを務めた。
入社して2年目の1978年5月には、ウグイス嬢の先輩の務台鶴さんが闘病の末、亡くなるという悲報に見舞われたが、1980年からは新たなウグイス嬢として、現在も活躍する渡辺三保さんも加わり、2名体制となった。
1978年8月30日、王貞治が通算800号本塁打を放った試合は山中さんが場内アナウンスを担当した。
1989年のシーズンからは「仕事場」が後楽園球場から東京ドームへと変わった。2015年、8月5日のヤクルト戦はチーム1万試合目となったが、この試合も山中さんが場内アナウンスを務めた。2016年に球団職員としての定年を迎えたが、その後も嘱託社員として場内アナウンスを続けてきた。
その間、山中さんが目撃した巨人のリーグ優勝は18回、日本一は8回を数える。


山中さんは引退を決めた理由を、こう語った。
「アナウンスを危うく間違えそうになり、ドキドキすることが多くなったから。常々、『ちゃんとできているうちに辞めたい』と思っていた」

昨年2020年12月、巨人は42年ぶり、渡辺三保さん以来となるウグイス嬢を募集した。
794人の応募の中から、高橋みずきさん、山本菜月さん、小倉星羅さんの3名が抜擢された。
狭き門を突破した3人は、2月27日、ジャイアンツ球場で行われた巨人対西武の二軍戦で、実戦デビュー。その後、巨人の二軍・三軍での20-30試合で実戦を積み、それぞれ一軍デビューを果たした。

6月1日、交流戦の対西武戦で、まずは高橋みずきさんがデビューした。
東京都出身の高橋さんは姉の影響で小学生から巨人ファン・野球ファンになった。高校時代に野球部マネージャーとして、初めて場内アナウンスを行った。
駒澤大学入学後も、野球部のマネージャーを務め、東都大学野球リーグ、日本大学野球選手権などでアナウンスを務めた。大学卒業後も一般企業で会社員として働きながら、都市対抗野球をはじめ、国際大会や親善試合などでアナウンスを続け、場内アナウンスの経験は16年を数えるという。

それを祝うかのように、巨人の主砲・岡本和真が自身通算100号となるホームランを放ったが、4-1と3点リードで迎えた9回、西武は森友哉の7号2ラン、メヒアの1号ソロ本塁打で、4-4の同点に追いつき、最後は平良海馬が開幕から27試合連続無失点でパ・リーグ新記録をマークし、試合は引き分けに終わった。
残念ながら、巨人は高橋さんの初陣を勝利で飾ることはできなかった。
(メヒアはその後、シーズン途中で帰国、西武を退団したため、NPBで最後のホームランとなった)

7月13日、ヤクルト戦でウグイス嬢としてデビューしたのが、小倉聖羅さんである。
小倉さんは神奈川県出身で、子役として幼少より芸能活動を行っていたが、弟が高校球児だったことから野球に興味を持った。フェリス女子大学卒業後、2008年から広島テレビのアナウンサーになり、2011年からフリー、2015年からは千葉テレビでアナウンサーを務め、野球を中心にスポーツ番組のキャスター、MC、レポーターなどを数多く経験した。現在、早稲田大学大学院社会学研究科修士課程ジャーナリズム専攻でスポーツジャーナリズムを学んでいる。

この日、ヤクルト打線が大爆発し、3回に村上宗隆、吉田大成のプロ初本塁打、サンタナと3本のホームランが飛び出し、その後も、4回に、山田哲人、5回に、オスナ、サンタナが2本目、8回には再び村上宗隆と、巨人投手陣は計7本の本塁打を浴びた。ヤクルトの1試合7本塁打は球団最多タイ記録であった。
巨人は7-14で敗れ、小倉さんの初陣を飾ることができなかった。

8月14日、中日ドラゴンズ戦で、山本菜月さんがデビューした。
山本さんは千葉県生まれで、日本大学の芸術学部・映画学科の演技コースを2016年に卒業後、フリーアナウンサーとして活動。モーターレースの会場や各種イベントでMCを務めたほか、博物館のナレーションを担当するなどの活動を続けてきた。野球と巨人が好きで、大学時代には東京ドームでビールの売り子のアルバイトも経験したことがあるという。

この日、巨人は初回、丸佳浩が11号2ラン本塁打、6回にも2本目となる12号2ラン本塁打と1試合4打点をマーク、8回に岡本和真が28号ソロ本塁打を放ち、投げても先発のC.C.メルセデスが、東京五輪2020野球のドミニカ共和国代表から復帰初登板で5回1失点と好投して、6-1と快勝した。

巨人の新ウグイス嬢3人の一軍デビュー戦は1勝1敗1引き分けとなったが、彼女たちと、渡辺三保さんにウグイス嬢の仕事を引継ぎ、現役引退する山中美和子さんのラストゲームはどんな試合になるのか。

亀井善行の出番と共に、山中美和子さんのラストアナウンスにも注目が集まる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?