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バルセロナにいってきた

昨年の秋ですがバルセロナのスマートシティエキスポに行ってきたことをアウトプットしてなかったので遅ればせながら感じたことをメモ。

スマートシティエキスポ


https://www.smartcityexpo.com/

登壇してプレゼンしてきました。弾丸出張だったのでゆっくり見れなかったけど。会場は昔はIoTセンサーの展示や都市OSが多かったそうですが今年はモビリティ、都市のダッシュボードが多かった。都市OSのfiwareのブースがとてもおおきくて勢いを感じた。
また国別では韓国のブースが圧倒的に大きく目立っていた。全体の賞も韓国が受賞。国も支援してスマートシティ関連の事業の海外へ展開の後押しをしてるそうです。
バルセロナといえばグローバルなイベントを多数開催しているけどその主催者にもお会いして話を聞けた。元々はバルセロナオリンピックのレガシーとして、オリンピックの後に何を残そうか?という時に新たなグローバルイベントを作ろうと。それにしてもモバイルやスマートシティというテーマ設定が抜群にセンスがいいなあと思いました。またビジネスイベントを開催すると世界中からビジネスマンがくる。ビジネスマンは観光客として見ても単価が高いので重要視してるというようなこともおっしゃってました。
日本からも官民のスマートシティ関係者が勢揃いなくらい参加していて、現地でたくさん交流して仲良くなれたのも大きな収穫でした。
夜は世界の街のCIOが集まるサイドイベントにも参加。英語苦手で苦労したけど、刺激になりました。ウクライナのキーヴからもCIOが来ていて戦時下の街のスマートシティの取り組みなど刺激あるテーマだった。

交通においてはマイクロモビリティがトレンドに


モビリティの展示もおおかった。しかし自動運転の展示や空とぶ車などの派手な展示はほぼなくマイクロモビリティの話題が多かった印象だった。
バルセロナの街も車道をどんどん潰して歩行者、自転車道路にしていて、たくさんの人がシェアバイクやeバイクで移動していました。セミナーやパネルディスカッションのテーマも自動運転のようなハイテク型よりもむしろ自転車やebikeをどう今の交通にと入れるかがホットで数も多かったような気がする。
自家用自動車を道路から減らすことで(代わりにバスはとても便利でした)、自動車の量が減り、大気汚染の数値が改善、歩行者が増えたことで大通りやその裏側のストリートの人通りが復活しその結果小さなビジネスが繁盛(商店街とかですね)しチェーンストアに侵食されやすい観光都市バルセロナのおいて大きな役割を果たしているそうです。
これらの効果は全て道路に埋め込まれたセンサーやいろんなデータでデータによって可視化されています。バルセロナは欧州で最もデータを利活用した都市計画をしており、特に交通シミュレーションにおいては緻密な分析をデータでやっていました。日本だと交通調査員によるカチカチやるやつなのでここの差は大きいなと感じました。移動の手段(車など)の技術革新よりも、道路空間の利用の仕方を再編に向かってる印象でした。また同行した先生いわく、世界でも最先端に交通シミュレーションが進んでいてここは日本でもまだまだだとのことでした。

ここも歩行者中心の街に転換した元道路

スペインのスタートアップ戦略


スペイン投資庁主催のスペインのスタートアップとの交流会にも参加、プレゼンもしてきました。バルセロナのスタートアップエコシステムも拡大していてユニコーン企業がすでに6社も生まれたとのこと。バルセロナやスペインだけに閉じずにベルリンやパリ、ロンドンといったEUの他のエコシステムとも連携していおり、初期段階から企業が他国のアクセラレータプログラム(企業を養成する支援プログラム)に参加してグローバルを意識されてる点が、東京都のスタートアップ支援の事業には不足してる視点だと思いました。バルセロナの人とも意見交換をして東京のスタートアップエコシステムと連携し企業を相互交換できるといいねという話にも。
バルセロナが運営している公的なスタートアップ施設のアクティバにも訪問。ここは無料でどんなスタートアップも入居して事業を作る初期段階での支援が受けれます。経営のベテランのメンタによる指導もあります。さらに海外のエコシステムとの連携しています。
1980年代から実施しており歴史もあるため数多くの上場企業が誕生しています。組織のミッションは”質の高い雇用を作る会社を作る”です。1980年代のスペインは失業率が20%を超えて問題になっていたから雇用対策が最重要なテーマに。どうせう雇用を作るなら未来を創る質の高い雇用を生み出そうということでその担い手はスタートアップだよねと。スタートアップ施策をなぜするのか?という時に”質の高い雇用”という視点は重要だなと感じました。
我々の子供たちは親の世代になかった職業に就くだろう、という予測がありますがそのためにもスタートアップ政策は大事。もしスタートアップが不活発だと、子供達が大人になった際に、親と同じ職業や親世代での就職人気ランキング上位企業に同じく就くことになりかねない。

企業名の色は業種を表している。時代の変化とともに色が変わっていくことで視覚的にスタートアップの変遷がわかって面白い。

バルセロナのデジタルサービス局


バルセロナの情報局にも訪問して意見交換。人口が160万人ですが情報局の職員が250人。欧州で最もデジタル化が進んでいる自治体と言われるだけあって人口に対する情報技術者の分厚さを感じました。1967年にフランコ独裁政権時代からデジタル局を設置している伝統の凄み。特徴は徹底したデータを活用したシミュレーションです。あらゆる政策効果はデータで事前に計算し事後もデータでオープンデータ化されて公開されます。
現在のトップのジョルディさんはかつてはバリバリのプログラマだったそうですが2005年に大きな組織改革があって今は内製化はせずにアウトソースになってるとのことです。ここは日本の行政の現状と同じですね。コンピュータサイエンスの専門家が多数入っていて、行政の事務の専門家と一緒に取り組んでいます。デジタルの予算については全てこの部署でチェックをしてるとのことでした。デジタル予算のガバナンス構造の確立でヒントになった。

Decidim:


https://decidim.org/ja/
またこれらのデータを見て市民が自由に参加できるプラットフォームがあります。decidim(みんなで話し合って決める、というカタルーニャ語)というオープンソースのシステムがあり市民が認証した上で議論をして政策や予算に関与していきます。
なぜ市民参加のデジタル技術を大切にしているのか?
長らくフランコ独裁政権の時代が続き、市民が自由に街づくりに参加できる民主主義がなかった。それをようやく手に入れることができた。デジタル技術も民主主義に役立つ使い方へ。独裁的な国、権威主義的な国のスマートシティはセンサーをばら撒いてデータを政府が集めて市民のことを管理する方向にいきがち(に見える)。欧州はどちらかというと市民が政治に参加するプロセスにdecidimのようなデジタル技術を使って参加を促して民主主義をデジタル技術で強化する方向に行っているのが印象的でした。東京都も含めた民主主義陣営の国のスマートシティは欧州型、市民参加型にデジタルを使うのが筋が良いと感じました。
東京都でも予算編成や事業提案で市民参加の仕組みがあります。あれをより洗練されたオープンソースのプログラムの上で実施しているのがdecidimなんだろうか。すでにNYCやEUを初めて世界20カ国くらいで採用されていて日本語化も。都内でもいくつかの自治体で検討しています。

ファブラボ


カタルーニャ工科大学の併設のファブラボへ見学に。世界で最初の大規模なファブラボとのこと。学生や専門家に加えて市民も使えます。レーザーカッターや3Dプリンターなどが多数。太陽の移動に伴う光の当たり方を計算して最も効率の良い屋根局面を算出しその微妙な形状をレーザーカッターで切り出して実際の家を作ったり、バルセロナ全体の都市の1/1000スケールのデータからレーザーカッターで木材を切り出して3Dのバルセロナの精密模型を作るなど(これは都庁の点群でもやれそうですね)。
ファブラボは今は全世界に広がってきましたね。バルセロナの中でも元々、治安もあまり良くないところにあえて作りそしてスタートアップ企業も集積されて今は発展していました。

入り口の看板。あえて活発なエリアでないところに作ったそうです
古いビルをリノベーションしてカッコよく

スーパーブロック


道路を車中心から歩行者や生活者のための空間に再編する取り組み。具体的には街区の真ん中の細い道を居住者と物流車以外の車をNGにして、歩行者や生活者が道路を公園のように使える取り組み。
これによって経済的にも環境的にも子育ての満足度も改善したとのこと。問題として道がへるので他の道に車が溢れ出るのでは?という懸念もあり初期はそういう問題もあったが事前に徹底したシミュレーションをデータによって実践し対策をうっていたので今は問題なく広がっている。
最初は賛否両論だったが今はいろんな地区からうちもやって欲しいという依頼が。夜に訪問した際はかつては交差点だった場所にベンチや滑り台やチェスができるテーブルが並んでいて、車の音で母なく子供が走り回る声がし市民がベンチに座って談笑しチェスをしている姿のある景色でした。そしてアウトプットはこのよなアナログなものですが、それぞれの交差点、道路をどのように使うのか?については前述のdecidimが使われています。
ここで地元住民が実名で空間をどう使うか?を話し合いそして行政はそれを実践する。参加型のデジタル民主主義、市民ファーストをデジタル技術で支えていました。

道路だったところにチェス盤のテーブルが。decidimで議論してチェス盤にしようって決めたんだろうか?日本だと将棋盤や麻雀卓があるイメージですね。友達が増えそう。
わかりにくいけど交差点の真ん中部分を歩行者向けの公園に改装。ベンチのあるところはかつては交差点。

シウダードさん

この方がバルセロナの都市の基本設計をした人です。150 年も前のことです。
蒸気機関車が誕生した直後に、いまの車社会を想像し、都市にはおおきな道路がいるんだ!と都市設計をしたそうです。ビジョナリーな未来人ですね。また134メートル四方の街区で構成する碁盤の目の街に設計。そして街区の真ん中は広場にしてそこを外側をアパートが囲む。そして真ん中の中庭で住む人が交流するようにしたそうです。しかしそこがだんだんと都市化の波で開発されてなくなっていく。
広場がなくなると人の交流がなくなる。さらにバルセロナが観光地化することで開発が進みローカルの小さな伝統的な店(パブやバーやカフェ)がなくなってチェーン店になりローカルが住めなくなる。
そこで、街区内の道路を地元の人の車と物流の車限定に制限。歩行者中心の街に変えてスーパーブロックを作った。スーパーブロックで人が交流する。手法は違うけど150年前にシウダードさんが大切にした市民が交流するためのスペースを受け継いでるのが素晴らしい。

私のメモからの書き起こしなので間違ってる情報もあるかもしれないのでそこはご容赦ください。

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