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「流行りに乗っかってみようかと」


どうも。地域批評シリーズ編集長の岡野です。


いきなりですが、ソシャゲ界隈ではウマ娘が無双状態で、まるでサイレンススズカばりの快速大逃げ、他馬に影を踏ませぬ圧倒的な強さを見せつけているようです。
さすが麻雀最強位社長が統べるサイバーエージェント、ここのところいつもの調子が出なくて沈んでいたと思ったらオーラスで役満ツモってひとまくり……そんな感じの恐ろしいほどの引きの強さです。

さてそのウマ娘、ゲームの詳細はここでは省かせていただますが(つーかやれって言ってもできねーし)、私、いい歳こいてアニメのほうは1期も2期も本放送で視聴し、いずれも完走しております。そして見ていていつも感じていたのは、グラスワンダーええなあ、ナイスネイチャええなあ……ではなくて、「登場するウマ娘って絶妙なラインナップじゃね」ということです。

ウマ娘の中では、リアルで活躍した競走馬をすべて娘化できていません。現在の馬主界のトップに君臨している一部の殿上人やクラブの許可を得られず、ディープインパクト、オルフェーブル、ドゥラメンテといった近年最強クラスのスターホースはすべて登場しません。

そんな権利関係の枷があるがゆえに、1期はスペシャルウィーク、サイレンススズカが中心、2期はトウカイテイオー、メジロマックイーンが中心の世代を取り上げざるを得なかったとは思います。
ですが、そんな大人の事情以前に、この時代の競馬のドラマ性は、競馬を知らない人にも刺さる圧倒的強さがあり、かつ競馬黄金期を経て競馬好きとなったおっさん(主にアラフィフ)のツボにもドストライクなので、逆に功を奏したともいえます。おそらく製作陣(ブレーン)の中にも後者の人が少なからずいるのではないでしょうか。

競馬というのはこれまで2回ほど大きなブームがありまして、最初は1970年代前半。ハイセイコーが社会現象となり、競馬の認知度は大きく高まります。そして2回目が1980年代後半から1990年代にかけて。いわばここが競馬の絶頂期で、とくにオグリキャップの人気はそれはそれはすさまじいものでした。当時、競馬場の指定席券はプラチナチケットとなり、ウインズ(場外馬券場)はダービーや有馬記念ともなると馬券を求める人でごった返し、入場規制がかけられ、赤鉛筆を耳に挟んだオヤジの怒号が館内に響き渡っていました。うら若き乙女たちが、朝から競馬場近くの食堂で競馬新聞片手にビールを飲みながらキャッキャ言っている光景も珍しくなくなり、世の中の競馬のイメージが博打から国民的娯楽へと転換されていったのです。

ウマ娘はこの第2次ブーム以降の馬が主役になっているわけですが(一部それより古い馬もいますが、それにしたって80年代の馬です)、この第2次ブームで競馬ファンが超絶増えます。

そしてこの時代の競馬ファンは、私も含めてとにかく知識に貪欲で、ネットもない時代ですから、別冊宝島の名馬読本や競馬雑誌をとにかく読み漁るわけです。さらにダビスタで勝手に血統の奥深さと育成の難しさを理解したと勘違いし、競走馬の個性や競馬のドラマ性に酔いしれていくのです。

ただその血統の不可思議さとドラマ性の権化ともいえるオグリキャップは、ウマ娘にも登場しますが、主役じゃありません。オグリキャップは今の若い人でも名前ぐらいは知っていたりする超有名馬なので、おそらく主役にするにはベタ過ぎて今さら感が強かったのかもしれません。

競馬好きもオグリキャップがウマ娘の主役だったら

「オグリ? 素人だね」

と鼻で笑うはずです(こういったやつに限って有馬のラストランで大泣きしていたりするのですが)。
その点、トウカイテイオー、メジロマックイーン、スペシャルウィーク、サイレンススズカは、競馬ファンには超有名馬ですが、それ以外の人の知名度はおそらくそう高くありません。それでいて実はものすごいドラマ性を兼ね備えているのですから、最高の素材です。

競馬を知らない人には新鮮に、往年の競馬ファンにはたまらない、さらにマニアック過ぎもしない絶妙な「馬選」だったといえるでしょう。

私は茨城から19歳のときに上京し、暇があれば大学に行って学問ではなく、パチンコや麻雀に精を出していました。そんな輩ですから、水が流れるごとく自然かつスッと公営競技にハマり出します。

とくに競馬は通っていた大学の通学路にウインズがあったので、土日に授業やサークルがある日は馬券を買っていました。ですがまだ特券の時代で、そのウインズは馬券が1000円単位だったので、大学生の私は当たればデカい、外れれば痛いの勝負にのめり込んでいきました。その後、公営競技に関しては競輪やボートにも手を出したのですが、競馬以上にはハマりませんでした。お馬さんがなんとなく性に合っていたんでしょうなあ。


その後、大学をおさらばした私は就職もせず、田舎に戻り、日がな一日パチンコの羽物台を打ち、小金を稼ぐという不毛な日々を過ごしていました。

そんな私を祖母が見かね、どこの誰か知らない謎の占い師に私の将来を見てもらったところ、「今からすぐに地元で就職しないと不幸が訪れる」とド正論で脅迫してきたそうで、あまりにも祖母が悲しむものですから、一念発起就職を決意するわけです。

そしてそのときたまたま就職情報誌にのっていた某出版社の競馬雑誌の募集を見かけて応募し、無事採用となりました。そのときの面談で、今週末の競馬予想を聞かれ、的中させたことが決め手になったのかもしれません。
ただこの競馬雑誌に配属される前、研修だといわれてエロ本の編集部に有無を言わさずぶち込まれるわけですが、そこで四十八手、いやいや編集のイロハを学びました。
まあそれはいいとして、無事競馬雑誌に配属となり、その最初の現場取材で私はある馬と巡り合います。

ナリタタイシン

という馬です。初取材は1993年の皐月賞でした。
その日、私は運よくカメラマンの助手というかたちでゴール前に座ることができました(今考えるとよくゴール前に入れたものです)。
そしてレースが始まり、直線に入り、ゴール前。無我夢中でシャッターを押す私の前を一頭の小柄な馬が駆け抜けていきました。それがナリタタイシンでした。
当時この皐月賞では、ウイニングチケット、ビワハヤヒデ、ナリタタイシンが3強といわれましたが、ナリタタイシンは離れた3番手評価でした。しかし道中は後方でじっと待機し、直線だけでビワハヤヒデらをなで斬りにしたのです。そのあまりにも爽快な追い込み劇に口アングリだった私ですが、それよりなにより待機所に戻ってきたナリタタイシンの全身バネのように弾む馬体と、皮膚の透き通るような美しさに心を奪われてしまったのです。

高校時代に「雪に書いたラブレター」を歌う菊池桃子に心底心を奪われて以来の体験でした。素人ですから当然、皐月賞のゴール前写真はぶれぶれで、まったくといっていいほど使い物になりませんでしたが、口取り(勝った馬の記念撮影)の写真は1枚だけ使ってもらった記憶があります。

さて、どうしてナリタタイシンの話をしたかといえば、5月2日に行われた天皇賞・春が阪神競馬場で行われたからです(いつもは京都競馬場です)。以前、天皇賞・春は1度、阪神競馬場で行われています。そのときの勝ち馬はビワハヤヒデ、2着はナリタタイシンでした。

前年の菊花賞でボロクソに負けてしこたまお金がなくなり、年明け初戦となった目黒記念では、お姉ちゃんとちょうど京都旅行中だったにもかかわらず、ナリタタイシンが出るからウインズ京都に行くと言い張って別れそうになりながら、馬連をしこたまゲットしてごちそうし、難を逃れた甘酸っぱい過去があります。そして天皇賞本番で打倒ビワハヤヒデと単勝にしこたまぶち込み玉砕しました。そんな思い出を胸に武豊(ナリタタイシンの鞍上)騎乗のディバインフォースの単勝を100円だけ買ってみました。レースは、給付金不正受給の張本人が馬主の馬が勝つなんて…絶句です。賞金の1億5000万円を新型コロナの治療に当たっている医療界に寄付したらどうでしょうかね。

ナリタタイシンは種牡馬として結果を残せませんでしたが、2020年に30歳という長寿を全うし天国へと旅立ちました。死因が老衰なんて実にあやかりたいものです。

で、ここでどう地域の話も持っていくのか悩みどころですが、ギャンブルと人生のハシゴを踏み外しそこなったような男の話だったので、ギャンブル好きの県はどこなのか? 調べてみました。
すると熊本、宮崎、鹿児島、島根、秋田あたりがギャンブル好きが多い県なんだそうです。確かに九州南部は激烈パチンコエリアではありますが、島根と秋田は意外です。まあ普段からやることがないんでしょうねえ。
けど主観でいったらギャンブル好きは北関東っすよ。茨城と群馬はツートップでしょう。パチプロ、雀プロも多いし、ガチの鉄火場県ですよ、マジで。


そういえば昔、うちの父ちゃんも競輪中継がどうしても見たくて千葉テレビが映るアンテナを立てていたっけ。今の自分の姿は完全に血筋ですな。
破滅型血統の私は、人生終盤の追い込みをナリタタイシンのように美しく決められるのでしょうか。



(※写真「みんなのフォトギャラリー」より)


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