同人誌の表紙を作る:1
同人誌制作備忘録で表紙の話をしようとしたら長くなってしまったので表紙単体で記事にしました。
作り方というよりは、考え方の記録・説明という感じの内容です。
表紙を作りはじめる時にまず考えること
漫画の同人誌を作る場合、構成案・プロットで作品の雰囲気がだいたいできはじめた段階で表紙を作ります。
この段階ではもう作品のトーンが出来ているはずなので、自分で自分にデザインを外注するつもりで、作品のキーワードを洗い出します。
例えば、シリアスなのかほのぼのなのかとか、短編集なのかとか、学パロなのか原作通りなのかとか、青がいいとかピンクがいいとか、そういったごく簡単なやつで大丈夫です。
だいたいの工数を読んで進行をあらかじめ決めます。
表紙全体で3〜4日くらい(平日換算で作業時間は1日あたり2〜3h程度)
1:ラフ、下書き(1日)
2:作画、色塗り(2日)
3:デザイン、入稿データ作成(1日)
今回の表紙のテーマとか
原作は歴史物の現代パロディでカフェ本
恋に落ちて付き合うまでの話で少女漫画風だからトコトンかわいい方が合うかな〜(心の声)
洗い出したキーワード
テーマ:カフェっぽいクラフトな感じにしたい
トーン:かわいい、カフェっぽい感じ
カラー:キャライラストはカラフル、デザインはクラフト紙の茶、白黒を使いたい
ラフ、下書き
ラフは作らないときもあります。基本はいつもこんな風にしたいな〜とかのザックリメモです。あと正直デザインの時に根本からひっくり返ることもあるし、あんまり深く考えて絵は描いてないです(本当はちゃんと考えておいた方がいいと思います…)
作画、色塗り
粛々と進めます。デザインでキーカラーが決まっている場合は、キャラの服装がその色とぶつからないようにとか、似たような色にするとか、そういうことを考えたりします。
これは背景ありで人物のレイアウトチェックしたかったので途中でデザインにはめて確認しています。タイトルの位置が決め打ちのレイアウトだったので、人物とタイトルが被らないかどうかを塗り込む前に確認します。
デザイン、入稿データ作成
表紙を作ったはいいものの、早めに作りすぎて入稿日にデータがちゃんしてなくてよく焦るので、私は一緒に入稿データまで作成します。今回はweb掲載用なのでデータは作りませんでした(参考が悪すぎてすみません)
タイトルとか他のデザイン要素とか
今回の漫画は連作で先に作った本があったので、それをベースにしています。パッと見て連作だなーってわかる感じにしたいと考えています。
連作の表紙
タイトルロゴなど
連作なので、前回の本と同じように作っていきます。
左が前作のタイトルで、右が今作のタイトルロゴです。
今回は「秀英にじみ丸ゴ」というフォントをベースに敷いて、部分的に手書き風のフリーな線を追加し、合体させてロゴにする手法を取っています。「秀英にじみ丸ゴ」は文字の縁がもともとにじんでいるようにギザギザしているフォントで、「コーヒー豆の袋やパッケージの、質がやや荒いプリントをを思い出させるようなレトロ感」が出るのではないかなーと思いチョイスしました。
1枚目でアタリを取った線を、フォントの太さやニュアンスに合わせて変更しました。細かい部分は太くしてから微調整していきます。
「そ」は同一の文字を使用しています。あと「朝」と「明」の文字の中で「月」が同一の形になるようにし、偏の「日」を近しい印象にするため丸に変更し「これは仲間である」とわかるような似た形にしました。
そのほかはフィーリングで付け足します。例えば「そ」や「は」は、はらいやつながりがきれいな文字なので、それを強調した線を付け足したいな〜と思って足しました。あと話の内容で「夜」と「夢」が大切なワードなので、この2つに目が行くように、多めに付け足しをしたり大きく形をいじったりしています。
なぜこの仕様にしたかのロジックなど
紙とか印刷仕様のことは前作の本にした方のやつを例えにしています。もし仮に今回作ったデザインを紙本にするとしたら同じ仕様で刷る予定。
テーマ:カフェっぽいクラフトな感じにしたい
↓
これを表現する仕様を考える
表紙用紙を「ファーストヴィンテージ_イエローオーカー_172K」にする
理由:これはコーヒー豆の袋とか、メニューの紙をイメージ
本文用紙を「クラフトペーパー_プレーン_108K」にする
理由:表紙用紙と同じ
白印刷を追加する(白抑えでイラストの下に引く)
理由:キャラクターをフルカラーで塗ったのできちんと発色させたい
クラフト紙に白文字と黒文字が入り混じったらカフェメニューぽくてかわいいしカフェによくある黒板のチョークは大抵白だから白は絶対使いたい
トーン:かわいい、カフェっぽい感じ
↓
これを表現するデザイン要素を考える
使うフォントは丸っこい文字にする
理由:丸っこいものはかわいいので、かわいらしさの演出
フォントの端をギザギザにする
理由:コーヒー豆の袋やパッケージの、質がやや荒いプリントをを思い出させるようなレトロ感を出したい
手書き感の残るスクリプトを使う
理由:お店にある黒板とかの手書きのラフ感を出したい
カラー:イラストはカラフル、デザインはクラフト紙の茶、白黒を使う
↓
これはそのままレイアウトに取り込む
だいたいの場合、色数は少なければ少ないほどまとまりやすく、多ければ多いほどまとめにくいので、よほどの理由がない限りメインカラーは3色以内に抑えます。※一例です
「〇〇っぽい」というイメージが既にある場合は、それに近い参考や具体例などをたくさん見て自分にインプットします。そこから「自分が表現したい『〇〇っぽさ』」を抽出して、具体的にデザインに落とし込んでいく感じで進めています。
※ただ私の場合は後から色々説明できるようになっているだけで、実際はこれ好き、この表現やってみたい、と思うものをひたすら取り込んで、後からロジックに変換する場合が多いかもしれません。
ご依頼いただく場合は、依頼主さまにも「どうしてこのデザインなのか」を説明しなければならないので、ほとんどのデザインにはロジックをきちんと考えています。また、ご依頼案件の場合はこの内容も含めて提案する場合が多いですね。
このテーマやキーワードから出来た表紙
連作の1本め
並べてみても全体的に仲間っぽくなりました。今回作った表紙の方が前日譚的な立ち位置なので、そういう雰囲気もなんとなく出ているかもしれません。ほぼイラストにその役割を担わせましたが「はじまりそう」っぽい感じというか…なんかそういう感じのやつです、、!フィーリング!
おまけ:前作の刷り上がり
やっぱり同人誌はいいですね。
紙に印刷されたのをチェックした時に「うわ〜!思っていたのの数倍ハマった!!」ってなる瞬間が一番たのしいです。今回の場合は白インクがめちゃくちゃかわいく仕上がってきたのと、本文用紙のクラフト感が話とめちゃくちゃハマっててうれしくなりました。
何かここをもっと分解して解説してほしいなどあれば、コメントに書いていただければ嬉しいです。ツイッターからいらしてくださった方は、直接ツイッターで聞いてくれても大丈夫です!