オープンハウスは終わり、モモコはひとり 【0円生活8日目】
"Monday"
(退屈そうに。死んだ魚の目をして)
(朝11時ごろ、おにぎり屋さんから帰ってきてマットレスに倒れ込むモモコ)
家に帰ってきたモモコをとてつもない睡魔が襲った。最近浅い眠りばかりだったのだと、とモモコは遠のく自意識にしがみつきながら思った。
(夕方すっかり暗くなったころ目を覚ますモモコ)
(モモコ、下唇を噛む)
すっかり寝てしまったのをモモコは反省した。最近は、noteの更新も毎日できていなかったから、モモコはますます反省の気持ちを強めた。これは海よりも深く反省し、空より高く己の精神を持って残りの半生を過ごさねばならなかった。モモコには難しい注文だった。
(部屋の真ん中に座りパソコンに向かうモモコ)
(モモコ、最近の暮らしぶりを書き綴り始める)
本当に、文章を書くというのは難しい作業だった。まず物事が起こり、それを経験した自分がいて、それを覚えている語り手の自分がいて、更にそれを文章に起こして人に公開する自分がいると、モモコは気がついた。その入れ子構造を他人に晒すのが、モモコにとってはなんとも恥ずかしくむず痒いのであった。〇円生活という特殊な生活をしている本人はそれをどう見ているのか、それは特殊でない言葉で書かなければならないような意識があった。それが邪魔をすることがあった。
(パソコンの前で悶絶するモモコ)
この文章を書いているとき、自分がしていることの特殊性というのはまったくどうでもよくて、有り体な言葉で言うと「見たままに、見たものを」「感じたままに、感じたことを」書けばよいらしいとモモコは思った。それは目を見張る大発見だった。
オープンハウスもしてよかったなあ、とモモコはがらんとした部屋にひとりで、考えた。言葉で表すこと、写真や動画で表すこと、そして体と空気で表すことがある、とモモコは学んだ。わあ、成長しているじゃないのか、モモコ君、と自分に言ってみた。
そんなことを考えて床に就いたためか、モモコは銭湯の掃除をすっかりすっぽかしてぐーすか寝てしまった。また反省しなければならない種が増えてしまった。
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