蔡霞さんの『フォーリン・アフェアーズ』の文章について(江沢民、胡錦濤、習近平)

12月4日に、中共中央党校の元教授・蔡霞さんが、『フォーリン・アフェアーズ』に、「失败的党:一个体制内人士与北京决裂(The Party That Failed:An Insider Breaks With Beijing[失敗した党:中国共産党と決裂した体制内の人間])という文章を寄稿していたので、内容をちょっとだけ紹介します。

主に、自身の経歴と中国の政治体制改革について語っています。自身が北京の中央党校で学んだのは1989年の天安門事件の直後からだったようです(それまでは蘇州の党校にいたらしい)。1998年に博士号をとって、そのまま中央党校で教え始めたとのこと。中央委員会委員を教えたこともあったそう。ちなみに、習近平さんが中央党校の校長だったのは2007年から2012年。

読んでて面白かったのは、蔡霞さんの江沢民についての記述です。江沢民の考え方が、いちばん自身の考え方に近いと感じたそうです。つまり、いちばんオープンというか、改革的というか、西側に近いような。江沢民の唱えた「三つの代表」(党を企業家や資本家などにも開く考え方)について初めて知ったとき(2000年2月25日)、共感して歓迎したと言ってます。

でも、「三つの代表」はその後、党内で右からも左からもいろいろいちゃもんをつけられることに。

で、蔡霞さんは2001年のはじめ、CCTVと協力して「三つの代表」についての番組をつくることに。江沢民の「三つの代表」のいいと思うところをいろいろ書いてあげたのに、番組関係者に却下されたそうです。党の解釈と一致してなかったら大変だとか、結党80周年のめでたいときに党の課題について触れるなんてダメだとか言われて。

そのあと宣伝部の「三つの代表」紹介本の執筆にもかかわったそうです。党建設についての部分を担当したと言ってます。面白いのはそのときの仕事の様子です。すごく機密性が高い作業なので、みんなその場(たぶんホテルかどこか)から離れたり、誰か外の人と会ったりしてはダメだった。執筆者どうしは、いっしょに食事したり散歩したりはできたが、やってることについて話すのは禁止。

執筆といっても、実際は、江沢民のそれまでの発言を調べて、「三つの代表」に関連する箇所を抜き出して写すだけ。基本的にコピペ作業。「これじゃあ、『毛沢東語録』といっしょじゃない」と他の執筆者に言ったら、「気にしなさんな。こんないい場所で、うまいもの食べて、気持ちよく散歩もできるんだから」とさとされたそうです。

こういう本の出版は、各部門がお金を稼ぐいい方法だったとも言っています。末端の党組織が必ず買うから。まあ、党の中でお金が動くだけってことでもあるんですが。

江沢民が総書記だった時代の後期は、党の問題について同僚とかなりつっこんだ話ができたそうです。実際、党内民主も活発だったと言ってます。

それに比べて、胡錦濤はダメだったと。改革が停滞したと。課題に向き合おうとしなかったと。ソ連のブレジネフの時代みたいになっちゃったと。

で、蔡霞さんは、次の習近平さんにすごく期待したそうです。なんかやってくれそうだと。でも、2012年11月に習氏が総書記に就任する直前、中央党校内の会話で、習氏の経歴をよく知るある教授はこう言ったそうです。「あの人は知識が足りない」。

総書記就任後の習氏について、他の同僚は、「あの人は右とか左とかじゃないんだ、基本的な判断が弱い、言ってることが支離滅裂だもの」と言ったそうです。

蔡霞さんの意見は、胡錦濤は改革を停滞させた、習近平は改革を逆戻りさせた、毛沢東みたいなやり方で。「习近平的大倒退」って言ってます。大躍進ならぬ「大後退」って感じでしょうか。

ほかにも、いろいろ書いてあって、たいへん読み応えがありました。オススメです。英語版と中国語版をネットで読むことができます。中国語版へのリンクはこの記事のいちばん上にはってあります。英語版へは下のリンクをどうぞ。


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