ローリー・アンダーソン ~撮影ノオト~
「オー・スーパーマン」
不思議な音楽を聴いた。テクノロジーを駆使しながら、声を楽器のように使い、言葉を操る。機械的だが、どこか暖かいサウンド。1982年、ニューヨーク滞在中に出合ったのは、ローリー・アンダーソンの「オー・スーパーマン」だった。
当時、私はニューヨークの女性たちの肖像を撮影していて、曲を聴いてすぐにアンダーソンに会いたいと、10月、トライベッカにある彼女のロフトを訪ねた。ひとしきり仕事場を案内してもらった後、彼女の提案でロフトの前のエレベーターホールで撮影することになった。アンダーソンは、その日は弟の結婚式に出席するという、黒のアンティークのスーツ姿。腕に時計を絡ませているのが、印象的だった。
ホールのコンクリートの壁を背景にポーズをとる彼女は、凛とした姿ながら、茶目っ気たっぷりの表情を見せる。まさにエレクトロニック・オペラといわれるパフォーマンス・アートの旗手に相応しい空間と、佇まいだった。この時の写真は『肖像 ニューヨークの女たち』(1983)と、『Portraits 女性アーティストの肖像」(1995)という、私の2つの写真集に収められた。
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