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ライタースクールに通うべきか?

ピンキリだし、「人による」としか……

「ライタースクールに通うべきか否か?」は、ツイッターのライタークラスタでしばしば炎上案件になるテーマだ。

私自身、「必要ない」との意見をツイートで表明したところ、フォロワー(だった人)からブロックされたことがある。ライタースクールでスタッフとして働いている人であった。気分を害してしまい、悪いことをした。

ライター志望者から「ライタースクールには通ったほうがいいでしょうか?」と聞かれたこともあるが、これは答えにくい質問だ。「人によるし、スクールによる」としか言いようがないからである。

いいライターを着実に輩出しているスクールもあって、そういうところなら、高いお金を払って通う意義はそれなりにあるだろう。

たとえば、ツイッターでライターのアカウントを見ていくと、「上阪徹ブックライター塾◯期」とプロフィールに記している人が、わりと多いことに気付く。しかも、第一線でバリバリ活躍している人が少なくない。
人気ベテラン・ライターの上阪徹さんが運営する「ライター塾」は、ライター育成にかなりの実績を積み重ねているのだ。

そういう優良スクールがある一方、講師自身にライターとしての実績もキャリアも乏しく、有効性に疑問符がつくスクールも少なくない。しかも、そんなスクールがけっこう高額な受講料を取っていたりする。

キャリアが長ければいいというものではないが、ライターになってまだ2、3年しか経っていないのに、人に教える側になるのはいかがなものか。その人自身がまだ「駆け出し」の段階なのである。
少なくとも、私がライター3年目くらいのころには、「ほかのライターに教えよう」などという発想は微塵も持ったことがない。

そのように、一口にライタースクールといってもピンキリで、「キリ」のほうに当たってしまったらお金をドブに捨てるようなものだ。中には詐欺まがいの似非スクールもあるらしいし……。

実績豊富で講義の質が高いライタースクールであること――それが、「通ったほうがいい」と言うための必要条件である。
十分条件は、本人に学ぶ意欲が旺盛であることと、それなりの経済的余裕があることだ。

本気で学ぶ意欲がなければ、どんなによいスクールも「豚に真珠」だ。
それに、ライタースクールの受講料は安くはない。中にはかなり高額なスクールもある。無理をしてまで(たとえば借金をしてまで)通う必要はない。

自動車教習所のようなもの

私自身、ライタースクールのたぐいには行ったことがない。また、統計データがあるわけではないが、現役で活躍しているライターの中に、スクールに通った経験がない人は多いと思う。
スクールに通うことは、ライターになるための必須条件ではまったくないのだ。

とはいえ、ライタースクールが無意味だとは思わない。行ったら行ったなりに勉強にはなると思う。

かなり古いが、『ライターになる!』という本がある(メタローグ/1995年刊)。
これは、いまは亡きヤスケン(安原顯/編集者・評論家)が運営していた「CWS(クリエイティヴ・ライティング・スクール)」の「ライター養成塾」の講義内容をまとめたもので、とてもよい本である。

この本に収録されたような講義が聴けるなら、ライタースクールに通うのも悪くはない、と思わせる。

とはいえ、この『ライターになる!』の内容は、たくさんの講義の中から厳選したものであろうし、中には役に立たないクズ講義もあったはずだ。
また、この本に収められた講義にしても、実際にはもっと無駄話・脱線が多いに違いない。

高い授業料を払って学校に通い、長い時間を費やしてそれらの講義を受けるより、この手の本を数冊選んでくり返し熟読したほうが、はるかに安上がりで効率的でないか。

それに、私が思うに、ライタースクールというのは自動車教習所のようなものである。
教習所で車の運転は身につくし、カリキュラムに添って習ったほうが、我流で運転を身につけるより効率的だろう。だが、そこで車を走らせることと実際に公道を走ることは、似て非なるものだ。

同様に、ライタースクールで習い覚えたことと仕事の現場で起きることの間には、やはり懸隔がある。スクールの講義がどんなによい内容でも、現場で積む経験の重さには及ばないと思う。

「コネ作り」「仲間作り」の場でもある

もっとも、ライタースクールの意義は講義内容にだけあるわけではない。人脈作り・仲間作りの場としての意義もあるのだ。

ライタースクールの講師もピンキリではあるが、「ピン」の中には現役バリバリの一流ライター/編集者などもいる。そうした人たちとコネが作れることが、ライタースクールの重要な機能の一つなのだ。
優秀な人なら、講師から目をかけてもらって仕事を紹介してもらったりすることも可能だろう。

また、ライターを目指す仲間がたくさん作れることも、スクールの大きなメリットだ。
「目指す仲間」のみならず、ライター仲間もできる。ライタースクールには、すでにライターとして活躍している人がスキルアップのために通う例も少なくないからである。

そうしたメリットもあるから、ライタースクールに通うことが無駄だとは思わない。しかし、お金にも時間にも余裕のない人が、無理をしてまで通う必要はない。

私自身についていえば、ライター生活1年目に勤務した編集プロダクションこそ、私にとっての「ライタースクール」であった。その1年間で、右も左もわからぬまま現場に出されて学んだことは、ものすごく大きい。

実際の現場(原稿料が発生する仕事)に勝る「スクール」は、どこにもないのだ。


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