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取材における「ありがちな失敗」

長年ライターをやっていれば、思い出すたび「うわあ~!」と叫びたくなる大失敗もある。だが、そういう深刻な失敗にはここでは触れたくない。笑って思い出せる程度の失敗を、いくつかご紹介。

1.名刺忘れは「些細なミス」ではない

駆け出しのころに何度かやったのが、「名刺忘れ」だ。
取材に行って「まず名刺交換を」となった瞬間、自分が名刺を忘れてきたことに気付いて青くなるのである。
取材相手に最初の段階で悪印象を与えてしまうのだから、些細なように見えて、大きなミスだ。

何度かこのミスをやってから、私は名刺を何ヶ所にも分けて持ち歩くようになった。名刺入れだけではなく、手帳・サイフ・カバンにそれぞれ予備の名刺を忍ばせておくのだ。
名刺入れを忘れることはあっても、手帳とサイフとカバンを同時に忘れることはまずない。

ちなみに、ビジネスマナーの本によれば、名刺忘れをやらかしてしまった場合のリカバリーとしては、帰ってすぐに自分の名刺を相手に郵送するとよいそうだ。もちろん、「昨日は名刺を忘れて大変失礼を致しました」と一筆添えて……。

2.談話の録音失敗で真っ青になる

レコーダーの不調で相手の話がまったく録音されていなかったことが、これまでのライター生活で3回ある。
3回とも、そのことに気付いて真っ青になったが、記憶とメモだけでなんとかしのいだ。

不思議なことに、長いカセットテレコ時代には1回しかなかったその手の失敗が、MDレコーダーを使っていた短い時期(カセットとICレコーダーの狭間の時期)に2回あった。原因は不明。取材時にはちゃんと動作していたのに、録音されていなかったのだ。
デジタル機器は、意外に信頼度が低い。

痛い目に遭ってから、取材時には必ず2台のICレコーダーを同時に回すようになった。2台同時に故障する可能性は低いからである。
そのうえで、取材前日には必ず充電もするし、残りの録音容量もチェックする。
(ちなみに、この記事の見出し写真は、現在の私の取材用レコーダー・セット。ICレコーダー2台に加え、文字起こし用のAIライティングレコーダー「VOITER mini」も一緒に回す三段構えである)

3.取材中の知ったかぶりで墓穴

かなり前に、歴史作家の安西篤子さんを取材したときのこと。
「先生の妹さん(杉本晴子さん)も歴史小説を書いていらして」と余計な一言を言ったら、「え? 妹は歴史小説は書いていませんけど?」と怪訝な顔をされてしまった。

「姉妹揃って作家」という情報を聞きかじって、「妹さんも歴史小説を書いているのだろう」と思い込んでしまったのだ。私はもう耳まで真っ赤。取材の下調べをいいかげんにやると、こういう失敗をする羽目になる。

この例に限らず、「取材時の知ったかぶり」は危険である。知らないこと、わからないことは正直にそう言うべきだ。

4.取材相手の名前を間違える

取材中、相手の名前を言い間違えていたことが、1度だけある。
いや、自分で気付いていないだけで、実際はもっとあるかもしれない。そのときは、取材途中で相手が怒って訂正を求めたので気付いたのだ。もちろん平謝りした。

相手の名前や社名といった基本事項の言い間違えは、こちらの印象をものすごく悪くする。名前の読み方なども、事前によく確認しておくべきだ。

5.待ち合わせをめぐる失敗

※以下に挙げるような失敗は、ネットとメールで確認できる昨今はほとんどなくなった。だが、ネットもメールもなかった私の駆け出し時代にはありがちだったのだ。

かつて、高田馬場駅周辺には喫茶「ルノアール」が4店舗あった(いまは2店舗のようだ)。
駆け出しのころ、私はそのことを知らず、「じゃあ、高田馬場のルノアールで〇時に」と取材の待ち合わせをして、エライ目に遭った。

同種の失敗として、水道橋に「グリーンホテル」が2つある(いまは2つともない)ことを知らず、取材相手に待ちぼうけを食わせてしまったことがある(私は私で「待ちぼうけを食った」と思い込んでいた)。

埼玉の「川口」と「川越」を間違えたこともある。実際の待ち合わせ場所は「川越駅前」だったのに、川口駅前で待っていたのである。
このときには取材相手を2時間近く待たせてしまい、平謝りした。 

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