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映画『FIRST COW』を観る

2023年最後に、ケリー・ライカート監督作品を観た。
公開前からこの映画は楽しみにしていた。

その日は友人と会う約束もしていたので、
ランチ後のコーヒーを飲みなら「行く?」と聞いてみた。
チケット予約時には席の大半が空いていた。
まだ空席があるはずだ。
どんな映画? と、聞かれ一瞬言葉につまる。説明が難しい。
予告を見ただけで、私もあまり知らない。
「アメリカの西部開拓時代が舞台の、友情物語?かなあ…」
これではさっぱりわからない。
予想通り、彼は次の言葉を待っている。
私はケリー・ライカートのことを話した。
彼女を知った経緯や、なぜ彼女の作品が好きか、などなど。
私がこの映画を見る理由はひとつ。
ケリー・ライカートの作品だからだ。

「最近、映画みなくなったなあ…」
彼はそう言って、笑った。
以前は映画館によく足を運んでいたことを知っている。
偶然、時期を同じくして同じ映画を観たこともあった。
一度や二度ではない。
何度もあった。
その度に話し込んだことを思い出した。
あのシーン、なんだったの?
どう思った? とか、いろいろ…
遠い過去の出来事だけど、つい昨日のようにも思える。
何だか懐かしくなって、笑ってしまう。

映画は一人で行くことにした。
彼の体調が気がかりだった。
あと何回会えるだろう…
会うたびに考えてしまう。
人はいつまでも生きられるわけではない。

映画館を出るともう夜になっていた。
雲がない夜空でも、星は見えなかった。
映画のワンシーンが浮かんできた。
暗闇の中で乳搾りをする男の姿だった。
彼はやさしく牛をなでながら話しかていた。
彼の作ったドーナツは、どこか沖縄の揚げ菓子に似ていた。
そのドーナツは、瞬く間に評判になった。
食べ物にはとてつもない力がある。
男たちが列をなし奪い合うように食べていた。

未開の地での調理は困難を極める。
調理だけではなく、器具も材料も入手そのものが難しい。
彼の地で牛は、だった一頭しかいなかった。
そしてミルクは必需品だ。

私も時々、無性に食べたくなるモノがある。
ベーグルだった。
パン屋で見かけるとつい買ってしまう。
でも、その度にどこか違うと首を傾げる
私がかつて食べていたベーグルと、何かが違うのだ。
それが一体何なのか、今もわからない。

2024年の最初は『PERFECT DAYS』かなあ…


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