好きなことを仕事に。
「好きなことを仕事に出来るのは、ひと握りの人間だけだ」
年を重ねるにつれて、そういう現実に気付いて、好きなことを仕事にすることを諦めていった。まるで当たり前みたいに。
小学生の頃は、堂々と、「◯◯になりたい!」と言葉に出来ていたのに、だんだんと出来なくなった。しなくなった。
中学生、高校生…その頃も「好きなこと」は変わりなかったけれど、仕事にしたいとか出来るとか思えなくなっていた。夢は夢で終わるものだ思うようになった。
そして大学生になった。
大学生になる過程も含めて、ほぼレールに沿って生きてきた気がする。無難に。フツーに。
「選ぶ」ということをサボっていた。
誰かとご飯を一緒に食べるときみたい。
「これ食べようよ!」と自分から主張しない癖。
別にどんぴしゃに好きじゃなくても、食べたら美味しいし。そんな感じ。
好きなことは仕事にはできないと、いつからかどこからか刷り込まれていたはずなのに、大学生になったら急に掌を返される。
就活。
志望理由書。
エントリーシート。
面接。
上辺だけじゃあ見透かされて、「あなたの本当にやりたいことは何?」と言わんばかりにぐさぐさ刺される。
やりたいことが、ない。
やりたいこと。仕事にしたい好きなこと。
「就活の軸」とも言われることがある。
それが、ないのだ。
選ぶのをサボり続けていたせいなのか。
空っぽになった気がした。
受けても受けても、芯がないから自信も無さそうに見えるのか、落ちる落ちる落ちる。
詳細は割愛。でも、「落ちる」「決まらない」というのはすごくすごく心がすり減る。
「まだまだ!大丈夫!」と心を奮い立たせるのと
「ここが良くなかったなあ」と反省するのと。
そのバランスを絶妙に保たないといけなかった。
そんなこんなで疲弊しながらの就活。
たくさんの人に相談をした。
相談というものは無意識に、この人の言葉なら聞きたい、この人の言うことは説得力がある、とかいう相手にしているものなのかもしれない。
ある人が、
「今は、好きなことを見つけている途中なんだよ」と言ってくれた。
何気ない、飾らない、その言葉のおかげで
急に心が軽くなった。
好きなこと、やりたいことがないのは、別に悪いことじゃないんだ。
そう思えるようになってから、前を向いて就活に取り組めるようになった。
本当にやりたいこと。
奥の奥の方にならあるかもしれないけれど、今はまだ見つかっていないのかもしれない。
好きなこと、やってみたいと思えること、今までやってみてなんとなくいいなと感じられたこと。
そんなちっぽけなことに、もしかしたらヒントが隠されているかもしれない!と思うようになった。
そこで、100個書いてみることにした。
結局100個書けたかは覚えていない。
でも、あ!そうだった。
そうそう、これ好きなんだよね。
そんな風に自分のことをもう一度理解するのは結構楽しかった。
そんなこんながあり、今わたしは働いている。
「絶対に自分には向いていない!」
「苦手だからできない!」
そんな風に思っていた仕事に就いている。
好きなこと、やりたいこと。
それらを仕事に結びつけて考えること。
どうしても、「できない」「難しい」が出てくる。
それは、「料理をつくるのが好きで得意な人だけが調理師になるものである。」…みたいな思い込みによるものなのかもしれない。
何かをつくって誰かを喜ばせるのが好きな人、
みんなの健康的な生活を目指したい人、
思考を凝らして新しいものを考えたい人。
入り口はいろいろなところにあるのだ。
そして、ある一面だけを見て苦手だと思っていることに、自分の好きなことや魅力が生かされることが隠れていることだってある。
好きなことを仕事に出来るのは。
自分自身ときちんと丁寧に向き合い、「好き」を突き詰めることができる人だけなのかもしれない。