メザシの晴れがましさと海鮮ぶつ切り丼のやさぐれた暗がり

画像1 なにを買うか決まっていない買い物は、つまり自由に決められるのだ。もし、心と時間に余裕があれば、それは得難い楽しみとも言えなくはない。いつものスーパーへ行くのもよいが、あまり行かない店をのぞこうって気持ちもある。いっそ遠出をするもよし。そんな気分で売り場を流すと、大きなメザシが目にとまる。しかも値引きだ。かつての大衆魚を、まるでハレの日のごちそうかのごとくうやうやしく取り上げ、かごへ入れる。ついでに酒でも買おうか?なんて浮かれ気分で家路につき、めったに使わないグリルで丁寧に焼く。もちろんうまい。ごちそうだ。
画像2 いろいろしんどいあれこれが重なって、ただひたすらにどうしようもない気持ちを引きずりながら帰る途中、ふと思い出す。家には食材がない。すでに最寄りのスーパーは通り過ぎていて、今さらもどるのも癪に障る。遠回りだけど、あまり行かないスーパーへ足を運ぶと、棚はガラガラ。それでも値引きシールまみれの海鮮ぶつ切りパックが残っていた。料理する気にないし、ちょうどいいやとかごへ放り込む。それでも飯を炊きながらマグロをだし醤油につけ、ぶつ切りが茹だらないよう、飯にも酢を振って混ぜる。そして、うまさと侘しさをかきこむ。

¡Muchas gracias por todo! みんな! ほんとにありがとう!