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Fotorevista

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写真とフォトストーリーを集めたマガジンです。 #写真 #フォトストーリー
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#短編

写真を写心と言い換えるのは反知性的と思うのだ

 写真を写心と言い換えて悦に入る写真愛好者は少なくない。  それどころか、自ら【写心家】と名乗る人物も複数存在している。  なぜ、わざわざそんなダジャレみたいな言い換えをするのかといえば、写真に心を写すから写心、なのだそうだ。  写真に心が写るかどうかはさて置くとしても、写真に心が写っているかどうかを感じ、判断するのはあくまでも写真を見るニンゲンであって、まかり間違っても撮影者が自分から言うものではない。  だが、この言葉は実に広く使われていて、また人々の興味を惹いているのは

Un paisaje de un mundo diferente

 ワークショップが終わって校舎の外へ出ると、あたりはすっかり暗くなっていた。  懇親会場へむかう人々をかき分けながら、裏門までとぼとぼ歩く。キャンパスの外へ出ると、人通りもまばらな住宅街に飲み込まれる。日が暮れたといっても、夜というにはまだ早い時間だった。家々から漏れ聞こえるテレビの音や話し声が、暖かそうな灯りに華を添える。  真新しく、やたらゆったりとした歩道を進むと、まもなく工事区間に行き当たる。掘り返された路面の木道を渡って細い路地へもぐりこみ、空き地や駐車場の脇を抜

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冷蔵庫の扉に映った夏の終わり

・作者より 本作はフォトストーリーEl color de rosa solidarioの続編です。 単体でも十分にお楽しみいただけますが、前作もあわせてお楽しみいただけると幸いです。  急坂をのぼって階段路地を超え、ペンキ塗りの庭木戸を開けたとき、既に大半の家財は運び出されていた。回収待ちの廃家具をならべた前庭とは対照的な、がらんとした屋内で、スウェット姿の娘だけがお茶をすすっている。 「遅かったね。ママはもう行っちゃったよ」  やや上目づかいにくりくりした大きな瞳を輝かせ

¥100

ゴミ屋敷の主が収容されたころは、まだ寒かったように思う。気がつけば、そこはすっかり更地と化していた。隠されていた鉄扉の向こうには、細い路地のかなたまで踏みわけ道が通じている。かつて遊んだ路地、友と並んで座った階段も見えた。背を伸ばし、さらに覗き込むと、無粋な警報機が目に入った。

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El color de rosa solidario