振られる


人に起こされた。
どうやらまたトイレで寝てたみたい笑
バイト先で朝まで1人でがっつり飲んで潰れてた。

起こされて、帰りの電車に乗る。
なんとか、山手線から代々木で総武線各停に乗り換えられた。
でも、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
聞こえてきたアナウンスは吉祥寺。

あれ?
もしかして千葉まで行って往復してしまった感じ?
何時だろう、とふらふらの頭を起こし外を見る。

午前9時。
そして足元をみる。
画面のつかないスマホと、ひっくり返った帽子が転がっていた。

イライラしながらそれを拾い上げる。
これから折り返しても1時間はかかる。
寝よう。
そしてまた深い眠りについた。

再び起きたとき、聞こえてきたアナウンスは西船橋。
やっとだ。
近くまで来て、ちゃんと起きれた。

そう思いながらぼーっとして、気づく。
バックの中がびちょびちょだ。
気づけばジーンズも濡れている。
とても冷たかった。

持っていたいろはすのキャップの口が緩く開いていた。
身をよじりながら起きているとやっと辿り着いた。
午前10時。
家に着くのはあと20分。

ふらふらした足取りでに乗り換えに向かい、電車に乗り、15分揺られる。
アナウンスが聞こえた。

え?
最寄り駅をとうに過ぎていた。
どうやらまた深い眠りに落ちていたようだ。
ホームに降りて時計をみると知らない間にどんどん針が進んでいた。

そのまま戻る電車を待つこと10分。
ぼおーっとただ待ち続ける。
下を向き、目を閉じて。
聞こえてくるのは子どもの声。

そうか今日は土曜日か。
どこかへ出かけるのだろう。

やっときた電車に乗り、座席の背もたれに寄りかかる。
目の前には先ほど声のしていた子どもたちが座っている。
お母さんと、5歳くらいの長女と、3歳ぐらいの長男と、まだベビーカーに乗せられてる幼児。
子ども3人抱えてお母さん一人か、大変だなぁと思っていたら、子どもたちと楽しく会話しながら子どもたちの写真をお母さんは撮っている。

靴をしっかり脱ぎ、座席の後ろの窓から見える外の景色に子ども2人ははしゃいでいる。
その様子をパシャパシャとスマホで撮っている。

そしてまた、ベビーカーに乗せられた、多分男の子だろう赤ん坊も無表情のまま流れゆく外の景色を見ていた。
お母さんは同じようにその様子もパシャパシャと撮っていた。
微笑ましい、そう思っていると自然と口角が上がっていた。

最寄り駅まではあと4駅。
その数分の間だけ、その親子を私はずっと見つめていた。
やっと最寄り駅について家へ帰る。

電車内で深い眠りに何度もついたため、不思議と眠くはなかった。
ただ、このあと11時半から髪の毛を切りに行く予定だった。
家に着いたのは11時前。

こんなハズじゃなかったな、なんて思いながらお店に電話を掛ける。
1時間ずらして欲しいと言うと、予約がいっぱいで17時頃になりますと言われた。
私が悪いのだから仕方がない。
そのあと18時半から渋谷で待ち合わせだったが、ギリギリになってしまうなと思いつつもそれで了承した。

とりあえずシャワーを浴びて、17時まで何をしようかと考えて自室のベッドに倒れ込む。
黄色いカーテンは日差しを受けて部屋を明るくしていた。
その明るさに安心感を抱いたまま、私はまた深い眠りに落ちてしまった。

途中で目が覚めると、待ち合わせの人からLINEが来ていた。
約束の時間の変更。
好都合だった。
19時半にしてもらって、また再び眠りにつく。

起きたとき、16時半過ぎでまたもや美容室の時間に間に合わないことを知る。
急いで身支度を整え、駅へ向かう。
久しぶりにユーカリが丘という場所へ行く。

もう千葉に引っ越してきてから10年以上経つが、こっちに来てから切ってもらってる人に会いに行く。
10年以上の付き合いだ。
私の髪の質も分かってる。
切ってもらう上でとても安心感がある。

高校生になる前は最寄りの美容室だったが、昇格してユーカリが丘店の店長になっていた。
店長になってからも変わらず、通い続けていた。

高校生の頃、頭髪検査があって何度もこの人にはお世話になった。
少しでも髪の毛をかっこよくしたくて、頭髪検査の通りに切っていたらダサくなってしまう。
小さな反抗をこの人とともにしてきた。

そんなことを思い出しながら渋谷に向かう電車とは真逆の電車に揺られる。
そこで、一通のLINEが届く。
待ち合わせの人からだった。

やっぱり、今日は会うのをやめにしよう。
また連絡します。

少しだけ胸が痛んだ。
そっか。と心の中でため息をつく。
返信は、どうして?だけ送った。

多分、どうして?だけを送っても返ってこないだろうなと思いながら30分遅れて通い慣れた久しぶりの美容室についた。

お久しぶりです、と顔馴染みの人に髪を切ってもらう。
丸1年切っていなかった髪の毛は穢れを落とすかのように床にお落ちていく。

普段読まないファッション雑誌を読みながら切り終わるのを待つ。
雑誌を読んでも全く内容が頭に入らなかった。
切り終わって鏡を見る。

雰囲気が変わった私に少し驚く。
重かった髪がなくなり、だいぶ頭が軽くなった。
切り終わる頃に、いつもの人が、今日来てくれて良かったと言ってくれた。

店長になったこの人は、もう1店舗出店することになり今月そのお店がオープンするらしい。
タイミングが良かった。
ぜひ、そちらの店舗にも来て下さいと言われた。
お店の内装から外装まで全部自分で考案したらしい。
今度行ってみようと思った。

そして、美容室を後にする。
駅に向かって歩いてる途中に、今日会うハズだった人への思いを考える。
駅についてLINEを送った。

これで今日の予定はなくなってしまったのである。
仕方なしに、久しぶりに1人で映画でも行こうと定番の八千代緑が丘に足を向けた。
京成線ユーカリが丘から勝田台で降りて東葉高速線に乗り換える。
そこで乗り換えた先の電車はガラガラだった。

気づくと、目の前に座っている人が
私が今好きになった人に似ていた。
雰囲気だろうか。
髪型だろうか。
背格好だろうか。

ふと、目が合う。
すぐ目をそらされてしまったけど、きっとあの人からしたらそういうことなのだろう。
どうしてなのだろう。
ずっと頭の中をぐるぐるして、1人映画館に足を運んだ。

数駅乗って八千代緑が丘駅に到着。
八千代緑が丘駅前の行きつけのロッテリアが耐震工事で休業していた。
なんとも間が悪い。
映画を見に来るときは必ず、ここのチーズバーガーを食べてから観に行く。
今日もその予定だった。

お腹が空いていたのでショッピングモールの中に1人、入った。
よくここに遊びに来た。
子どもの頃、土日といえばだいたいここだった。

フードコートで昼食はマック。
友達とゲームセンターに行き、メダルゲームで遊んで、映画を観て。
懐かしいなと思いつつ、フードコートに行き何を食べようか悩んだ。

何が良いのだろう。
うどんに、そばに、中華に、丼に。
結局すき家でまぐろゆっけ丼を頼んだ。
行きつけのすき家とは違って唐揚げが置いてなくて、サイドメニューでポテトサラダを頼む。

店員さんは若い男の人、高校生ぐらいだろうか?
淡々と仕事をこなし、俺の後ろに並んでいた子どもたちのレジを打つときに少しだけ微笑んでいた。

ご飯ができあがるまで少し待ち、やっと受け取る。
スプーンで食べようと思ったが、箸しかなかった。
唐揚げもないし、スプーンもない。
うどんにしとけば良かったかな、なんて思いながらふらふらと席を探す。

1人で4人がけのソファとイスの席に座り黙々と食べた。
周りを見渡すと家族連れだらけで、皆だれかと食事を共にしていた。
笑いながら食べてる人、話を聞きながら食べてる人、
子どもに落ち着いて食べなさいと叱りながら食べてる人。

私だけがこの空間の異質に感じられた。
そのまま食べ終わり、映画の時間まで書きかけの小説を書く。
そして時間が進み、皿を片付け、映画館へ向かう。
向かう途中でも、誰もが、誰かと一緒にいる。

1人じゃない。
誰かといる。
隣に誰かいる。
私は1人だった。

この世界にとって、私はどのような存在なのだろう。
いても、いなくてもいい存在。
誰にも必要とされてない存在。
すごく、寂しく感じた。
その感情を憎むわけでもなく、落胆するわけでもなく、ただただ素直に受け止めた。

私も誰かに必要とされていたい。
そう願うのはいけないことなのでしょうか?

映画館下の喫煙所で、煙草を1本吸い、階段をあがり、館内に入る。
この世界から異質な私は、異世界へ入っていった。




















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