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Mリーグ2023-24シーズン雑感

熱狂の渦から2週間、U-NEXT Piratesの2度目の優勝の余韻に浸りながら、今季の振り返りと雑感を。

1.待ち牌表示テロップのマイナーチェンジ。副露面子表示は技術的に可能となるか?

昨シーズン、以下の記事において待ち表示についてもうひとつ工夫が出来ないかと申し上げたところ、なんとそのままこの意見が採用された形で役無しのパターンはグレーアウトするテロップとなりました。

フリテン・形式聴牌という麻雀の初心者が誰しもひっかかるこの要素を、放送チームが最大限分かりやすくさせようと、頑張られた一つの成果であると感じているところで、大いに評価されるべき改善と思いました。

さて、このトピックとなるとどうしても比較対象として挙げることとなる、最高位戦配信での副露面子数・残り枚数表示テロップですが、これはデータを取る私から見れば垂涎の機能であり、というのもデータ取りで一番間違えるのが「副露の有無」であって、リアルタイムでのデータの誤入力のうち体感で8割以上がこの副露面子数の抜け漏れなのです。この機能があるだけで恐らく年間のデータ精査に費やす時間が50時間くらい減るところです。
しかし、これは最高位戦放送チームが生み出した最上級の表示であり、そう簡単に逆輸入が出来る代物ではなく、というのも表示パターンが膨大すぎてそもそも負荷が大きすぎること、Mリーグでは比較的ライト層の視聴者が多く、あれば便利ですが、なくても何とかなるのでは?というのも一つの意見です。
情報の見やすさが鍵となる映像テロップなので、過大な情報量は視聴者が置いてけぼりになる面もあることから、私としては(あれば嬉しいですが)現状このままでもよいのかなと思うところです。

2.マインドスポーツにおけるレフェリングの難しさについて

終盤で審判を務める梶本氏が2回ほど難しい判断を迎える場面がありました。
1つ目は、仲林選手のリーチ宣言発声後、競技動作を止めて審判に対応を求めたシーン。梶本審判は、打牌前に動作を中断したことからリーチの取り消しを認め、以降和了放棄とする裁定としました。しかし、こちらはMリーグ公式からもアナウンスがあったとおり、競技規定第4章第8条6.『リーチの発声以降の取り消しはできない』より、たとえ仕草・表情からノーテンリーチであることがほぼ確信できる状況下でも、任意の1牌を打としてリーチの所作をするように促す、が正解という何とも難しいジャッジを迫られる局面がありました。
私もこの件は、競技規定第7章第2条2.(4)の空行為(発声をしても当該行為を行わない)に該当するものと思っていたところ(梶本審判も恐らくこの条文を適用した可能性)、よく見ると『空ポン・空チー・空カン・空ロン・空ツモ』の規定はあるのですが、『空リーチ』は示されておらず、先述した競技規定第4章第8条6.との整合が取れておりました。巷の麻雀ルールではリーチ宣言後に打牌・供託をする前であれば、どんなに重くても和了放棄となっているハウスルールが多く、先述した空行為が和了放棄となっていることから、適用を誤ったのではないかと思うところです。

2つ目は、鈴木たろう選手が配牌を開けた際にクラッシュして山牌・配牌の数枚を他プレイヤーに見える状況となったシーン。こちらは、裁定に時間をかけ競技続行が可能と判断されて、たろう選手にイエローカードの懲戒となりました。
先般最高位戦の競技規定がかなり細かくなり、チョンボ・小チョンボ・和了放棄・注意・指導など、懲罰の種類が細分化されました。Mリーグルールにも応用が利きそうなところではありますが、例えば見せ牌2枚以上でイエローカードとなるところ、何枚以上見せ牌となったら競技続行が不可能であるか、競技規定の表の部分に出てこないところで担当審判間で判断が分かれないレフェリングスタンダードは用意してほしいところです。
ただし、全事象を定量化することは難しく、実際は担当審判の知識・経験に基づく裁量がある程度確保されなければゲームのコントロールは難しいため、ここはバランスが重要。前述のイエローカードとチョンボとなる境目の枚数がどの程度(もっと言えば何をもって見せ牌となるのかの定義も含め)なのか、定量化できそうなところは競技規定を改めてもよいのかなと思った事象でした。

3.選手とファンの距離感問題

難しい問題です。6年目のシーズンですが、選手も観戦者も増えてきた中でSNSというツールを通じてみる限りでは、過去最悪のシーズンになったと思うところです。
徐々に頭脳スポーツという土俵に乗りつつありますが、選手自らの発信はXやインスタグラム、YouTubeなどのツールが主流であり、これらのSNSは双方向性のコミュニケーションが可能なところ、手厳しいという言葉を通り越した心無い言葉を"手軽に"相手に送ることができる負の側面があるところです。
Mリーグだけの問題ではない、という所も事実ですが、それにしても一巡一打に対する執拗な攻撃、悪ふざけによる誹謗中傷からのアカウント防御、こういった事象をシーズン通して見えてしまった点では、非常に残念な1年でした。
モラルの問題と片付けるのは簡単です。選手側もSNSの運用の仕方と昨今の傾向分析、そしてフロント側は現状のSNSの距離感が近い状況を認識したうえで、悪質な事象については毅然とした対応を取ることをはっきりと明言しなければ、いずれ取り返しのつかないハザードとなってしまいます。
来季は心無い言葉が少しでも減ることを願うばかりです。

4.放送内のデータの充実が多くなった印象

放送中、結構データ面での充実が図られたのではなかったでしょうか。
実況・解説の話の流れの中で気になったトピックを放送チームよりフォローが入ること、手元の資料が充実してきて気になる数字が短時間でお伝えできていたところはデータ好きとしては非常に嬉しいところでした。
格闘倶楽部の伊達選手の開幕連勝記録など、結構気にならなかったところをトピックにあてるところだったり、視聴者目線で話題になりやすいところをきちんとデータ整理をして放送に落とし込めており放送チームの頑張りが見えたところが本当に良かったと思います。
また、上部テロップの用語解説の充実に加えて手役表示の際に「符」まで出てきたのは脱初心者向けには好材料。見ているうちに、『あれ?ツモピンフの時は20符で固定なの?』『七対子は必ず25符なんだ!』と、ながら観戦でもこういった法則性に気づく機会が与えられており、見て覚え、学んで覚えができる機会が増えたと思います。

5.『デイリーダブル』という言葉について

ある日、「あれ?英語の用法としては違うんじゃないか?」と気づいた時がありまして。これはろくすっぽ言葉の意味も調べず(特に英語は堪能ではないくせに)使い始めてしまい、現在に至る。気づいたときには「やっちまった・・・!」と、汗が止まりませんでした。
間違った言葉を使うのはいかがなものかとご指摘もありましたが、もうこれは、やっちまった、しょうがないと。ご指摘の他にも和製英語の誕生は寛容である方の意見もあり、割り切って使おうと思うに至りました。

6.全国一気通貫ツアー・スーパープレミアムナイト、オンライン・オフラインPV等観戦機会の充実。

度肝を抜かれました。まさか東京ドームシティホールという大きな箱でパブリックビューイングを開催することなど思うはずもなく、当日はイベントに観戦に大盛り上がりだったとのことで、すごい行きたかったです。さらに、全国の映画館を縦断する一気通貫ツアーも充実の内容となり、人の動きの制限が解かれた今シーズンは有観客イベントが多く開催されて盛況であると伺っています。
気になるのはやはり採算。きちんと利益が出る分のイベント内容であればパワーアップしたイベント内容が今後も継続的にできるのですが、現状ファンからチームに還元できる方法がオフィシャルサポーターの年会費、グッズ販売、オンラインサロン会費など非常に限られている状況。選手も増え、チームも増え、楽しみ方の幅が広がったシーズンとなったからこそ、資金面の部分をクリアしていただいて来季は更にパワーアップしたイベントが登場することを期待です。

7.賞金額の公表について

この記事を書いていた矢先、なんとオフィシャルより発表が!
実は2位以下の賞金額の公表は初年度のファイナルシリーズの放送中内にしか触れておらず、5年ぶりに公式からの発表と相成りました。
そして今回新たな情報として『個人三賞の賞金設定』(実はこれも従前より設定ありとの情報筋でしたが、具体的な額が不明のため公表せず)と、『レギュラー1位通過』のインセンティブ、賞金300万円が設定されました。
競技スポーツである以上、賞金額の公表が欲しいところと従前より思っていたところ、今シーズンの終盤・事実上の準優勝争いとなった時に2位を狙う価値がいかほどなものなのかと、放送中で具体的な金額まで触れられなかったのですが、これで視聴者目線としてもはっきり目標が見える状況になったのは非常に素晴らしいことだと思います。

結び

チーム数が増え試合数も増えた今シーズン、データの管理の面ではやや大変なシーズンでしたが、推しのチーム候補も増えてバラエティに富んだシーズンになったのではないかと思うところです。
良いところ・悪いところ、トライ&エラーを繰り返し、まだまだ歴史の浅いMリーグを今後とも続けられる、そして麻雀業界全体が盛り上がる機運が高まることを願います。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。