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サブカル大蔵経896水道橋博士『藝人春秋』(文春文庫)

正月から毎日読み続けた水道橋博士さんのnote。一年経過に感慨深い思いです。

本書は単行本を持っていましたが、博士が自腹で復刊した文庫をはかせのみせで買い直しました。シール付きのサイン本です。

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最近YouTubeの対談で勝俣さんがいみじくも〈不器用〉と表現した博士の生き方。

博士がよく言う〈定点観測〉を、博士がされる立場となる中で、おのれの痛々しい姿をあえてさらけ出すことで後に続く者を導く星としての姿。

著述家と藝人のはざまを歩む博士にとって本書は著述家としての頂きであり、現在地上波レギュラーゼロを公言するように、藝人としての転落を内包していたのかもしれません。

それは、本書の執筆によって、さまざまな藝人の業という返り血を浴びたからなのかもしれないと思いました。

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「辛抱ってなぁ我慢とは違うんだよ、分かるかい?」p.50

 初代の映画「浅草キッド」の名優でもある石倉三郎。今回の映画「浅草キッド」には石倉の不在が逆に際立つような。

星セント・ルイス師匠の流れを汲むカージナルスp.142

 最近博士が脚光を浴びせているタカ&枝豆の両先輩の星座はどうなるのだろうか。ラッシャーも神田正輝を癒すのだろうか。来年はあらためてたけし軍団がクローズアップされるような気がします。

「初めて言っちゃうけど2007年から『サイゾー』のオーナーしてるのね」p.229

 苫米地英人という存在。なぜ「サイゾー」は続くのか不思議だったので驚きました。元祖論破王だと思いますが。

「つまんねぇなぁあ!そういうの悪いけどぉ面白くないでしょぉ!」p.234

 内輪向けを嫌うテリー伊藤が追求するくだらなさは北朝鮮を射程に。スケール。

北海道の曹洞宗の寺院に生まれた師匠なので、僧侶になることは生涯の夢であっだのだろう。p.271

 ガチンコテレビ批判をし始め得度したポール牧の憤激は、実は博士に受け継がれているような。博士の中にはいろんな芸人が詰まっているのかなと思いました。

「これライターが一つしかないとする、チョビチョビ上手に使うだろうなぁ、無くなるまで。」p.291

 さまざまな談志語録はありますが、あらためてこの夫婦の秘訣の表現を読んで、談志の凄さは、細かなことにしがみつく自分を突き詰めることなのではと感じました。

「ワタシはね、怪談話をして、そのプラスを探したいんですよ!」p.355

 本書を昇華させてしまった稲川淳二。殿に受け身をとってきた鶴太郎や稲川淳二がいない芸能界が現在か。たけしを救うのは実はこの二人かも。

「彼は本を読むだけでなく文脈も正確に読み取れている人」p.405

 博士が有吉に帯の推薦文を頼んだ理由。読書人が読書人を知る。剣豪のような。

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