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重い布団が「ぐっすり熟睡に良い」と大人気!


布団の重量が睡眠の質を高めるってホント?

コロナのストレスから少しでも回復するためには「質の良い睡眠」が不可欠です。部屋の温度や湿度など温熱環境が重要ですが、もうひとつの要素が寝具です。羽布団のように「軽い布団」人気を集めてきましたが、ここ最近「重い布団」で寝ると熟睡効果があるという目を疑うような情報を目にするようになりました。今月は「重い布団」の熟睡効果を取り上げます。


1.重い布団に期待される「締めつけ」による安眠理論とは

そもそも「重い布団」がどのような経緯で開発されたのかというと、テンプル・グランディン(Temple Grandin)というアメリカの動物学者の研究が元になっています。
彼女は3歳のころから自閉症と診断され、触感覚が過敏であったため、どうしたらそれを克服できるか試行錯誤をしている内に「締めつけマシーン(写真squeeze machine)」という、体に強めの圧迫感を与える機器の開発に至り、それにより自身の緊張を和らげることができたことで、「圧迫→リラックス」という着想を得たそうです。

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このような背景から、自閉症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)を抱える人が眠るときにリラックスするための道具として、体にやや強めの圧迫感を与えられる「重い布団」(weighted blanket)が開発されるに至りました。

使用者の体重の8~12%程度の重さの布団を体に掛けると、リラックスできる適切な圧迫感が与えられると言われています。


重い布団に期待できる熟睡効果

睡眠に対してどのような効果があるのか、実際に行われた研究では以下のような効果があったと報告されています。

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1.不安感の減少

2008年に公開されたアメリカのクーリー・ディキンソン病院の実験によると、32名の大人に13.6kgの布団を使って寝てもらったところ…

・33%の人の皮膚電位が低下(リラックス)した
・63%の人が使用後に不安感が減少した
・78%の人が落ち着いたと感じた

などなど、リラックスして眠るのに効果が期待できそうな結果が報告されています。


同時に血圧や脈拍を測りながら布団の重さが体に悪影響を与えないか観察されましたが、問題ないと報告されています。
さらに、2012年に公開された台湾大学病院の実験では、「目の前の恐怖すら和らげてしまう」との報告もあります。
15名の女性(平均27歳)が歯科治療の際に重い布団ト(平均6.24kg)を使用するケースと、しないケースを比較した場合、重い布団を使用したケースでは「心拍数の上昇が優位に少なく、不安感も少ない」と評されました。
布団に入ってから色々と考えごとをしてしまう人にとって、不安感を和らげることができるのはとても嬉しいメリットです。
ストレスにお悩みの方にも良いでは、と考えられます。


2.不眠の人の睡眠の質を改善

また、2015年に公開されたスウェーデンの睡眠研究所で行われた実験では、不眠を抱える人の睡眠に対してどのような効果があるか調べられました。
健康的だが不眠症(入眠困難/中途覚醒/熟眠障害)を抱える20~66歳の男女33人に、1週間今までのように眠ってもらい、その後2週間重い布団で眠ってもらい、そして最後にまた1週間今までのように眠ってもらい、睡眠にどのような違いが出るか実験されました。その結果…

・より落ち着いて眠れた
・睡眠時間が伸びた
・就寝中の寝返りが減った

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などの睡眠によい影響が見られ、レポート内でも「重い布団は睡眠の質を上げるための薬に頼らない革新的なアプローチだ」と結論付けられています。
睡眠時間が伸びたということは、寝付きがよくなり、夜間の目覚め(中途覚醒)が減ったことを意味します。


3.安眠に適したホルモンバランスになる

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なぜ上記のような研究結果になったのか、体内で起こったことをホルモンレベルで示唆する研究が2005年に公開されています。アメリカのマイアミ大学が出しているデータによると、体に圧迫が与えられた状態では、

・ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が31%低下
・幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」が28%増加

このため、不安感が和らぎ安心して眠れるに至ったのだと考えられます。
さらに、「セロトニン」は「メラトニン」という眠りを促すホルモンを合成するため、結果的に寝付きがよくなり、夜中の目覚めが減ることにもつながったのではと考えられます。


「重い布団」はどんな人におすすめ?

上記で紹介した研究結果から重い布団は、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)、SPD(敏感性感覚処理)、不眠症(不安やストレスによる)を抱える方々におすすめされています。

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次に、一般的な人に対して重い布団はどれくらい効果があるのか、1992年にテンプル・グランディン女史が行った実験が参考になります。健康的な大学生40名に対して締めつけマシーン(写真)を5~10分使ってもらったところ…

・45%はリラックス感や眠気を感じた
・40%は特に何も感じなかった
・5%は閉所恐怖症のため不快感から試験を中断した

特に精神や眠りに問題を抱えていない人であっても、50%ほどの確率でリラックスや熟睡効果が期待できます。
眠るときに不安を感じる人は試してみると良いかもしれません。


重い布団をおすすめできない人

逆におすすめできない人はというと、以下のような方々です。

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・圧迫感や閉所に対して苦手意識のある人
・呼吸器系、循環器系に問題を抱えている人
・術後で体が完全に回復されていない人
・体に衰えを感じている高齢者
・新生児、幼児など体が未発達の子供

実際にカナダの子供が誤った使い方をしてしまったがために死亡事故が起こってしまったこともあるようですので、子供の遊び道具にならないよう注意しましょう。

2.重い布団はどのようにしてリラックス感を生み出しているのか

重い布団にはマッサージで得られる「深部圧力刺激(Deep Pressure Stimulation)」と同等の効果があると言われ、リラックスに繋がる「副交感神経」を優位にすると研究で発表されています。

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マッサージには、「リラックス効果」があると多くの研究で報告されています。
リラックス感が生まれるとき脳内物質はどのように働いているのか調べた結果がこのチャートです。
触圧刺激により、興奮物質(ノルアドレナリン、アドレナリン)が低下し、さらにはセロトニン(幸福ホルモン)が増加していたと報告されています。
これと同じようなことが重い布団による圧迫でも起こっているのかもしれません。

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元々、重い布団は自閉症で触感覚が過敏なアメリカの動物学者、テンプル・グランディンが、その克服のために「強めの圧迫感が効果的」ということを発見したのが成り立ちです。
そのため、自閉症、不安やストレスが原因の不眠症に加え、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)の人が使用しても、症状の緩和効果があるといわれています。

こうした背景があるため、昔は医療機関で6万円近くの高額で販売されていましたが、今はニトリから『重い毛布』(写真)が発売されていたり、インターネットでも安価に買うことができます。

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3.自分の体重の10%前後がもっとも効果的な重さ


使用者の体重の8%~12%が適切といわれています。
ただ、広げて身体にかけるものなので重量が分散し、10%前後の重さでは圧迫感を感じづらいという人もいます。
そういう人は、掛け布団の横幅に余裕があれば折りたたんで重量を集中させたり、横に広がっている分を自分の身体の真上に集めたりして、圧を感じやすい掛け方を見つけるのがおすすめです。
あまりにも重すぎる布団は寝返りを打ちづらいと感じる場合もありますが、反発弾性の高いマットレスで改善できます。


「重い布団」は洗えないのが欠点

重い布団は、中のポリエステルの綿にシリコンやガラス玉を入れて重さを出しています。
そのため、カバーは洗えても布団自体を洗うことはほぼ不可能です。
とはいえ、ニトリの『重い毛布』の大ヒットを受け、重い布団を扱うメーカーは増える見込みです。
コロナでストレスフルなこの時期こそ、品薄になる時期を迎える前にストレス緩和や不安減少の効果が認められている「重い布団」の実力を、試してみてはいかがでしょうか。

睡眠の質を高めるチェックシート

重い布団を使えば眠りの問題が全て解決するわけではありません。眠りを良くするには生活習慣を整えるのが近道です。
眠りをよくするために何をすればいいのかが把握できるチェックシートをお試しください。
まずは以下の17の項目を読みながら、現状できていることに◯、現状できていないけど頑張れば出来そうなことに△、現状できていないけど頑張っても出来さなそうなことに✕、の印をそれぞれ付けてください。


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(   ) → (   ) 朝食はよく噛みながら食べる
(   ) → (   ) 午前中に太陽の光をしっかり浴びる
(   ) → (   ) 夜間、室内の明かりを暗めにする
(   ) → (   ) 生活に運動を取り入れる
(   ) → (   ) 夕食は就寝時刻の3時間前までに済ます
(   ) → (   ) 夕食以降、コーヒー、お茶を飲まない
(   ) → (   ) お風呂は就寝2時間前に済ます
(   ) → (   ) 寝床でテレビを見ない、スマホを使わない
(   ) → (   ) 就寝1時間前はタバコを吸わない
(   ) → (   ) 寝床の温湿度は適切に調整する
(   ) → (   ) 静かな環境で眠る
(   ) → (   ) 寝るためにお酒を飲まない
(   ) → (   ) 眠くなってから寝床に入る
(   ) → (   ) 寝床で悩み事をしない
(   ) → (   ) 昼寝は20分以内、15時までに済ます
(   ) → (   ) 週末に寝だめをしない
(   ) → (   ) 適切な寝具を使う

現在の睡眠の満足度を100点満点で点数付けしましょう

(    点)→(    点) 寝付きの満足度は?
(    点)→(    点) 熟睡の満足度は?
(    点)→(    点) 寝起きの満足度は?



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