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裏お題【怪人制御冷や麦】


近頃頭がお椀の形をした怪人が、現れるようになった。
怪人は、お椀型の頭の中に、目にしたものを何でもかんでも突っ込んでしまう。

怪人のお椀の底は口になっていて、そこに入れたものはひとのみにしてしまう。

そのお椀は昔お殿様のものだった。
お殿様は冷や麦が大好きで、このお椀で冷や麦を食べるのが、何よりの楽しみだった。
しかしある日、お殿様はお椀が欠けていることに気がついた。

怒った殿様は、料理を持ってきた侍女を、その場で成敗してしまった。

その後欠けたお椀に、その侍女の怨念が取り憑いて、怪人カケワンになった。

ある日カケワンは、一軒の家に押し入った。
家の中では、母子が冷や麦を食べていた。

カケワンを見ると、母親が
お腹が空いたのかい?
と言って、お椀の中に残っている冷や麦を入れた。

カケワンは、我に返り冷や麦を美味しそうにたべ、大人しく帰って行った。

この噂を耳にした人々は、玄関先に冷や麦を置くようになり、それを「怪人制御冷や麦」と呼んだ。

ここまで 本文410文字

これは、たらはかにさんの
♯毎週ショートショートnote
に参加したものです。

お題は「怪人制御冷や麦」(裏お題)
でした。

その後カケワンは、村人によって欠けた部分を金継ぎされて、普通のお椀に戻り、村の社に備えられ、年に一度冷や麦を備えられる日を楽しみに待つようになったとさ。


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