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月火水水木金土日  第一話

うわーっ!又寝坊した!
私は飛び起きて、急いで着替えると、階段を駆け降りた。

もう‼︎  起きて来なかったら声かけてよ!

私は、朝食のパンを頬張りながら、お母さんに叫ぶ。

知らないわよ。
自分でちゃんと起きてちょうだい!
お母さんは、冷たく言い放つ。

分かってます。
自分でちゃんと起きなくちゃいけないことくらい…

お母さんが作ってくれた弁当を、ハンカチに包みながら、私はブツブツと言った。
その時

7月6日水曜日、7時になりました。
つけっぱなしのテレビからアナウンサーの声がする。

電車の時間ギリギリだな…
私は、リュックを背負って、行ってきまーす!
と家を飛び出し、
駅までの道を猛ダッシュした。

その時、キーッと大きなブレーキ音。
はっと横を見ると、車が私のすぐ横に停止した。

私は左右も見ないで、道路に飛び出していたのだ。
驚いて、足がもつれて転んだ。

停止した車から男性が出てくる。
大丈夫ですか?

すみません、すみません。
あ、大丈夫です。自分でこけただけです。

そう言いながらも、心臓がドキドキしている。

車の人が、スピードを出していたら、
ブレーキを踏むのが遅れていたら、
私は車に轢かれていただろう。

結局乗ろうと思っていた電車には間に合わず、次の電車に乗り込んだ。

まあ、この電車でも遅刻はしない。

擦りむいた足に、血が滲んでいる。
学校に行ったら、保健室で消毒してもらおう…

駅を出て、少し歩くと、歩道橋を渡る。
その歩道橋を大きな荷物を2個持ったお婆さんが、よろよろ階段を登っている。

こういう時、
持ちましょうか?
なんて言うべきなんだろうな。

でも、いいです。
って言われると、逆にバツが悪いよな。
それ以前に、年寄り扱いするなって言われても嫌だしなあ…

迷いながらも、私はそのお婆さんを追い越して階段を登った。

するとすぐ後ろで声がした。

荷物持ちましょうか?

私は思わず振り返った。
声の主も、顔を上げて私を見た。

7組の本田君だった。

本田くんは、すぐに、わたしから目を離し、おばあさんの方を向いて、荷物を受け取った。

本田くん、
あいつ素通りしたぞ。冷たいやつだな、
なんて思ったかな…

私は、別に責められたわけではないけど、すごく後悔した。
声かければよかった。
気がついていたのに…

なんか気まずい思いを抱えながら、1日が終わった。

翌朝

うわーっ!又寝坊した!
私は飛び起きて、急いで着替えると、階段を駆け降りた。

もう、起きて来なかったら声かけてよ!
昨日も言ったじゃん!

私は今日も、朝食のパンを頬張りながら、お母さんに叫ぶ。

お母さんは、何言ってるの?この子は…
と言う顔をして、スルーしている。

お弁当をハンカチで包んでいると

7月6日水曜日、7時になりました。
つけっぱなしのテレビからアナウンサーの声がする。 

え?今日は7日じゃん、アナウンサー何言ってるの?

しかし、テレビで間違いが訂正されることはなく、お母さんも、何も反応しない。

よくわからないまま、
私は、リュックを背負って、行ってきまーす!
と家を飛び出し、
駅までの道を猛ダッシュした。

あ、でも昨日ここで、危ない目にあったんだ。

ふと足を止めて右側を見ると、車がすぐそこまできていた。

セーフ。
でも今の車、昨日の車だ。
この時間にいつも通る人かな…

ふと考えていたら、ダッシュすることを忘れていた。

目の前で電車の扉が閉まる

あーあー
結局昨日と同じ、一本後の電車に乗ることになった。

電車から降りて、学校に向かうところの歩道橋で、
又大きな荷物を2個持ったお婆さんが、よろよろ階段を登っている。
昨日のお婆さんだ。

私は、昨日の後悔を思い出して、
持ちましょうか?
とおばあさんに声をかけた。

まあ、ありがとう。
おばあさんは、嬉しそうに微笑んだ。

それにしても、
おばあさんの荷物は、結構な重さ。
自分のリュックもかなり重いから、
思った以上にしんどかった。

おばあさん、こんな重たいものを一人で持っていたなんて…

そう思った時、
手伝うよ!
そう声をかけてきたのは、7組の本田君だった。

え?
あ…うん。お願い。
思ったより重くって…

本田くんは、重い方の荷物を、片方持ってくれた。

学年章を見て、
俺と同じ3年だね。何組?
と聞いてきた。

2組

名前聞いてもいいかな?

うん。柳瀬、柳瀬ミホ。

柳瀬さんか…
オレ本田ユウト。
よろしくな。

おばあさんと別れた後、私は本田君と二人で学校の校門をくぐった。
男の子と並んで、正門をくぐるなんて、初めて!

昨日同じシチュエーションなのに、全く違った朝だった。

教室に入ると、黒板の横には、7月6日(水) の文字。
あれ?

その後、遅刻してきたサトルも、授業の内容も
昨日と全く同じ。

というか7月6日を繰り返している‼︎

しかし、自分以外の誰も、そんな素振りはなくい。

同じ日を2回繰り返すってあると思う?
とさりげなく友達に聞いてみても、
あったらどうする?
もしそうなったら、何しようか…
なんて笑って言っている。

それから夜までは、昨日とほぼ同じ1日を過ごした。
違ったことは、
夕食の時、最後の一個の唐揚げを、弟に取られる前にとって食べたことだけだった。

翌朝は早くに目覚めた。
時計についている日にちは、
7月7日木曜日。

七夕かあ…

昨日の出来事は、一体何だったんだろう。
夢だったのかな?

どっちが⁈

登校時に、本田君が、
おはようと声をかけてきた。

どうやら2回目が、現実らしい。

面白い夢だったな…
夢で1日の予行練習しちゃうなんて…

おかげで、怪我もしなかったし、本田君と喋れるようになった。

また、こんなことがあるといいなあ…
なんて思ったけれど、
何事もなく、金曜、土曜…と日にちは過ぎていき、
そのうち私は、やっぱり夢だったのだと確信した。


つづく

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