【創作大賞2024】ボクんちの笑うお面 第3話
3 怖いお留守番
さっきまで晴れていた空が、急に暗くなった。
今日は、お母さんが、お姉ちゃんの学校の用事で出かけていて、ボクは一人お留守番をしていた。
ザー
突然激しい雨の音に驚いて外を見ると、まだ夕方なのに、空は真っ暗。
ボクは電気をつけて、慌てて開いていたあちこちの窓を閉めた。
その時ピカッと空が光り、ゴロゴロゴロと雷の音がした。
うわ~怖いなあ。
ボクは、気を紛らわすために、テレビをつけた。
でも、面白そうなテレビはやっていない。
雷の音は、だんだん大きくなっているようだった。
その時
ドーン
お腹の底に響くような大きな音とともに、バリバリバリという音がして、
電気とテレビがパッと消えた。
ひぃーっ
ボクは思わず体を縮めた。
ボクは、ガラス窓からこわごわ外を見た。
その時また、ドーン、バリバリと音がして、大きな稲妻が光り、一瞬昼間のような明るさになった。
ギャーッ
ボクは慌てて窓から離れて、真っ暗になった部屋の中でうずくまった。
あまりの恐ろしさに、涙がにじんできた。
その時、
ケッケッケッケッ と笑い声がした。
見ると、ボクんちの廊下にある、緑の顔のおじいさんのようなお面が、暗い中でうっすら緑色に光っているように見えた。
それからお面は、カタカタと小刻みに揺れた。
ボクは、お面の前に行き、そっとお面にふれた。
今回もお面は、ぱかっと板から外れた。
これをはめろってことだよね。
ボクは、もうお面を怖いとは思わなかった。
ボクがお面を顔につけると、再びお面は誠の顔に吸い付くようにくっついて、急に世界が明るくなった。
そこはボクが見たことがない世界だった。
古いお寺の前の空き地で、お寺の後ろにはお墓がたくさん並んでいる。
古いけど立派で大きなお墓も多い。
「かくれんぼしよう!」
ボクの口から、そんな言葉が飛び出した。
しよう!しよう!
見ると周りには、年下、年上関係なくたくさんの男の子たちがいた。
知らない子ばかりなのに、どうやらボクは、その子たちといつも一緒に遊んでいるらしい。
じゃんけんで勝ったボクは、お寺の後ろのお墓の影に隠れた。
オニが探しに来ると、うまく隠れながら移動していく。
次々と仲間が捕まっていくけど、ボクは最後まで捕まらなかった。
今度はお寺の前の川で、魚とりが始まった。
川には、黒くて小さい、あさりみたいな貝がたくさんいた。
この貝、時々味噌汁に入っている、しじみっていう貝かな?
川にいるものなのかな?
小さい魚がむれをなして泳いでいる。
ボクは、仲間と共同で、網の中にうまく魚を追い込んで、たくさんの魚を取った。
田んぼには、図鑑でしか見たことがない、ドジョウや、アメリカザリガニや、タガメ、ヤゴなどがいた。
すごい、これ捕って帰って、学校の友達に見せたいな、と思った。
だけどボクは、せっかく捕った魚たちを、最後に全部川に放した。
「こうちゃん、竹とんぼ作ってよ。」
誰かが僕に話しかけた。
こうちゃんって誰?
でも明らかに、ボクに話しかけている。
戸惑うボクには関係なく、
「いいよ。」
と答えて、竹を受け取り、ポケットから小刀を取り出した。
こ、小刀持ってるし、使ったことないし…
どうやらこの世界では、ボクは「こうちゃん」と呼ばれているらしい。
ボクは、竹とんぼなんて作ったことないのに、当たり前のように手が勝手に動いて、小刀で上手に竹とんぼを作った。
みんなが、僕も僕も、と竹をもってきたので、ボクは、たてつづけに5個竹とんぼを作った。
ボクが作った竹とんぼは、高く長く空を舞った。
「後はまた今度ね。」
ボクは、そう言って木登りを始めた。
そのお寺には、登りやすそうな木が何本もある。
ボクば木登りなんてしたことがないのに、どこに足をかけ、どの枝を握って登ればいいのかわかっていて、まるで決められた道を行くかのように、どんどん上にのぼっていく
時には近くの木に移ったりして、猿のように自由に動き回っている。
高いところは苦手なはずなのに、全然怖くない。
木の上から見る景色は、広い田んぼと、ぽつんぽつんと立っている古い家。
遠くの山々。
まるで日本昔話みたいだ、なんて思った。
その時、ふわっと風が吹いて、かぶっていた帽子が
(自分が帽子をかぶっていたことにも気づいていなかったのだけど)
頭から離れた。
その帽子をつかもうと、とっさに手を伸ばした時、
アッ
ボクの体が木から離れた。
落ちる!!
2mくらいの高さだ。やばい!
どんっ
あれ?落ちたけど痛くない。
気が付くと、お面ははずれ、ボクは暗い部屋の中で、しりもちをついていた。
突然、部屋の電気がぱっとついた。
テレビから大きなコマーシャルの音楽が聞こえだす。
ボクが、お面を黒い板に乗せると、お面は又、元のように黒い板にピタッとくっついた。
その時、玄関で音がした。
「誠、大丈夫だった?」
お母さんが、心配そうに家の中に入ってきた。
「停電してたでしょう。怖かったわよね。」
そういうお母さんに、
「全然、余裕余裕。」
と言いながら、ボクはニヤッと笑って、お面の方をちらっと見た。
お面は、僕にしか聞こえない声で
ケッケッケッケッ
と笑った。
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