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走らない競技

走らないで、歩くことになった。
里子が帰宅するなり私に言った。

は?

里子は私と違って走るのが好きで、中学から陸上部に入り、長距離の練習に励んできた。
そこそこの結果も出してきた。
それなのに、走らないってどういうこと?

この春転勤で里子の高校にやってきた陸上部の顧問は、競歩の指導者として有名な人だった。
そして里子が競歩に向いているということで、競歩を勧められたのだという。

私は里子の陸上の大会は、いつも応援に行っていた。
里子が出場する1500mや3000mだけでなく、短距離も、中距離も、フィールドア競技も、よく見かける選手や、名の知れた選手、思わず応援したくなる場面があり、1日いても飽きなかった。

そんな中、当時競歩のイメージは、不思議な歩き方をする競技。
見ていても、よくわからない。

しかし、里子が競歩を始めると、その過酷さや難しさ、そして面白さも感じるようになった。

どちらかの足が、必ず地面についていないといけない。
そのため、ギリギリまで後ろ足をつけていることになり、腰を振る感じになる。
腰への負担はなかなか。

走る方がよっぽど楽

と里子は言った。

競歩では、各所に審判がいて、途中で足が両方離れたりしていないか目を凝らしている。
どんなに早くゴールしても、失格になる人もいる。
ギリギリのところなので、どんなに練習している人でも、より速く…と焦る気持ちのほんの一瞬の油断で、失格になってしまうのだ。

見ている方は、ただ歩いているように見えるかもしれないけれど、マラソンと同じく、駆け引きやタイミングが非常に大事になる。

里子は、顧問が言った通り、競歩で目まぐるしい活躍を見せ、インターハイを目指すまでになった。
過酷な練習に時折弱気な発言をしつつ、ひたすら練習に励んだ里子だったが、あと一歩のところで惜しくもインターハイ切符を逃してしまった。

ゴールするなり、号泣した里子だったが、その後は晴々とした顔をしていた。

やり切ったよ。
里子は笑顔でそう言った後、一息置いて言った。

さあ、明日からは走ろう!


読書の秋、食欲の秋
そしてスポーツの秋ということで、スポーツのお話にしてみました。

どんなスポーツでも、必死で、夢中で挑戦する姿は、見ていて感動し、応援に熱が入る。
スポーツっていいな。

私はこの秋は、週一の水泳にウォーキングが加わって、なかなかハード。
昨日は、午前中ウォーキングした後午後プールで1時間泳いだら、足が攣って、おまけに帰宅後疲れすぎて何もできず寝てしまいました。
これからは、ちょっとセーブしようと思います。

皆様は、この秋何か身体動かしてますか?

♯シロクマ文芸部

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