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呪いの臭み

どうやら僕は、呪いにかけられたらしい。

あの臭いを嗅ぐと、
何も手につかなくなり
夜も眠れなくなり
微熱のように体が熱くなる。
財布のひもは緩くなり
胸が苦しくなることもある。

人一倍匂いに敏感な僕だからなのだろうか?
あの臭いで他に呪いにかけられた人はいない様子だ。

どんな臭いかって?
花のような香りでもなければ、フルーツのように甘い匂いでもない。
正直に言おう。
ちょんとツンとするような、何とも言えない臭み。
だけど、なぜか又嗅ぎたくなる。

その呪いをかけた本人は、自分が呪いをかけていることなど気づいていない様子なのだ。
僕を苦しめておいて、いい気なもんだ。

ところがある日、その本人が僕のところにやってきたのだ。

どうやら私は、あなたに呪いをかけられたようです。
あなたの臭いをかぐと、どうにもおかしくなります。
でも、ずっとその臭いを近くで嗅いでいたいのです。

僕たちは、たまらなくいとおしいその臭みを近くに感じながら、
この呪いが溶けないことを祈った。


本文ここまで   412文字

以前、人を好きになるのは、実は相手の臭いが好きだからだと聞いたことがあります。
動物としての本能としては、そうなのかもしれません。

確かにかっこいいから、優しいから、好きになったというけれど、かっこよくても、優しくても、そのすべての人を好きになるわけじゃない。
その人にしか感じない、なんとも心をとらえて離さない臭い。
そんなものがあるんじゃないか、なんて思いました。

そして、きっとそれは、その人が好んで後天的に付けた匂いではなく、その人自身が生まれながらに持っている、いたって動物的な臭いなんじゃないか・・・

そんな風に思います。

そして子供も、そんな親の臭いに安心するのかも。
思春期になって、親に向かって、うざいだの、臭いだの言うようになったら、親離れの時期が来たということかしら (笑)
とはいえ、オヤジ臭、オバサン臭には気を付けたいものです。

これは、たらはかにさんの
#毎週ショートショートnote
に参加したものです。
お題は本題と同じ、「呪いの臭み」でした。

恋は魔法? それとも呪い?

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