三匹の娘ブタ 9「初めての一人暮らし」
三匹の娘ブタとは、学生時代ころころと太っていたミクジとセイコとヒトミの仲良し三人組のことです。
これは学生時代の思い出にフィクションも織り交ぜたお話です。
大学生になって、一年間の寮生活ののち、一人暮らしをすることになった娘ブタちゃんたち。
布団と洋服と、教科書類。ダブルラジカセとたくさんのカセットテープ、その程度のわずかな手荷物を、寮のお友達に手伝ってもらい、新しい部屋に運びます。
ダブルラジカセは、高校生の頃から使っていたもので、当時の必需品。カセットのダビングに次ぐダビングで、音なんてとんでもなく悪かったけど、そんなことをお構いなしに、友達と持ってるカセットをお互いにダビングしまくっていた。
聞ければいい、そんな感じでした。
今どきの学生なら、初めての一人暮らしともなると、どんな食器を使おうとか、カーテンの色は何色にしようとか、部屋をどんなイメージにしよう、なんてウキウキする人も多いのでしょうけれど、当時多くの学生は、いかにお金をかけずに(買わずに)必要なものをそろえるか、が勝負でした。
娘ブタちゃんたちも、一人暮らしに必要なもの、冷蔵庫やこたつや、調理器具などは、卒業した先輩や、その部屋にいた人などからいただいたりして、揃えました。
足りないものは、その頃見かけるようになった百均で購入しました。
(洗濯機は元々その家にあったものを使わせてもらいました)
相変わらず冷暖房もテレビもない部屋だったけど、「扇風機」という素晴らしい物が仲間入りしました。
トースターも炊飯器も手に入り、一安心です。
(電子レンジなんてないですよ)
ある日娘ブタちゃんたちは歩いて4~50分ほどのホームセンターに、買い物に行きました。
買うのは3段のカラーボックス。
収納スペースなどほぼない八畳一間ですから、収納できて台にもなるカラーボックスは最適です。
元気に楽しくおしゃべりしながら、ホームセンターまで歩く三匹。
皆一人暮らしは初めてだったので、ワクワクドキドキ。
そして、お古ばかりの部屋に、新しいものが入る事への、嬉しさもあって、ご機嫌です。
ホームセンターにて、一番安いカラーボックスを購入。
購入したはいいが、持って帰らなければならないという現実に気付いた三匹。
組み立て式のカラーボックスは、ダンボールの箱に入っていて、結構重たい上に、ツルツル滑って持ちにくい。
初めは意気揚々と、ダンボールを担いで歩いていた三匹でしたが、4~50分の道のりはあまりに長かった。
途中で手が痛くなり何度も立ち止まったり持ち替えたりしているので、30分歩いても半分の距離くらいしか歩けていなかった。
次第に口数が少なくなる三匹。
どうする?
大丈夫?
お金ある?
そんな会話が何度か交わされた後、
やむなし
と判断した三匹はバス停に立った。
バスに乗り込んだ三匹は、座れはしなかったけど、重たいダンボールを下ろして、ようやくおしゃべりを再開させた。
ミクジとヒトミの会話は、テンポが早く、ノリとツッコミが絶妙。
度々漫才のようだと言われていた。
そんな2人の会話を笑いながら聞いているセイコ。
いや、それだけではなく横で座っている男の人も、三匹の話を聞いていて笑いをこらえている。
滅多にバスに乗らない三匹だったので、バスに乗るということも新鮮で楽しかった。
こうして新しいカラーボックスが、三匹のそれぞれの部屋にやってきた。
苦労してカラーボックスを組み立てると、
真新しいカラーボックスは輝いて見えた。
いよいよ新生活、そして初めての一人暮らしが始まる。
まだ足りないものもあるし、食料も十分には買えないけど、自分だけの部屋、自分だけの生活に、夢がふくらんだ。
とはいえ、お昼休みも交代で誰かの部屋でご飯を食べて、サークルの後も、誰かの部屋(主にミクジの部屋)にきて、夕飯を食べておしゃべりをして、それから一緒に銭湯に行って…
結局いつも一緒にいた三匹でした。
前回のお話はこちらです。
また、今までの三匹の娘ブタのお話は、こちらのマガジンに入っています。
また、今回も、何回も応募可能のお言葉に甘えて、メディアパルさんの企画「ひとり暮らしのエピソード」に参加させていただきました。
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