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なぜONE PIECE FILM REDはヒットしたのか

こんにちは、マーケターの自由研究です。
今日は、今年の8月6日に公開されたONE PIECE FILM REDのヒットの理由について考察していきたいと思います。

ちなみに同じ内容をYouTubeでも公開しているのでぜひご覧ください。

FILM RED、みなさんご覧になりましたか?
僕も公開初日に観に行ったんですが、面白かったですね〜。
この動画はFILM REDや最新話付近のネタバレを多少含みますので、苦手な方はご注意ください。

この動画を撮影している2022年9月14日時点の興行収入は、現時点で138億突破と発表されておりまして、劇場版 呪術廻戦 0を上回った形になります。

国内で興行収入100億を突破した映画は2022年9月現在で42作あるみたいですね。
1位はまだ記憶に新しい鬼滅の刃 無限列車編の404億。化け物ですねw
千と千尋の神隠し、タイタニックと続き、12位の崖の上のポニョ、13位の天気の子に続いて、現在FILM REDは14位にランクインしています。

41位のパイレーツオブカリビアンまでが100億越えですね。

このペースだと天気の子を超えて、ポニョと並ぶか?くらいですかねー最終着地は。無数にある映画の中ですでに14位の興行収入なわけですから、大ヒットと言っていいことは間違いありません。

過去のONE PIECE作品と比べても圧倒的ですね。

実はONE PIECEの映画は、2作目のねじまき島の冒険以降、興行収入は伸び悩んでいました。
まあ10億とかでもすごいはすごいんですけど、天下のONE PIECEですからね笑

僕もONE PIECEファンではありながらも、デッドエンドの冒険以降は見ていなかったですね。

そこからSTRONG WORLDから尾田先生が総合プロデューサーとして入ったFILMシリーズが始まりまして、盛り返していきます。

Zの68.7億円が直近の最高でしたが、今回はその2倍。REDのすごさがわかるかと思います。

ところがこのFILM RED、評価がめちゃくちゃ高いかというとそういうわけではありません。

いくつかの映画口コミサイトで比較してみました

全サイトにおいて、トップは前作のSTAMPEDEとなっています。

Filmarksやyahoo映画ではどの作品も拮抗していますが、映画.comではむしろFILM REDが低評価という結果ですね。

少なくとも、過去作品の興行収入を2倍以上上回るほどの評価がされているようには見えません。

過去作品を大きく上回るほどの評価になっていないもののここまで興行収入が伸びているということは、中身よりもマーケティングがうまくいったから、というふうにも捉えられます。

ということで、今回はFILM REDがヒットした要因を、マーケティング観点から振り返ってみたいと思います。

興行収入を伸ばすには?

まずはじめに、基本的なことですが、興行収入が何かを解説しておきましょう。

ご存じの方も多いとは思いますが、興行収入とは映画館の入場料金による収入のことです。

つまり、一般の大人であれば1回映画を見るのに1,900円とか、学生だと1,500円とかかかると思いますが、1作品がこの映画館のチケット代を合計でいくら稼いだか、というのが興行収入です。

現在FILM REDは興行収入約138億円で、観客動員数が994万人と発表されているので、単純に138億を994万で割ると、約1,388円となります。

映画館にもよるかもしれませんが、大体大人が2,000円弱、大学生が1,500円、高校生以下が1,000円とかだと思いますので、大学生以下の鑑賞が多いことが伺えますね。

さて、ではこの一作品を鑑賞した人の入場料金の総和を表す興行収入ですが、これを増やすにはどうすればいいでしょうか。

要するに来場数を増やす、という話になるため、その増やし方は大きく2通りあります。

  • 来場する人を増やすこと

  • 1人あたりの来場回数を増やすこと。つまり2回3回とみてくれる人を増やすこと。

実はこの両方の観点で、FILM REDは上手にマーケティングをしているんです。

ではFILM REDの「来場人数を増やす」ための施策について解説します。

来場人数を増やす

そもそも、ONE PIECEの映画をマーケティングするにあたって、どのような人にマーケティングをすべきでしょうか。

ONE PIECEファン?もちろんそうです。しかしそれだけでは不十分と言わざるを得ません。

今日本にどれだけの数ONE PIECEファンがいるかを正確に測る方法はありませんが、1つの参考数値として、単行本の発行部数をみてみましょう。

最新刊である103巻が最近発売されましたが、この103巻でONE PIECEの累計発行部数は5億冊を突破したそうです。

そのうち約4億冊が国内。100巻ちょいで4億冊なので、単純に割ると1巻あたり400万部発行されてることになりますね。

まあこれが全部購入されてるわけじゃないんですが、とりあえず毎回単行本を買うファン層が400万人いると仮定しても、この人たちがもし全員映画館に来てくれたとしても、全然興行収入100億には届かないんですよね。

しかも実際は全員来てもらうことさえ相当厳しいので、ONE PIECEファンさえ来てくれる映画を作ったとしても、興行収入はなかなか伸びません。

ヒット映画を作るには、ONE PIECEファン以外に広げていく必要があることがわかります。

とはいえ、ONE PIECEこれまで全くみたことないんです、と言う人に広めるのはなかなか苦労しますよね。

そうなると、ファンの次に狙うべきは、ファンとまでは言わないけど、何となくONE PIECE追ってるくらいの層でしょう。

  • アラバスタまで読んだ

  • 空島で挫折した

  • 何となくちょこちょこジャンプで見る

  • たまにアニメ見るよ

  • 頂上戦争くらいまで読んだよ

こういった層です。ここをいかに取り込めるかが勝負の分かれ道となります。

FILM REDはこの層の獲得に成功してるんですね。なぜでしょうか。答えは簡単。

この男がいるからです。

ONE PIECEファンじゃなくて、何となく知ってる層でも、シャンクスってみんな知ってるじゃないですか。

だって1話に出てくる人なんですから。アラバスタまでしか読んでなくても当然知ってる。

しかも103巻まで読んでも数えるくらいしか出てきてないから、アラバスタ離脱組と103巻持ってる組のシャンクスの情報の差分ってそんなにないじゃないですか。5分あったら多分喋り尽くせちゃうくらい。

そのシャンクスがメインキャラに据えられてる。シャンクスなら知ってるぞ、観に行ってみようかな、原作ついてきてない勢のハードルがめちゃくちゃ下がるんですよね。

じゃあREDが大ヒットした要因はシャンクス、以上!でいいのか?と言ったらそういうわけではありません。

メインキャラにシャンクスを据えたとして、そもそもONE PIECEをちゃんと追っていない人にONE PIECEの映画の宣伝を届けるのって難しいんですよ。
普段からONE PIECEにアンテナ張ってたらすぐ引っかかりますが、ONE PIECEを気にしていない人、ジャンプを読んでいない人にONE PIECEの映画の情報はなかなか届かない。

そこで映画製作陣が生み出したのがウタなんです。

これまでのFILMシリーズはシキ・ゼファー・テゾーロ・バレットという感じでイカツイおじさんたちが映画のオリジナルキャラとして登場してきましたよね。

今回のキャラクターは女の子のウタ。この時点でこれまでとちょっとテイストが違うことがわかります。
しかもウタはなんとシャンクスの娘であることが予告されている。
そしてウタという名前の通り歌手みたい。

ここのマーケティングの秘密があります。

公開2ヶ月前の6月8日にYouTubeのONE PIECE公式チャンネルでいくつかの情報発表がありました。ここからウタによるFILM REDのプロモーションが急加速します。

まずウタのキャストをボイスキャストに声優の名塚佳織さん、歌唱キャストにAdoさんの2人で担当することが発表されました。

ボイスキャストと歌唱キャストを別の方が担当すること自体はこれまでも『パリピ孔明』や『マクロスF』でも見られました。そんなに珍しいことではありません。

とはいえ声優さんも歌える方は多いので、1人に任せる手もあるわけじゃないですか。

なんで分けたのかなーって最初は思ってましたが、このあとの情報ですぐに「なるほど!」と思いました。

主題歌を7曲も用意して、それも全員違う楽曲提供者が作っている。中田ヤスタカさんやMrs. Green Appleさん、秦基博さんなど。
そしてそれらの楽曲のMVが解禁される。
まずはメインとなる主題歌の『新時代』のMV解禁。
そこからは定期的に続々と他の曲のMVも解禁されていきます。

ウタは映画の1キャラクターではなくて、もはや現実世界の歌手なんです。だから声優さんに歌ってもらうのではなく、ガチもののアーティストであるAdoさんをキャスティングして、ダブルキャストという体制にした。

歌を通してウタというキャラクター、ひいてはFILM REDをプロモーションしていくんですね。

つまりこういう構造になっています。

FILM REDはまずシャンクスを起用する。これだけでファンは大盛り上がりですよね。

最近はONE PIECEを離れている層や、ずっと昔に読むのをやめてしまった層もシャンクスは知っている。

でもそれだけじゃ足りない。ファン層以外にこの映画の存在や魅力をもっと伝える方法が必要です。そこで登場したのがウタ。
ウタはシャンクスの娘という設定。そして歌手。

歌唱キャストにはAdoさんを起用して、主題歌は7曲。そのそれぞれが別のアーティストから楽曲提供されている。

そうすると、各アーティストのファンはいち早くこれらの楽曲の存在を認知しますよね。

それに歌がSNSで拡散される。「この歌めっちゃいい」とMVがツイートされたり、歌ってみたが投稿されたり。

この時点で予告編が出る以上の拡散力を持ち始めます。

ウタがFNS歌謡祭なんかにも出てましたね。テレビで知る人も増える。

映画の存在を、予告編じゃなくて歌から知るんですよね。お、この曲なんかいい歌だな〜という感じで。

そうすると当然、歌ってるこの子、何のキャラクターかな?ボーカロイド?とか気になります。

調べたらすぐにONE PIECEの映画のキャラクターだとわかる。ここで映画を認知します。

へぇ〜まあでも最近のONE PIECEわからないからなー。とファンではない限り普通はここで終わる。

でもこの子は普通の子じゃない。なんとシャンクスの娘なんです。

え、シャンクスの娘!?
シャンクス映画出るんだ!となる

こうやって映画観てみようかなという人が増えていく。

ウタの歌が広まるほど映画の宣伝になっていくんですね。しかもその映画はファン以外もとっつきやすいシャンクス回。
久しぶりに観ようかなって人がたくさん出てくるでしょうね〜。

これがただの妄想じゃないことがTwitterを見てもわかります。

プロモーションが成功していることがわかりますね。
こうやってONE PIECEの最新を追っているファン層以外を獲得していったんです。

来場回数を増やす

実はこれもやっぱりウタなんですよね。

REDは観た感想としてこう言う人がめちゃくちゃ多い映画です。
もはやLIVE、だと。

まあだからこそ、それが賛否両論ありまして、評価が他作品を突き放していない理由でもあるんですけどね。

LIVEだからこそ何回も見たいという人がいるんですね。

ONE PIECE映画初めての人が2回観てるってすごいことですよね。

LIVEが最高だった、また聴きにいくという声があったり、LIVE大迫力だった、桁違いに気持ちいいという声があったり。

映画?もはやLIVEと言ってもいいじゃん!という作品なんですね。
とは言ってもただ歌を聞いてるだけというわけではもちろんありません。
最初の新時代以外は、歌を歌っている間も話は進むので、単純に映画としても面白いです。

あとは最近のジャンプ作品の王道施策ですねw
入場者特典。何個あるんだっていうw

第7段まで計画されてます。コアファンは全部欲しくなりますもんね。

以上が、ONE PIECE FILM REDが大ヒットしている理由でした。
まとめです。

まず1巻から登場するシャンクスを起用することで、ファン層以外の鑑賞ハードルを下げます。
最近のONE PIECEを知らなくてもついていけるかも、ということですね。

そして、ファン層以外にこの映画の魅力を届けるため、ウタというキャラクターを作りました。
このウタをきっかけに映画を知ると、ウタがシャンクスの娘と知って、さらに興味を持つ流れになりますね

原作とも連動させて、毎週ジャンプを見ているそうも映画に促しました。

劇中はウタのLIVEと言っても過言ではないほどすごい歌唱シーンがありました。
LIVEを何回でも見たい感覚になっていたファンもいました。

最後に、入場者特典。第7段まで計画されています。

これらの要素から、来場者と来場回数の最大化で、994万人の来場につながったのではないでしょうか。
まだまだ記録は更新していくと思います。最終的な結果が楽しみですね。

そしてONE PIECE本編は最終章に突入したばかり。
シャンクスの本編での活躍も待ち遠しいです。

ということで今日の研究発表は以上、いいなと思った方はいいね、YouTubeチャンネルの登録をぜひお願いします!

また、DMで研究してほしい内容のリクエストもお待ちしています。今後ともマーケターの自由研究をよろしくお願いします!

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