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「___・ラジオ・デイズ」

とても良い本を読みました。ガールズ ラジオ デイズ合同本「___・ラジオ・デイズ」です。僕は一参加者として寄稿させていただいた身ですが、愛と情報が大量に詰まっていて本当に良い本だったんですよ……。

無事完売(すごい!)ということもあり、本稿は紹介というより感想文です。各作品のネタバレも特に避けるつもりは無いので、ぜひ本編通読の後に流し読みしていただければと思います。また僕自身の趣味嗜好から、文量が小説作品に偏重することもご容赦ください。私情も入りまくりです。いろんな人が感想を書けばなんとなくバランスも取れるんじゃないでしょうか。

先に総論なんですが、一切の誇張なしに全部良かったです。何もかも、全部。

タイトル

まずタイトルですよ。「___・ラジオ・デイズ」、天才。「ガールズ ラジオ デイズ」(以下ガルラジ)という作品のファンによる合同本として、果たして今後これ以上のものが出てくるかどうかというレベルの完璧さです。公式アンソロジーかな。
再三言われていることですが、ガルラジは作品に触れる=ラジオ番組を聴くことなので、受け手は受け手になった時点で「リスナー」という役割でガルラジに参加してしまうんですよね。しかも本来のラジオと同様にガルラジのリスナーはあなた一人の役割ではなく、番組を聴く人全体がおおらかにそう扱われることになる。メール投稿などで積極的に関わるとしても、聴くだけだとしてもそこは変わらない。つまり、番組のパーソナリティたちが「ラジオ」と共に「デイズ」を送る「ガールズ」として存在するように、受け手も「ラジオ・デイズ」を過ごす何者か「___」として構造に組み込まれるわけです。そしてその「___」を埋める言葉は、32人の参加者はもちろんリスナーそれぞれに異なっている……。合同本として最高のタイトルだと思いませんか。僕は思います。文字だけでは伝わりませんが表紙では「___」の部分が電波らしくデザインされているのも粋です。

表紙絵

Natchさん。14人の集合絵、可愛いですね……とても可愛い……愛おしい……。ポーズや表情にも個性が溢れていて、優しくもカラフルな色合いも良くて、はるかっちとラジオから出るみんなの吹き出しがとても賑やかで、紙吹雪のお祝い感が……。
イラストを称える語彙が乏しくて心苦しいです。とても言葉に尽くせない。とにかく大好きです。

まえがき

宣言から始まることが嬉しいんですよね。良い本が頒布されたと心が沸き立ちます。

オタクラジオデイズ特別編

延々と頷きながら聴きました。ラジオを題材にした作品にラジオでの感想が上がり、ついには同人誌にもラジオが付くという、理路整然と狂った楽しさが素晴らしい。個人的にはガルラジクイズでの採用も嬉しかったです。玉笹彩美の話で盛り上がってしまう人が今回集まった=オタクラジオに走っていたこと、果たして偶然なのでしょうか。特設サイトも"公式"そのもので笑います。チームTwitter、今後も頑張ってください。

ガールズ ラジオ デイズ 各チーム紹介
ガルラジ年表
ガールズ ラジオ デイズ ―いままでのあらすじ―

紙草さん。自立する分厚さは頒布前から話題になっていましたが、イントロダクションの重厚さに圧倒されて笑いました。公式アンソロジーかな。合同本全体に言えることですが、特にこういった情報は時間が経つほど読み味が深くなっていくんですよね。後に続く寄稿作の読み心地にも大きく寄与していますし、こういうページが大切なんだよな……となります。ガルラジ、良いコンテンツですね。

ガールズ西日本デイズ チーム古賀 提案資料

しまはぁさん。しっかりした本編あらすじからの一作目でプレゼン資料。「___」の多様性をいきなり思い知らされました。ピエトロドレッシングおいしい。意外と(意外か?)見た覚えがない事業面からの分析、オリジナルチームの構想を介することで作品の本質を捉えている気がします。

2019年度防火ポスター

なにかなさん。これは"ある"。そして人選が不安だと煽られる。いや自宅警備経験が活きる……?

結ちゃん

ツナニキさん。転ぶかどうかで意見が分かれるところです。僕は転びそうだと感じますが、ご機嫌なご様子からして一人ではないでしょうし、二人に心配されてから一日中笑われるんじゃないでしょうか。

十人十色

立花 伊吹さん。
ア ン デ ィ ・ ウ ォ ー ホ ル
萬歳さんの表情がツボです。

旅立ちの日に

k2(ケイツー)さん。オカジョ放送部、こういうことになるんですよね。唯一の全員同級生かつ2ndシーズン終了と進路の分岐が連続しているチームなので……。まっすぐな笑顔と涙の記録、現像して写真立てに入れて部屋に置くんだきっと……。

オタク ラジオ デイズ デイズ

ぬんさくさん。流行をちゃんと追えていたわけではないので、経緯を知ることができて率直に感心しました。先にも書きましたが、ラジオをやってみることでラジオ作品の実感を知るというのは極めて正しい狂い方だと感じます。特にガルラジシーズン中、僕は(おそらく他のガルラジストも)本編の放送があるたびに「早くオタクアフタートーク来ないかな」と楽しみにしていたので、みなさんのオタクラジオが作品体験の一部になっていたんですよね。その延長戦のような記録、一リスナーとしてとても嬉しかったです。

金沢から東京への行き方 世代別まとめ ~鉄道編~

青梅さん。生活の実感に感心しきりです。僕もガルラジストの多くと同じく旅行が好きな人種ではありますが、移動手段には全く疎いので実に楽しい。人は高速道路のみにて生きるにあらず。非常に有意義な証言でした。

ググって得られる質感情報

三代目マルチプル高橋さん。数字、実際に行っても得られない手応えがあり新鮮です。白山市の人口密度が低くてなるほどとなったり、甲斐市は人口も面積も文字通り桁違いに数字が小さくて、だから家族での番組になったのかな、と思ったり。甲斐市ガソリン高い……。

ラジオと旅の哲学 重なった世界の経験

難波優輝さん。作品の観賞行為と質感旅行というガルラジの特異性に正面から向き合う記事、楽しく読ませていただきました。自分も行った体験の理解が深まり、読めて良かった、聴いて良かった、参加して良かったなと改めて噛み締めています。
ここからの評論三連、堅牢着実な語りと緊張感が合同本を「ただものじゃない」本にしていてかっこいいです。かっこいい、大切。

藤田ゆきの私論

しまはぁさん。ガルラジの特色である藤田ゆきのさんからのアプローチ、間違いなくガルラジ合同本にあるべき記事なんですよね。あの言動をここまで分析して論理づけられるのかという感動があります。怖い話ですがご本人(?)が読まれたらどう思われるのかな、ともちょっと思ったり。この間(2020/5/12)のリモート藤田さんも見事なトリックスターぶりが嬉しくて、こんなに好きだったかと自分で驚きました。

質感から考える メディアなきフィクションとしてのガルラジ

シノハラユウキさん。こういう作品だったのかという説得力はもとより、TLで見かける各位のつぶやきが引用されまくるヒーロー映画のような展開に興奮しました。「6.質感の二次創作」でnishiさんの「カフェテリアばんざいグッズ」について言及されたことも勝手に嬉しかったです。以降の寄稿作に繋がっていくような構成も綺麗です。

ガルラジを愛して、NEXCO中日本へ就職しよう。

さめぼこさん。一番ダメージを負いました……面白かったです……。

岡崎の音がする

あっつさん。アコギ、ガルラジなんですよね。二兎さんが歌い出したらリスナーは泣くと思う。

ガールズ4コマデイズ

ビッグ鬱(丸井)さん。待ってました! 着眼点が鋭利でとても好きです。オールキャラ4コマ、いくらでも読みたいのでよろしくお願いします。

テーマソングをオルゴールで演奏するべし
イラスト集+ガルラジかるた

ルさん。オルゴール、できるんだという発見もさることながら、やはり実物を聞いていただきたいと思いました。とても感動してブックマークに入れたので。

ガルラジかるたもめちゃくちゃ遊びたいです。というかガルラジストに遊んで欲しい。

そうやって僕らは声を届けよう

ユキさん。徳光後日譚漫画、最高。正解。顧客が望んでいたもの。二人の服装も"これ"です。

そしてアタシが戻ってくる

大石ハツさん。吉田文音なんですよね。立場上見えない部分での動きが多くて、小説版で開示された部分も捉えがたいほど軽薄で、大人で子どもで格好つけながらダサくて。二次創作は往々にして劇中で明かされない過去を受け手が補填し、空白の落とし所を探るものですが、ガルラジパーソナリティの中で最もその必要があるのが吉田文音なんですよ。もちろんそういった解釈は人によって異なって当然(かつある程度のブレの中で共有されるもの)なんですが、それでも彼女に関しては書かれること自体が必然という気がしてなりません。
本作はまさしく原作の奥行が深まる物語で、間違いなく小説連のトップバッターに相応しいと感じます。良いものを読ませていただきました。

名を捨てて実を取る

hirobeeさん。うおおおカグラヤ怪奇探偵団団長と副団長の馴れ初め! 呼び方の由来! 知性溢れまくる幼少かぐりんと繊細なアカリちゃん(さらっと名字を獲得しようとしていませんか?)! とくちゃんはいつも通りだ。アツくて暖かくて幸せです。

さよならサマータイムマシン

せーはくさん。オリジナル男性人格だ! 二次創作はこうでなくっちゃなあ! と思いきやそれだけでもなく……。実に小説で楽しめました。やっぱり吉田文音なんですよね。あんな感じでいろいろと多才なのは過積載ですよ。

EXPASA 富士川 2020 大感謝祭 -GA MANZAI-

基本的人権さん。僕は土曜しか行けませんでしたが、日曜にやってたんですか? やってたんだろうな。見たかった。リスナー採点に参加していたら僕は双葉を最高点にしたと思いますが、みなさんはどうしましたか。どうかしましたか。

電波は届くよどこまでも

けいせんさん。ハイテンション南極デイズだ! オールキャストでいろいろな作品の文脈が混線しまくる話、これぞお祭り。これぞ合同本。犯行供述も読めて二度おいしい。

二時間だけのバカンス

だーさん。この重い一撃もガルラジ、この可能性も吉田文音(というか徳光)なんですよね。質感の作品だからこそ幸せを祈りたくなりますが、現実に簡単な人生なんてなく……。あと並びの温度差で内臓をやられます。

釣り人と兎

クロベさん。岡崎、危ういんですよね。番組の終わり、高校生活の終わり、三人の進路の分岐といろいろなタイミングが重なりすぎている。それでいて(そしてだからこそ)お互いへの愛情がはっきりと描写されるので、落とし所として共依存の線が出てきてしまう。感想のつもりが勝手なフォローみたいになりましたが、そうさせるだけのパンチがあり、強い。

スターゲイザー

ケイスケさん。吉田文音なんですよ。経歴に空欄が多すぎて、しかも埋めたくなる引力が強すぎる。年下の人間にミルミル星なんて設定を押し付ける人が星を見上げることが好きだと、嬉しい。移動する情景の描写も素敵です。

ガールズラジオ チーム岡崎 こちらオカジョ放送部 卒業式特別編

のらのらンさん。ありますね。絶対にあって欲しい。三人の声が聞こえてくるようで嬉しく、台本ってこうなってるんだという勉強にもなりました。

星を掴める距離

みそぎさん。めちゃくちゃ良い徳光でした。文章が真摯で、二人の明るいやり取りに愛があって……とても好きです。イチオシ。好きすぎて書けることがない。この良さの前では僕の感想とか無粋なだけです。ありがとうございます。

三十八万キロメートルは遠すぎる

小島優さん。吉田文音! 胡乱で楽しい序盤からは予想も付かない決意表明が爽快に熱い。吉田文音なら有り得るという説得力、いや有り得ると思わせる22歳、なんなんでしょうねこの人……。徹頭徹尾軽率な生き様がカッコイイ玉笹彩美の参戦も嬉しいところです。

どこにもないような、ここにしかないような

kk_hさん。ああああ! 岡崎お泊まり会! 清廉な動作のディティール、止まらない時間の流れを三人と一緒に噛み締めるような読み心地が至高です。お互いに向ける言葉でこちらの心まで温かくなってしまうのがまさにオカジョです。
ラジオという、他媒体よりパーソナリティの性格や生活が色濃く出る、だからこそ向こう側の物語を描くことができる形式で成立するのがガルラジ。そんな作品らしい、意味がありながら自然体のやり取り、読めて嬉しくなりました。

ミックスソフトの嘘つき二人

そろそろローソクさん。吉田文音!! 当然の徳光同棲!! 生活の手触りと徳光PAの実景が凝縮されていて、いろいろなものが溶けます。いや僕も去年食べたんですよ、徳光PAでソフトクリーム。二階の座敷で、家族連れに挟まれて、一人で。バニラでした。松任海浜公園の向こうに沈む夕日を見て、めちゃくちゃ雨に降られて遭難しかけながら松任駅まで歩きました。読み返すたびに思い出がよみがえって笑顔になります。

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シスターズ・イン・トーキョー

末茶藻中さん。玉笹は家族なんですよ。この三人が家族であること、家族の三人がこういう関係であることが、めちゃくちゃに嬉しいわけじゃないですか。「ごきげんラジオ」を聴いて誰もが共有するそういった感情がとても丁寧に綴られていて、本当に良いです。東京を描くにあたり「なおちゃん」にしっかり触れてくれる目配せにも愛を感じます。

あいにいく

紙草さん。おのれ吉田文音、そんなことで落とし前をつけたつもりか……そうだ手取川海瑠、しょうがないよな……勝手に引いて終わらせたつもりのやつに一泡吹かせてやるんだ……行ってやってくれ……となりましたね。右へ左への徳光を浴びせられた果てにこの手取川の強さ、頼もしくて元気になります。

なんか歩いていけるらしいよ

鶏七味さん。短歌で締める合同本、目を見張るほど美しくて、ありがたくなります。原作はもちろん本誌の「___」作品すべてと共鳴するようで胸にすっと染みます。この記事を書くために改めて一連読み返して目頭が熱くなりました。良い本で、良い作品なんですよ、ガルラジ。本当に。

裏表紙

NEOPASA岡崎、今となっては往復三時間の自転車アタックすら懐かしく思います。もう一度、忘れる前に行きたいですね。


本当に多種多様な視点と愛が集まった本でした。そして各参加者思い思いの寄稿作がそれぞれの味を増幅し合う、掲載順の見事さ! 主催されたひっかけさん、紙草さんの苦労を思いつつ、組み立てる作業は結構楽しかったんじゃないかな、と無責任な羨ましさも少し感じたり。一読者として心から楽しめると同時に、ガルラジという作品の奥深さを再確認することもできて、本当に読めて良かったです。家宝にします。

なにはともあれお二方、改めてお疲れ様でした。参加者の皆様、購読者の方々、本当にありがとうございました。楽しんでください。楽しみましょう。またやれると、嬉しいですね。

以上です。#2020年もガルラジ!



おまけ「三位一体!」について
あとがきのあとがきリスペクトで僕もやろうと思ったんですが、特に書くことがなかったので、年始に撮った写真資料です。

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