2022年ベストアルバム TOP50
2022年、まだ100%までとはいきませんが、より色々なことが戻ってきたなと感じることの多い1年でした。1番大きなことといえば、やはり海外アーティストの来日が戻ってきたことですね。今や毎週のように誰かしらの来日スケジュールが発表され、もはや嬉しい悲鳴以上の何かが出てきそうなレベルにまでなってきました。(笑)
そんなこんなで、今年もこの季節がやってまいりました。2022年は雪崩れるようにビッグネームのリリースも相次ぎ、しかも傑作が非常に多いというまさに「豊作」の年となりました。その中で僕が特に好きだったアルバム50枚を選びました。例によってコメントもつけているため長いですが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです!
50. Tomberline『i don’t know who needs to hear this…』
米・ケンタッキー州ルイビルを拠点に活動するSSW、Tomberlinのニューアルバム。彼女の美しく繊細な歌声と神秘的で温かみのあるサウンドで、よく巷で使われる表現である「牧歌的」とはこういうものなのか、というのがよくわかった1枚でもあります。
49. BROCKHAMPTON『TM』
今年の4月のCoachellaの出演を最後に、惜しまれつつ活動終了したBROCKHAMPTON。事前にリリースが告知されていたラストアルバム『THE FAMILY』がリリースされた翌日にサプライズリリースされたのが本作。実質Kevin Abstractのソロ作とも言える『THE FAMILY』がオールドスクールなヒップホップだったのに対し、フルメンバー参加でより多彩なトラックが収録されていて、個人的にはこちらの方が好みでした。
48. Black Country, New Road『Ants From Up There』
ロンドンを拠点に活動するバンド、Black Country, New Roadの2ndアルバム。デビュー当初は個人的にあまり乗り切れてなかったのですが、今作は結構好きな感じでした。様々なジャンルを横断しつつ、ダークだけど静かな熱を帯びたまとまりのあるサウンド。1月末にメインコンポーザーのIssacが抜けてしまいましたが、残されたメンバーでまた力強く動き出した今後に注目です。
47. Muse『Will Of The People』
個人的に来年のサマーソニックのヘッドライナー候補として予想している、Museの通算9枚目。全編にわたってこれまでで一番ヘヴィなギターサウンドが特徴的ですが、これはVo/GtのMatt Bellamyが息子が聴いていたSlipknotからインスピレーションを受けたものなのだとか。確かにSlipknotっぽい音作りですね。曲の展開やコーラスワークもQueenを思わせるような壮大さで、個人的にはここ直近10年のMuseの作品の中で最もベストな1枚でした。
46. BLACKSTARKIDS『CYBERKISS*』
今年ついに念願のThe 1975の北米ツアーのオープニングアクトに抜擢され、さらにその名を轟かせることになったDIRTY HITの次のスター候補BLACKSTARKIDS。毎年のように新作を出す創作意欲の高さにも脱帽していますが、通算5作目のミックステープとなる今作は90年代色強めな作風で、個人的には『Whatever, Man』(2020)の次に好きな作品となりました。来年こそは彼らの音楽をライブで体感してみたいものです。
45. Hatchie『Giving The World Away』
オーストラリアはブリスベン出身のシンガーソングライター(以下SSW)、Hatchieの2ndアルバム。3年前に出たデビューアルバムよりもさらに彩りが増し、磨きがかかったシューゲイズポップサウンドは絶品。歌詞では世界中で評価されるようになった過程で彼女が感じてきたことが綴られています。
44. Loyle Carner『hugo』
サウスロンドン出身のラッパー、Loyle Carnerの通算3枚目のアルバム。ジャズやファンクからの要素に時折インディーロックを感じるトラックは、他とは一線を画すもの。それだけではなく、差別をはじめとする社会問題を取り上げ、彼自身の生い立ちにおける葛藤を交えつつ、人々に寄り添うような内容のリリックもLoyle Carnerの誠実さと優しさを感じる。
43. Mitski『Laurel Hell』
ニューヨークを拠点に活動するSSW、Mitskiの4thアルバム。一時活動休止を経てリリースされた今作は、これまでの作品の中で1番ポップで聴きやすいもの。本人曰く「励ますような曲を作る必要があった」ため、ダンサブルな曲を多めになっている。
42. 中村佳穂『NIA』
音楽ファンに衝撃を与えた『AINOU』から約3年半ぶり、日本が誇る若手SSWの最筆頭、中村佳穂の2ndアルバム。前作で確立させた「誰も聞いたことのないポップミュージック」はさらにアップデートされ、全編にわたって圧倒的なパワーを感じまくりました。曲の仮タイトルがそのまま正式タイトルになっちゃう「適当さ」も、彼女の凄みを象徴するものなのでしょう。
41. Yard Act『The Overload』
英・リーズ出身のポストパンクバンド、Yard Actのデビューアルバム。Gang Of Fourを彷彿とさせるキレキレなギターが爽快で、日々新しい才能が出てくるUKのポストパンクシーンのなかでも割とストレート、かつポップで踊れるロックンロールミュージックで非常に聴きやすい。現行のUKポストパンク初心者におすすめするならこれかもしれないです。
40. Big Thief『Dragon New Warm Mountain I Believe In You』
米・ニューヨーク州ブルックリン出身のインディーロックバンド、Big Thiefにより通算5作目のアルバム。さまざまなタイプの曲がつまっており、まるで生き物のように目まぐるしく表情が変わっていくかのような超大作。ライブでどう演奏されるのかとても観たかったのですが、今年の来日公演は行くことができず本当に残念・・・
39. Amber Mark『Three Dimensions Deep』
ドイツはベルリン出身、現在はアメリカを拠点に活動するR&Bシンガー、Amber Markの1stフルアルバム。これがまだ最初のフルアルバムなのが信じられないくらいの完成度で、この先さらにビックな存在になっていくのが既に見えます。
38. Kokoroko『Could We Be More』
ロンドンを拠点に活動する8人組グループ、Kokorokoのデビューアルバム。タワレコでジャズ・シーンで今大きな注目を集めている彼らは、アフロビート、ジャズ、ソウル、ファンクといったジャンルを横断したサウンドを奏でていて、その音像はフジロックのフィールドオブヘブンで永遠に聴いていたくなるようなうっとりする心地よさ。
37. caroline『caroline』
ロンドン出身の8人組バンド、carolineのデビューアルバム。カントリーの起源ともいわれる伝統音楽アパラチアンミュージックをベースにしながら、どこか不穏なムードが漂うこの感じ。ここ最近の若手バンドの中でも特に異彩を放っていて、初めて聴いた時は完全に新しい音楽やってるなと感じましたね。
36. Jean Dawson『CHAOS NOW*』
米・カリフォルニア州を拠点に活動するSSW、Jean Dawsonの3rdアルバム。少年時代から気になった音楽を手当たり次第聴いてきた彼が作るのは、まさしくジャンルや人種の壁を越えたフリーダムな音楽。今作は特にロック色が強めながらも、芯は決してブレなかった傑作。「あの頃」のポップパンクキッズが号泣して話題になったWhen We Were Young Festに来年キャスティングされているのも非常に興味深い流れです。
35. ROSALIA『MOTOMAMI』
スペインのSSW、Rosalíaの3rdアルバム。今年世界中で最も注目を受けたポップアクトの一人と言っても過言ではないでしょう。彼女が奏でる音楽はスペインのローカルミュージックであるフラメンコをベースに、R&Bやエレクトロといった現代的なポップミュージックをかけ合わせた、唯一無二の音楽。聴けば聴くほど沼にのめり込みそうになる非常に中毒性の高いもので、これは一度ライブで体感してみたいものです。
34. Lowertown『I Love To Die』
米・ジョージア州はアトランタを拠点とするベットルームポップデュオ、Lowertownのデビューアルバム。トラディショナルなカントリー/フォークをベースにしつつ、時折90sのオルタナギターロック的なアプローチもある感じで最高に好みでした。DIRTY HIT所属ということもあって、より贔屓目に注目してしまいそうです。
33. 春ねむり『春火燎原』
日本のSSW、春ねむりの2ndアルバム。教会音楽的な壮大なイントロに始まり、ヒップホップやオルタナ、ハードコアなどを織り交ぜたサウンド、文学的で引き込まれる世界観の歌詞、そして時折炸裂する激情ハードコア顔負けの魂のシャウト・・・今日本で間違いなくオンリーワンのスタイルをやっているといっても過言ではない完成度で圧倒されました。
32. Skullcrusher『Quiet The Room』
米・カリフォルニア州はロサンゼルスが拠点のSSW、Skullcrusherのデビューアルバム。アンビエントな要素強めのインディーフォークで、どこか儚げな雰囲気が漂っているのが非常に良き。寒さ深まる今の時期にとても似合うアルバムです。
31. 404 Guild『False Down』
サウスロンドン出身のコレクティブ、404 Guildのデビューアルバム。トラック、ラップ共にダークな雰囲気満載で、あまり他に見ないタイプ。3年前にメンバーが亡くなるという辛い経験を経てついに作り上げたという背景も。
しかし、ヒップホップでもこんなやばいグループを見出せるとは、やはりDIRTY HIT恐るべし。
30. 藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』
今や時代の寵児としてJ-POPを席巻する藤井風の2ndアルバム。前作のモノクロームでシックな雰囲気から一転し、カラフルで温かみのあるものになったアートワークに象徴されるように、より多彩なポップソングが収録され、彼の才能の幅広さを改めて感じることができました。今年はピアノ弾き語りツアーでついに初めて彼のパフォーマンスを見ましたが、素晴らしい表現力に飾らない振舞いと、なぜ彼がここまで人気になれたのかその理由を垣間見ることができた気がします。
29. Little Simz『NO THANK YOU』
今年ODD BRICK FESTIVALで豪雨の中伝説的なパフォーマンスを披露したことも記憶に新しいLittle Simz。そんな彼女が年の瀬にサプライズリリースした、通算5枚目のアルバム。大傑作の前作に比べるとミニマムながら前作のようなストリングスやソウルを取り入れた壮大なトラックは健在、3作目『Grey Area』にも通づるものも感じます。
28. Issy Wood『My Body Your Choice』
英・ロンドンを拠点に活動するアーティスト、Issy Woodのデビューアルバム。Billie Eilishを彷彿させる気だるくダウナーなボーカルとローファイなギターが印象的な独自の音楽性で、これがデビューアルバムなのかと思わず鳥肌が立ってしまう才能の持ち主。ちなみに元々画家としても活動していて、ジャケットは彼女自身が描いた絵なのだそう。
27. Saya Gray『19 MASTERS』
カナダ・トロントを拠点に活動するアーティスト、Saya Grayのデビューアルバム。カナダと日本にルーツがある彼女は普段は他のアーティストのサポートミュージシャン(主にベース)として活動しており、ソロとしては今回が初。アコースティックサウンドをベースにしながら、R&Bなど様々な音楽も取り入れた独特の音楽を展開しています。個人的に来年のThe 1975のオープナー候補として推しています。
26. SUPERORGANISM『World Wide Pop』
ロンドンを拠点に活動する多国籍インディーポップグループ、SUPERORGANISMの2ndアルバム。タイトルとジャケット通りの自由でカラフルな多幸感に満ちた最高ポップミュージック。実験感強めな前作に比べるとかなりまとまりのある印象で、グループとしてのステップアップも感じられる傑作。来年1月にはいよいよ待望の来日公演が控えており、本当に楽しみです!
25. SASAMI『Squeeze』
米・カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動するSSW、SASAMIの2ndアルバム。インダストリアルメタルや90sオルタナロックの要素をふんだんに取り入れ、全く新しいかたちのポップミュージックをクリエイトした怪作。独特の世界観満載のアートワークを含め、日本の妖怪「濡女」からインスパイアを受けたそう。
24. 優河『言葉のない夜に』
日本のSSW、優河の通算3枚目のフルアルバム。Phoebe BrigersやBig ThiefなどのUSインディーフォークを感じる幻想的で温かみのあるサウンドに、優河さんの優しく美しい歌声。テレビドラマ「妻、小学生になる。」の主題歌抜擢がきっかけで僕も知りましたが、なぜ今まで辿り着くことができなかったんだろうと悔やみたくなるくらいの素晴らしいアルバムです。
23. The Weeknd『Dawn FM』
名実ともに現行のポピュラーミュージックの頂点に立つ男、The Weekndの通算5枚目のフルアルバム。コロナ禍のサウンドトラックとも評された大傑作の前作『After Hours』に負けず劣らずの傑作。死後を思わせるくらい世界で流れるラジオというコンセプトもよく、日本のシティポップ(亜蘭智子の「Midnight Pretender」)の大胆サンプリングもお見事。
22. 羊文学『our hope』
今や音楽好きだけでなくライトな層にもその名前が浸透してきた、羊文学のメジャー移籍後2枚目のアルバム。ガレージロックぽい曲あり、シンセ導入曲もありと、前作『POWERS』からサウンドと表現の幅が格段に広がった、間違いなく彼女たちの最高傑作。6月に行った単独公演も非常に素晴らしかった!
21. The Lounge Society『Tired Of Liberty』
英・ヘブデンブリッジ出身のポストパンクバンド、The Lounge Societyのデビューアルバム。今年デビューのポストパンク勢で一番勢いを感じたのは彼らですね、乾いたギターの音色に初期衝動が溢れ出るヒリヒリした空気感は、これぞポストパンクと思わせるもの。すでに独自のポップセンスも持ち合わせており、今後black midiのような爆発っぷりを見せそうなポテンシャルの高さを感じました。
20. Arctic Monkeys『The Car』
2000年代のUKロックの覇者、Arctic Monkeysによる4年ぶり通算7枚目のアルバム。Pink Floydあたりのプログレロックを思わせる抽象的なアートワークの今作は、前作に近しい作風ながらより重厚になったストリングスが印象的で、全編通して聴くとまるで一本の映画のサウンドトラックのような心地いい、かつアダルトな音楽。来年いよいよ彼らのライブを観れるのが本当に楽しみでたまりません・・・
19. Maggie Rogers『Surrender』
米メリーランド州・イーストン出身のシンガーソングライター、Maggie Rogersの2ndアルバム。今年のCoachellaでのパフォーマンスが圧巻だった彼女、イメチェンと同時にその音楽性も変わり、力強い彼女の歌唱力が引き立つポップサウンドのアレンジは素晴らしいものでした。今のモードの彼女をぜひともフジロックあたりで観てみたいです。
18. Harry Styles『Harry’s House』
元One DirectionのメンバーでもあるHarry Stylesのソロ活動3作目となるアルバム。実は今年のCoachellaの配信を見るまで、ほとんど彼のソロ活動を追いかけたことはなかったのですが、一人のアーティストとしてこれほどまで成熟している人とは知らず本当に驚きました。『Harry's Style』は80sポップを軸にしっかりと彼なりのバンドサウンドが鳴っている、最高のポップアルバム。ちなみにタイトルは細野晴臣の名盤『HOSONO HOUSE』からとったそう。
17. Babebee『Mind Over Matter』
米ジョージア州・アトランタが拠点のシンガーソングライター、Babebeeのデビューアルバム。beabadoobeeのような甘い歌声に、PinkPantherssあたりを彷彿とさせるハイパーポップサウンドが最高に好み。次々と新しい才能が躍り出るベッドルームミュージックシーンにおいてその楽曲のクオリティは群を抜いており、新たなスター候補ともいうべき存在でしょう。
16. Kendrick Lamar『Mr. Morale & The Big Steppers』
前作『DAMN.』から5年、満を辞してリリースされた現代ヒップホップの王者、Kendrick Lamarの新作。音楽的にはかなりソウルミュージックの影響を感じ、2枚組の大作ながらかなり聞きやすい部類に入りましたね。リリックはコロナ禍を含むこの5年間でKendrick自身が経験してきたた苦悩をベースに展開されており、毎回聴くたびに色々な考えが頭の中を巡ります。
15. Wet Leg『Wet Leg』
英・ワイド島出身のインディーロックバンド、今年最も注目され勢いに乗っている新人でもあるWet Legのデビューアルバム。ユーモアたっぷりな歌詞に、キャッチーでポップなゆるいロックサウンドで、聴けば聴くほど沼にハマっていく感じです。デビュー作にして非常にアイコニックな傑作。
14. DJ Sabrina The Teenage DJ『Bewitched!』
英・ロンドンを拠点とするプロデューサー、DJ Sabrina The Teenage DJの最新アルバム。The 1975のニューアルバム収録曲「Hapiness」への参加で一躍その名を世界に轟かせた彼女ですが、その才能は伊達ではありません。UKガラージ由来のビートに80年代シンセポップ的グッドメロディが組み合わさり、アルバム全編通して多幸感に満ちた最高なダンスミュージックが展開されています。64ビットのレトロなアートワークも彼女のセンスが光っています。
13. Wu-Lu『LOGGERHEAD』
サウスロンドンを拠点に活動するアーティスト、Wu-Luのデビューアルバム。ヒップホップにジャズ、オルタナギターロックなどさまざまな音楽をクロスオーバーさせた、カオティックかつクールなサウンド。混沌としているのに不思議とまとまりのある空気感が聴くたびのどんどんクセになっていく傑作です。
12. Pretty Sick『Make Me Sick Make Me Smile』
米・ニューヨーク出身のインディーロックバンド、Pretty Sickの待望のデビューアルバム。デビューEPの時から注目していた、DIRTY HITの次のブレイクアーティスト最有力候補。90年代のグランジの影響を感じるヘヴィかつローファイなギターロックサウンドに、Sabrina Fuentesの気だるくときどきアグレッシブなメリハリあるボーカルが最高にたまりませんね。好きなものが全て詰まった最高のデビュー作です。
11. Sorry『Anywhere But Here』
ノースロンドン出身のインディーロックバンド、Sorryの2ndアルバム。グランジやフォーク、ジャズやエレクトロなど様々な音楽をミックスしたローファイサウンドはさらに磨きがかかり、2年前のデビューアルバムから確実にステップアップしましたね。来年には来日公演実現なるか。
10. Easy Life『Maybe In Another Life…』
英・レスター出身の5人組、今年ついにサマーソニックで待望の初来日を果たしたEasy Lifeの通算2枚目のフルアルバム。ポップス、ロック、ヒップホップの垣根を越えた唯一無二のチルなサウンドは前作よりもさらに洗練され、本当にずっと聴いていたくなるくらい心地の良いもの。次は単独公演でじっくり見る機会が来ますように!
9. SOUL GLO『Diaspora Problems』
米・ペンシルベニア州フィラデルフィアを拠点に活動するバンド、SOUL GLOの4thアルバム。ドラマー以外は全員アフリカン・アメリカンで、人種差別をはじめとした社会問題をテーマにした歌詞が多い。ハードコアベースにヒップホップやノイズミュージックなどの要素がかけ合わさったカオスでヴァイオレントなサウンドは、フロントマンPierce Jordaの魂のシャウトと呼応して唯一無二の世界観を生み出しています。
8. Alvvays『Blue Rev』
カナダ出身のインディーポップバンド、Alvvaysの5年ぶり3作目となるアルバム。これまでのドリーミーなポップサウンドは変わらずベースにありつつも、シューゲイザーの要素が非常に塩梅よく加わり、バンドとして次のステージに進んだことを証明する作品に。オープニングナンバーの「Pharmacist」からどれもライブで聴くとヤバそうな曲ばかりなので、ライブを早く観てみたい!
7. Liam Gallagher『C’mon You Know』
もはや説明不要、オレたちのロックンロールスターことLiam Gallagherのソロ活動3作目のアルバム。ソロ活動を開始してから5年、これは間違いなくLiamソロの中では1番の高いアルバムですね。過去2作はかなりポップでグルーヴィな曲が主体でしたが、今作はOasisの『Be Here Now』や『Standing On The Shoulder Of Giants』を彷彿とさせるうねるようなギターサウンドやサイケデリックな要素も見られ、アーティストLiam Gallagherとしての成熟をとても強く感じました。今年のKnebworth公演と合わせて、まさに第2の黄金期を象徴するような1枚になったのではないでしょうか。
6. Rina Sawayama『Hold The Girl』
ロンドンを拠点に活動する日本人シンガーソングライター、Rina Sawayamaの2ndアルバム。アグレッシブな雰囲気が漂うデビュー作と比較すると、どこか寄り添うような優しさを感じ、歌声もサウンドもよりスケールアップ。クイアコミュニティの新たなアンセム「This Hell」を筆頭に、このアルバムで彼女は新世代のDIVAの地位を確固たるものにしたといっても過言ではないでしょう。今年のサマソニで初めての日本のオーディエンスでパフォーマンスを披露しましたが、MC含めて全てが最高でしたね。気づけば来年1月のジャパンツアーも目前!楽しみ!!!
5. black midi『Hellfire』
英・ロンドン出身のポストパンクバンド、black midiの3rdアルバム。今やUKのポストパンクシーンの顔となりつつある彼らですが、完全にゾーンに入っていますね。前作より導入したホーンセクションを引き続き取り入れつつも、デビューアルバムに似た狂気じみた演奏が目立つ部分も戻ってきました。アルバムを出すごとに良い意味でよりカオスに、「やりたい放題」になっているのがもう最高!12月の来日公演はまさに狂乱の宴、彼らほど「超絶」という言葉が似合うバンドは他にいないということを見せつけられました。
4. 宇多田ヒカル『BADモード』
今年Coachellaでキャリア初のフェス出演を果たした宇多田ヒカル。通算8枚目となるアルバムとなった今作は、アンビエントやコンテンポラリージャズといった現代音楽シーンのトレンド要素をJ-POPに最高な形で落とし込んだ、紛れもない最高傑作。海外メディアの評価も非常に高く、ラストナンバー「Somewhere Near Marseilles」が辛口で有名なPitchforkのベストトラック10位に選ばれたのも本当にすごい・・・
3. Fontaines D.C.『Skinty Fia』
アイルランドのポストパンクバンド、Fontaines D.C.の通算3枚目のアルバム。前作も年ベスに選ぶほど大好きで素晴らしい作品だったのに、それをさらに越えてきちゃいました。より気だるく不穏に、かつエモーショナルで壮大さすら感じるようになった彼らのロックサウンドにはいつもグッと引き込まれます。来年の2月には今年のフジロックリベンジも兼ねた初来日ツアーがあり、ライブでこのアルバムの楽曲がどのような空気感で披露されるのか、とても楽しみです。
2. beabdoobee『Beatopia』
ロンドン出身のシンガーソングライター、beabadoobeeの2ndアルバム。90sギターロックの影響が濃かったデビュー作から2年、前作に通ずるオルタナロック調な曲はありつつも、フォークやボサノヴァなど幅広いジャンルを包容し、圧倒的なステップアップを遂げた大傑作。Beaが幼い頃に思い描いていた空想世界から着想を得たという『Beatopia』。ドリーミーでバラエティ豊かな14の楽曲からなるそれは、紛れもなく現在の彼女にとっての「理想郷」そのものか。初来日となったサマソニのステージも最高なひと時でした!
1. The 1975『Being Funny In A Foreign Language』
2010年代のロックシーンの王者、The 1975の通算5枚目となるアルバム。今年は本当に素晴らしいアルバムが多かったので1位は本当に迷いましたが、やはりThe 1975に落ち着きました。今はもうこれ以外は考えられません。コロナ禍の混沌とリンクするかのような集大成的作品となった前作から約2年半、より大人になった彼らが僕たちに届けてくれたのは、成熟したグッドメロディがつまった至高のポップミュージックでした。まるで原点に立ち返ったかのようなモノクロのアートワーク、過去一コンパクトながら徹底的に生のバンドサウンドにこだわった曲の数々にそしてそこで歌われる「愛」。未だ混乱が続く現代社会で生きる僕たちに必要な全てがそこにありました。
今年はついにサマーソニックのヘッドライナーとして帰ってきた彼らは、11月から「At thier very best…」と銘打って久しぶりのワールドツアー中。あのサマソニを超える、より「最高な状態」のThe 1975を来年4月に見るのが待ち遠しいです。
いかがでしたでしょうか。今年はビッグネームのリリースが相次いだり、来日公演が再び活況を取り戻し始めたりと、止まっていた時計の針がどんどん動き出していくのを強く実感する1年となりました。その動きの一つ一つに僕自身も救われ、生きていく希望を見出すことにもつながりました。毎年ベストアルバムをまとめながら思うのは、本当に音楽が好きでよかったということ。来年もたくさんの素晴らしい音楽に触れながら、頑張って生きていきたいと思います。