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おひとり様マンション購入&リノベ記〈3〉住む街の決め方

住むエリアを決めることは、自分のライフスタイルや将来設計の棚卸しのようなものだ。何に価値を見出すか。どこへ足を運ぶことが多いか。どんな環境が心地よいと感じるのか。

人によっては、職場への近さや子どもの学区、実家との位置関係などが判断基準になるかもしれない。それはつまり自分のプライオリティをどこに置くか、ということに尽きるのだと思う。私もあれやこれやと考えた末に、コンマリ大先生のメソッドではないが、自分の気持ちがときめくエリアに決めることにした。

以前に述べたように、私は長らく同じエリアに住み続けてきた。都心なのにのんびりとしていて治安は良く、勝手知ったる街である。ご近所に友人も多い。そして、歴史的な遺構があり、昔からのコミュニティが息づいている。この点は私の生まれ育った街とも共通している。便利で住みたいランキング上位の新興住宅地に一時的に住んだことがあるが、あまりにも効率的で人工的に作られた街に、私は便利さより薄気味悪さを覚えて息苦しかった。どうやら私は、人々の年輪が堆積した土地にどうしようもない魅力を感じるらしい。

好きという直感をベースに、改めて立地に目をやると公園も図書館も散歩に適した遊歩道もあり、ここ数年の都市開発でスーパーも増えてきた。使える電車の路線は複数あり、東京駅や空港までは乗り換えなしだ。私の趣味である観劇にも便利で、主要な劇場までなら乗り換えなしで行ける。転職やフルリモート勤務を経験すると職場との距離には無頓着になるが、乗り換えを許容すれば主要なオフィス街はだいたい30分前後。文句のつけようがない。

懸念点の一つは、ハザードマップ。隅田川に近い分、荒川が氾濫するとこの区域は例外なく水に浸かる。とはいえ浸水レベルは高くなく、都の水害対策も進んでいる。

もう一つの懸念は、地価の高騰だ。はじめてこのエリアに住み始めた時、めちゃくちゃ便利なのに信じられないほど家賃が安い、コスパ最強の街だった。社会はそんなに甘くなく、あっという間にマンションや商業施設がひしめき、今や都内でも有数の地価になってしまった。10年前にマンションを買っておけば……というifの後悔は、この後も何度も苦しめられるのだが、こればっかりは巡り合わせやタイミングだ。嘆いてもどうにもならないことに囚われていては仕方がない。予算を設定し、その範囲内の物件で妥協するしかない、と腹を括った。

ちなみにこのエリアの相場が特段高いのかどうか、物件サイトなどを使って調べてみたが、住みやすそうな文教エリアや地盤が強固な住宅地と比べても、突出しているわけではなさそうだった。

憧れでいうと、私は昔から水辺に近いところが好きで、海や川が見える家に住むことを夢想したこともあった。海の近くとなると人気の湾岸エリアになるが、街としての魅力に乏しいと感じた。川の近くはハザードマップ的には真っ赤だ。窓から海が見えることと、散策の楽しい街に住むことを天秤にかけた場合、私は後者の方が好ましく思えた。

具体的なエリアを絞り込むため、休みの日を使って散策を繰り返し、住んでいる、あるいはかつて住んでいたお気に入りの地点から許容できるエリアを少しずつ広げることにした。この街は定番的に南側が人気なのだが、私はそこではなく、どちらかと雑多な賑やかさのある西側エリアにより強く惹かれることがわかった。

住みたい、住めると判断するエリアが決まれば、次はいよいよ物件探しだ。新築マンションはほとんど立たない、オフィスビルやマンションの密集地だ。必然的に中古マンションを探すことになる。相場はどれくらいなのだろう。気にいる物件はあるのだろうか。

不動産購入の最初の山場である、物件探しに取り掛かることにした。

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