祝日
カネコアヤノの祝日を爆音で聞きながらガタガタ震える右手と左手を握りしめあいながら帰路についた。もう朝の六時を過ぎていた。気分が良かったので久しぶりに外で飲んだ。一杯だけ飲んでスッと帰ろうと思っていたが、終電まで、二時まで、三時まで、とズルズルズルズル「終わり」を伸ばし、案の定、空が白み始めたころには鬱のターンに入り、最悪な気分だった。死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい。白い縁石を踏むたびに、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、とマスクの中で呟く。
暗転。明転。
何回か行ったことのある店に行った。席が空いていれば入ろうと思った。空いていた。一番奥の席に案内され、ジャスミンハイを頼む。
初めて会う方がお隣にいらして、その方はわたしが通っていた大学の近くでお店をやっているとのことだった。そして、そのお店でアルバイトをしている学生たちを連れて今日はやってきたらしい。つまり、わたしの後輩だ。母校に愛着はない。けれど同じ大学に通っていると聞くと不思議と親近感が湧く。「まだX号館でXX文明論の授業ってやってるんですか」「やってますやってます!ちょうど今苦戦しているところです!」「あー、懐かしい……」というような会話をし、また会話の輪から外れる。
カウンターのバーではよくあることで、あっちの会話の輪に入ったり、抜けたり、こっちの会話の輪に入ったり、抜けたり、それを繰り返す。
わたしがすべての会話の輪から抜けてぼんやりとジャスミンハイを飲んでいたら、彼らの会話が脳に飛び込んできた。
「遅刻が多いのはマジでADHDだよ!」
「はいはい、だからわたしはADHDなんだってば!」
「そんなこと言ったらおれだってADHDだしLDだよ!」
なるほど、なるほど、なるほど、なるほど。
発達障害の検査を受けましたか?診断を受けましたか?社会生活に支障をきたしていますか?ほんとうに困っているなら精神科へ行ったほうがいいと思います。発達障害を揶揄しているひとたちを見るとそう問い詰めたくなるが、実際にはやらない。ヘラヘラと笑ってやり過ごす。ヘラヘラと笑ってやり過ごした。そして、ほんとうに発達障害のわたしは、ちょっとだけ傷つく。
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