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なんでもない日のシュトーレン

以前同じ部署だった先輩から「今日ずっと内勤?」とチャットがあった。

「はい。今日はずっと自席にいます!」
と返信して
「おや?なんだろう?」
と思っていたら、お昼過ぎに先輩が赤い塊を持って現れた。

「はい。シュトーレン。こないだパン屋さんに行ったら売ってて、『あー。まきこさん好きだったなー』って思い出して」

と言って私に手渡してくれた。

「赤い塊」は、真っ赤な不織布でラッピングされたシュトーレンだった。

受け取ったときにずっしりと重かった。

シュトーレンはバター、砂糖、ナッツ、洋酒に漬け込んだドライフルーツ、シナモン、カルダモン、ナツメグなどのスパイスをふんだんに使ったドイツのクリスマスケーキだ。

バターは生地に練り込むだけではなく、焼き上がった生地を澄ましバターの海に沈めて「これはバター漬け」なんじゃないかってくらいバターまみれにする。



その後、白砂糖をまぶし、粉砂糖をふりかける。



この殺人的なバターと砂糖のおかげで、シュトーレンはとても日持ちがする。

また、時間を経るごとにバターがなじみ、ドライフルーツから洋酒が染み出し、味に深みが出てくる。

カロリーモンスターだけれど、その風味豊かな甘えのないお菓子に私は出会った時から虜になってしまった。

先輩と同じ部署だったときに、うっとりとして「シュトーレンをいかに好きか」を語ったかもしれない。

心の隅にそのことを住まわせてくれていたのかと思うとじわじわと胸が温かくなった。

誕生日でも記念日でもない、なんでもない日にいただいたシュトーレンは、ずっしりと幸せな重みがあった。

手のひらに残る幸せの余韻を感じながら午後の仕事に勤しんだ。

三連休の中日、
シュトーレンを薄く切っていただいた。
とても美味しかった。



#シュトーレン #エッセイ #日記 #まきぽん #20201123