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科学的な議論をする上での学術論文の信頼性について

国会でも最近、福島の甲状腺がんについて何が科学的に正しい情報なのか、がよく議論になっています。
HPVワクチンの時、また、現在でも新型コロナワクチンで色々な方が、いろいろな論文をご紹介、引用してお話をされておられます。

国会でさえ、全て同じような価値の論文であるかのようにして、引用されているのを最近目にしますが、ふつうに学者が引用するものとしての、科学的な情報源の信頼性には大雑把に次の3つの分類があります。

例えば、福島の甲状腺がんに関する論文でしたら、以下のようになると考えます。


A)国際的な専門家集団が出した見解→非常に信頼度が高い


例)UNSCEAR、IARC, SHAMISENなどの報告書

B)審査のある国際論文→信頼度が高い


例)大津留晶氏、高野徹氏、緑川早苗氏、村上道夫氏、津田敏秀氏らの論文

C)審査のない論文、日本語の論文→信頼度が低い 


例)鈴木眞一氏、坂本穆彦氏、寺澤政彦氏らの論文、商業雑誌の論文


*福島の甲状腺がんに関してよく取り上げられている論文の例を挙げています。名前が挙がった筆者の論文がすべて同じ分類、ということではありません。


一般的に専門家の間で科学的な議論の材料として使われるのはBまでで、Cが考慮されることはまずありません。

ただし、Bでも津田氏の論文のようにAで欠陥が指摘されたり、反対論文が多数出ているようなものは専門家の間で信頼されません。また、Cに分類される論文でも学会が関与していない商業誌等に掲載された論文は、さらに信頼性が低いとみなされ、たとえば学術業績としてはほとんど評価されません。

データや見解に自信のある研究者は、B以上の形での掲載を目指しますので、Cに分類される論文は何らかの事情でそのレベルに至らなかった論文と考えることもできます。何が科学的に正しいのか、という議論をするときはB以上の論文に絞って考えるべきでしょう。

科学的に誤った医療行為は対象者に健康被害をもたらします。その意味でこの順位づけは国民の健康を守る政策を考える上で非常に重要です。


例えば先の国会(参議院)の議論であったように、UNSCEARの報告(ランクA)を否定する根拠として寺澤政彦氏の論文(ランクC)を挙げるようなこと(せめてBに分類される論文ならまだしもですが)は科学リテラシーに欠けた行為とみなされる可能性があります。