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2022 M-1感想~1点の格差、ウエストランドとニューヨーク、毒舌漫才の歴史と需要~

はじめに

2022年のM-1もあっという間に終わってしまった。今年も例年同様に感想をnote記事にしたいと思う。
※各M-1関連コンテンツ視聴後のため、無意識のうちに誰かの言葉になっていたら申し訳ございません。

敗者復活

出番抽選会
まず出番抽選会って毎年こんなに面白かったっけ?去年はニューヨークが何番になるのかの緊張感があったからかほとんど覚えてないが、今年の出番抽選会はななまがりの小道具ボケやダンビラムーチョのドンタコス、この後キモイ妹出すからって終始爽やかに印象点を稼ぐカゲヤマ、そしてダッシュで3番を引いて自席で青冷めるからし蓮根伊織など、笑いどころがあまりに多かった。

ネタ 
・令和ロマン

やっぱり何を言おうと我らが令和ロマンくん。
準決勝でも相当ウケていて、令和ロマンは当確だろうという程のところからの敗者復活となった。
出番順抽選でもオズワルドの後となり、私は2019年の敗者復活で和牛の直後の出番になったことで世間に見つかったラランドを思い出していた。
それに合わせて彼らのYoutubeで半ばふざけながら話していた「オズワルドと令和ロマン」「ミキと令和ロマン」みたいな投票をもらおうという戦略が合わされば勝ち抜く可能性は全然あるなと思っていた。
(そんな旨のツイートをYoutubeのスクショと合わせてしたら1100ぐらいのいいねが来てM-1パワーを感じた)
そして披露されたドラえもん。テレ朝での放送、視聴者投票ということを計算したのだろう。ミーハーなテーマに固有名詞の連発で巨人師匠などがどう見るかはともかく、めちゃくちゃ面白く結果も二位と大健闘。最高の結果であった。

・ダンビラムーチョ
去年の敗者復活におけるさや香のからあげは今年はダンビラムーチョの森山直太朗だった。歌はもちろん、小道具で出してきた意味不明な手のひらサイズの管楽器や下手すぎるハイタッチなどあまりに面白すぎて毎日見ている。
来年はストレートに上がって決勝で歌い上げてほしい。

・カゲヤマ
ついに妹だけでこの大会のほぼほぼすべてを終えたカゲヤマ。
オチを強制終了音に合わせる往年のインポッシブルスタイルはTwitterでも大きな反響を呼んでいるが、なんとカゲヤマさん、今時点ですべての「カゲヤマ」「キモ過ぎやしねえか」をいいねしている。これまで1000件以上あったと思うが、いつまでどこまでこのエゴサをいいねしていくのかも要注目だ。

その他、感想記載は省略するが全員面白かった。結果はオズワルド。面白いネタで人気もあり文句なし。人気投票チックな敗者復活に少し嫌気もさすが、審査員審査が二回あっても意味ないのでまあ仕方ない。

決勝

1組目 カベポスター 634点
ABCを獲った大声コンテストのネタ。完成度が高く素晴らしいネタで後半であれば優勝も狙えただけに残念だが、大会全体を考えるとトップバッターに最も適任であった。山田邦子さんの点については後述。

2組目 真空ジェシカ 647点
シルバー人材センターのネタ。2年連続決勝ということで、真空ジェシカを受け入れる土壌があるだろうと思い3連単にも入れていたが出順が早すぎた、そしてまさかの松ちゃん怒られ枠になってしまった。。
個人的にはヘブンズドア→ヘブンズゲートとか、ハッキングしたけど何もないの時の間の秒数、整理券の数え方など準決勝から改良されていて良かった。

3組目 敗者復活:オズワルド 639点
3組目で敗者復活が出てオズワルドに。オズワルドは敗者復活からの勢いそのままに優勝までありえると思い、3連単に入れていたが、今年はオズワルドの年ではなかったみたいだ。
プロからしたら緊張による間やテンポのズレがあったようだが、来年こそはストレートに決勝に返り咲いてほしい。

4組目 ロングコートダディ 660点
準決勝でこのネタ見て笑って、これは決勝の会場でも順番さえよければ爆発するだろうなと思っていたが最高の結果に。
一つ一つの大喜利をすべて当てていて凄かった。文句なし。

5組目 さや香 667点
準決勝でこのネタを見たときに優勝を確信していた。3連単も悩んではいたが1位はさや香固定でずっと考えていた。(実際はからあげやりだしたらどうしようと思ってずっと迷ってはいた、それもそれで大好きだが)
往年のかまいたちが見せた一つのゴール、賞レースにおけるしゃべくり漫才での展開をつけるための手法である、段々とツッコミが間違ってくるという形に、ボケツッコミを逆にすることでたどり着き、M-1歴代2位の点数に。最高のネタだった。
ちなみに本当にどうでも良いが、関西弁の「免許返納しやんでいい」と「免許変更せんでええ」ってどんな違いなんだろう。「しやんでいい」は「~まではしなくていい」ってニュアンスなのかな、そのニュアンスの時は毎回しやんでいいって言うのかな、その割にあんまり聞いたことがない気がする。

6組目 男性ブランコ 650点
これも予選ばかウケで決勝でもハマるんだろうなと思っていた。
個人的には男性ブランコの漫才は去年の旅館みたいなワードの羅列が好きなのだが、それをフリにしたような良いネタであった。
来年はキングオブコントでも決勝にまた行ってほしい。

7組目 ダイヤモンド 616点
ダイヤモンドのネタはいつも着眼点が良いし色んなパターンがあって、このネタも好きだがここまでハマらないとは、、。
というかM-1において正統派漫才や動きやインパクトのあるコント漫才のどちらかしか勝ち目がないのがなぁ。
「漫才を塗り替えろ」のキャッチコピーと共にキュウと合わせて決勝に残してその風潮をなくそうと意図されたのだと個人的に思っているが、こういう結果になると来年以降の審査にも響いてくるのかなと思ってしまう。。

8組目 ヨネダ2000 647点
ヨネダも観客に爆発するとは思っていて、志らく師匠からの点数も絶対伸びると思っていたので3連単に入れるか悩んでいた。
結果は惜しくも5位だったが、これで一気に知名度も上がって売れるだろう、非常に楽しみだ。

9組目 キュウ 620点
準決勝の全国弁をやるのかと思ったらなぞかけの方であった。
ウケる、伝わるネタよりこのネタが好みでやりたいネタだったようで、それでこの結果であればもう仕方ないのではないか。
個人的には全国弁、いやもはや「ゴリラあいうえお作文」とか「ルパン」やるのすらありだったのではと感じてしまうが。
カベポスターもそうだったが、審査員とのヒリつくやり取りが良かった。

10組目 ウエストランド 659点
準々決勝からこのフォーマットでウケまくっていて私も爆笑していたが、心のどこかでこのタイプの毒舌漫才をM-1で優勝させてくれないんじゃないかと勝手に決めつけていた。
ただそれを跳ね飛ばすほどウケて、さらに志らく師匠からの「これが王道になって欲しいという願いを込めて98点」という言葉が会場の空気を一気にウエストランドのものに変えたのかなと思っている。

ファイナルステージ1組目 ウエストランド
今年はファイナルステージの出順は指定できず順位順ということで、そのままの流れでウエストランドが1番目に。ただこれが非常に功を奏し、4分ネタ1本ではなく8分ネタ1本をした形に。掴みの「あるなしクイズ」と言った段階での、まだやんのかこいつら?という雰囲気からもう最高だった。
会場の空気も味方しアナザーストーリーとR-1すらいじり出したがそこが一番ウケていた。

ファイナルステージ2組目 ロングコートダディ
タイムマシーンでタイムトラベルをする、完全なコント漫才。
ロコディらしいネタで素晴らしかった。最終的には票が入らなかったが僅差のところであったのは間違いないだろう。

ファイナルステージ3組目 さや香
同じような形でさらに新山が狂っていく漫才で爆笑したが、やはり下ネタは鬼門なのか。下ネタは鬼門って風潮も変えたいがこれは向こう20年ぐらいは変わらないのかな。あの一本目の漫才がありながら優勝できないのは非常に惜しい、残念。

ということで毒舌漫才vsコント漫才vsしゃべくり漫才の勝負はウエストランドが制した。

審査員の採点について

今年から新たに加わった山田邦子さん。始まる前は漫才のイメージのなさや最近のテレビ露出の少なさ等から不安視される意見も目立っていた。(私もそうだった)
が、堂々とした立ち振る舞いや話され方、オーラ、若い感覚、締まるコメントは素晴らしかった。見ていて安心したし、まさに審査員にふさわしいと感じた。
ただ、、、点数の付け方が他の審査員とは大きく異なっていた。
結果的には全体順位に即した採点をされていて非常に良い感覚ではあったものの、自身の振り返り生配信で「基準を80点にしていたが他の人は90点を基準としていた」と話していて震えた。
OPで毎年M-1見てるって言ってて基準80にされたんですか???
しかも案の定、全員面白かったからって80以下もないし(あっても困るが)、。
そしてこれの何が一番まずいかって、
松ちゃんの2点=邦ちゃんの5点ぐらいになってることだ。
これが来年以降も続くとすると、仮に1点を争うシチュエーションになった場合に邦子さんの好みじゃないコンビは相当不利になってしまう。
極端な仮定をすると、ランジャタイみたいな奇抜なネタをすれば志らく師匠からの高得点は堅く、邦子さんにもそれがハマれば相当有利だからそれを意図的に狙う ということも起こりかねない。

ただ勘違いしないでほしい、点数に開きのある採点が悪いわけではない。むしろ我々お笑いファンが近年の賞レースに望んでいた、88-99点までのたった12点の間に10組を正確に並べる採点が異常すぎるのだ。
なので好みで80-99点に幅を広げるのは全然良いのかなと。最近インフレ進みすぎて差つけられないし。
あとはナンセンスかもしれないが、新しい審査員が入る場合は全員で事前に採点の基準点のガイドラインとか共通認識を統一するとかもありだと思う。
(点数だけの話で、基準はバラバラでないといけないが)

とにかく、今回のように一人だけ採点幅が大きくなりすぎると、1点を争うシチュエーションの際に一人の好みに左右されてしまう結果が起こりうるので、どうにかそうしたことがないようなリスクヘッジを運営に考えてほしいと切に願っている。
ここクリアした上でですが、個人的には邦子さんは絶対続投して欲しいです。。。

感想番外編

・(個人的主観)毒舌の歴史と需要
昭和の時代からそうなのだろうが、毒舌には一定の需要があり続けるんだなと改めて思ったM-1だった。
本当に大雑把なもので恐縮だが、自分の中でのお笑い界における毒舌の歴史の流れは
ツービートとか毒蝮三太夫とか爆笑問題などがそれぞれ流行り、
その後2010年辺りからオードリー若林と南海キャンディーズ山里、バカリズムによる陰キャラの目線から世の中を斬っていく形の毒舌が流行。
(爆笑問題もそうなのだが発信の仕方は陰キャラのそれではないと思っている)
そしてオードリーや山里、ナイツ、ウーマンラッシュアワーなどでのミレニアムズという番組が終わった2015年あたりでこの毒舌ブームは一旦ピークのまま終わったと思っていた。
同時に有吉も2007年頃に共演者へのあだ名及び毒舌でブレイクし、その後2015年あたりには毒舌が落ち着いていたと思う。

2015年あたりでいえば「スタバでマックブックいじってる人大した仕事してない」とか「ハロウィンで渋谷ではしゃぐ奴ダサい」とか、”ベタな毒舌”と呼ばれる謎のものすら出来上がっていた感がある。

2016以降はゴッドタンの腐れ芸人セラピーという企画にて、「売れないアイドルが世間の毒舌ブームに乗り薄い毒舌を吐く、その延長で我々底辺芸人が売れないアイドルから雑なイジリを受けて腐っている」みたいな、”毒舌の毒舌”がコンテンツとして成り立つ時代が到来。
そして2019年M-1でミルクボーイとぺこぱの漫才を受けて「人を傷つけない笑い」という(謎の)ものが崇拝された。かつて毒舌で売っていた上記芸人も全員結婚し、世間の過剰なコンプラ意識とも合わさり毒舌ブームは完全に収束した。。
と思われていたが、この「今の時代だからこそ言える毒」みたいなものが新たな需要として生まれていたのだ。
そこにウエストランドがハマったという要素も少なからずあると思う。
「この時代に過激な毒舌を言うな(代弁してくれてありがとう)」みたいな。

・ニューヨークとウエストランド
今回のM-1の結果を受けて、ごく一部だがウエストランドとニューヨークを同一的に語っている人を見かけた。
私の中での二組の決定的な違いは
ウエストランドは「陰キャラが世の中を妬む毒」
ニューヨークは「1.5軍の立場で世の中に感じた違和感に悪意を乗せる毒」

ということだ。
ウエストランドはこの”妬み”の角度がほとんどだが、
ニューヨークは「話術ある感じでないヤツ」とか「自分をイケメンだと勘違いしてる振舞いのヤツ」とか世間にたまにいる変な人やものへの"違和感"レベルのことに悪意を乗せてネタに落とし込むのが非常に面白い。
そしてもちろんウエストランドみたいにストレートな毒舌を言うネタも多々ある。

・ニューヨークが今年のM-1に出ていたら
ウエストランドの代わりに同じ角度で今のニューヨークがあのネタをやっても、既に売れっ子なのに今更なんだと思われて多分あそこまではウケないのではないだろうか。そもそもウエストランドが面白いのは、あの説得力のない見た目だからだ。あのネタだって長身イケメンがやるとただの正論になるが、井口さんがやると小さいおじさんの滑稽な妬みになるから良いのだ。

もし仮にニューヨークが2019-2021年までKOC含め一度も決勝に来れず、ダイヤモンドと同じように今年のM-1が初で、かつニューヨークのスタイルの毒舌漫才をしたら優勝していたかもしれない。
でもその形で優勝して毒舌ばかりが求められても窮屈だし、今の世界線の方が良い気がする。
尖ったことも大衆向けのこともマルチにバランスよくできる今が一番良いのだ。(ウエストランドと異なりそれが成り立つ見た目も持っているので。)

ニューヨークが今後また賞レースに戻るとしてもストレート毒舌ではなく、違和感を嶋佐の変なキャラとして落とし込んだようなネタが良いのかなと思う。
M-1の予選のお客さんは売れっ子のストレート毒舌なんかには厳しそうだし。。

長くなりました、先日の吐露の流れでストレートに色々書きすぎてるかもしれません、どうかご容赦ください。

お読みいただきありがとうございました。
改めまして、ウエストランド、優勝おめでとうございます!

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