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「ひとり空間の都市論」要約

大学2年時代のメディア論の課題を見つけたので復習がてらシェアします。

南後 由和「ひとり空間の都市論」 ちくま新書
本書の関心→「なぜ都市に単身者が多く集まるのか、単身者がどのような空間に身を置き、どのような体験をしているか?」

第1章 ひとり・ひとり空間・都市

•「ひとり」という表現方法は2つの意味がある。

・「一人」=人間の数え方や単位としての一人 
・「独り」=孤独や独身としての独り

「ひとり」が持つ残酷性…年齢や階層、ジェンダーや世代など様々な属性の差異や格差を覆い隠してしまう →「ひとり」を属性ではなく、状態として捉える。
…一定の時間、家族、学校や職場などの帰属先の集団・組織から離れて、ひとりであるあり様。(Ex.家族のいるリビングを離れ、自室で一人Netflixを観る)
=状況としてのひとり

図1

・「空間」とは何か
アンリ・ルフェーヴルの3つの次元

①物理的な形態を伴う次元
②頭の中で抽象的に施行される次元
③新たな意味を付与する次元

→相互に入れ子状の関係であり、外側から客体として観察されると同時に
内側から人々の営みによって生きられるもの
では「ひとり空間」はどのように捉えられるか?

Case1「ひとりの住まい」の場合

①木賃アパートやマンションという物理的形態
②「四畳半」「六畳」という単身者に関する統計データ
③移住者の趣味や生活の痕跡を垣間見ることができる。

画像2

「ひとり空間」とは=一定の時間、(都市の場合は匿名性のもとで)一人の状態が確保された空間。
状態としてのひとりを通して体験し、状態としてのひとりになることで「ひとり空間」はできる。=人と空間の関係を内包
→短期長期関係なく「状況としてのひとり」を生み出し続けている場であり、互いに匿名性と異質性をもつ「ひとり」が行き交い、交通・通信に媒介され生活。
→この概念は以前から定義されている。「都市は個人がそこに含まれると同時に個人を超えられる存在である」ジンメル[2011]

都市は流動性が高く、神経的刺激が多いということもジンメルは述べている。
神経的刺激から解放されるために人々は変化から距離をとり、非人格的、没個性的存在として他と接する態度を身に付けた。=控えめな態度

控えめな態度は自己保存的で他人に無関心である。ではそのような人々はどのように生活していたのだろうか?
→「貨幣経済」、「時間的正確さの遵守」といった計算可能性 (価値→価値へ還元)
しかし、それにより個人という存在をも他者や貨幣に交換可能にしてしまっている
個人は他人との個別性を獲得できず孤独と向き合うことになる
→肯定的に捉えれば、近隣との人間関係から解放され自由である。
「匿名性」「精神的な距離」を確保したうえで孤独は自由に変換できる。

シカゴ学派の都市社会学者ロバート・E・パーク、アーネスト・バージェス、ルイス・ワース「ひとり」について言及、議論展開→
「移動性」と交通・通信による「個々人の動員」という概念
移動性とは?→移動と移動性に区別。移動…transport=規則性のある形にはまった変化しない動き

移動性…新たな刺激や状況に応じて起こる移動の変化及び他社との接触の増加
個人や人口が反応する刺激の量と多様性によって測定(パーク)
移動性はコミュニケーションが左右
バージェスとパークは異神経的刺激に人がどのように反応するかを移動性で再考察
交通・通信の発達→個人結合が1次→2次へ 都市生活における人現関係の匿名性
Mediaによる接触という観点
都市生活 物理的距離、精神的距離の近接は比例しない。2次は物理的距離を超えて精神的距離の機会を増加させ、距離を縮める。
しかし、交通・通信は仲間との接触・結合を増やし、もっと移ろいやすくした
個人の動員
Media=結合させ、分断させる (マーシャル・マクルーハン)

以前とは異なる空間、時間間隔やコミュニケーションのパターンを私たちにもたらし(Ex.TVと活版印刷)、いつの時代も人々に「結合」と「分断」を与える。

シカゴ学派、社会学者→移動という経験がどのように構造化されているのか、移動性によって促されるのかについて不十分な部分を解明

→ジョン・アーリのモビリティ(移動+移動性)という考え方

①モビリティには物理的移動と社会的移動、通信を介した他者との接触がある。
②モビリティには時間の概念が含まれ、永続的なものと、一時的なものがある。
③モビリティには当人の能動的な動きと人的災害などによる受動的な移動がある。

アーリはこの考えについて人だけではなくモノや情報、エネルギーなども共通すると論じた。=人の移動はモノや情報、エネルギーの移動を支えるインフラやそれらのルートとして構造化、規定。
都市…自由のための道徳的環境を見出すことに魅力 (パーク)
「ひとり空間」はどのように獲得するのだろうか?
→他者、外部とのサービス依存によって得る
都市…人口密度、規模○+→「空間の商品化」が進む。
空間消費が労働力を再生産している。 (ルフェーブル)
「集団的消費」(Ex.集合住宅や学校) (カステル)
集団的消費の配置→相互結合→組織化→大量生産の単位→都市
ルフェーブルとカステルの思考…「機能主義」
→空間が断片化され、売買、交換の対象になることで発展
「均質空間」…機能主義と密接な関係(Ex, オフィスビル、マンション)
捜査側にとって物理的次元、意味的次元の2つで拡張・分割可能
ユーザー像…数字としての匿名性を秘めた一人
→「単位としての一人」

第2章 単身者とモビリティ

・住宅…居住する建物の側面 
・住まい…ライフスタイル、住居的側面
ひとり暮らしの居住スペース→四畳半若しくは六畳以上が主流
歌に多く使用→世代を超えた体験として広くシェア
=社会的意味、集合的記憶の喚起
古くは鎌倉時代からこの様式は存在した=「方丈記」。

①一時的な住まい
②京都の噂が流れてくる
③用事があれば都へ行くことができる

長明は、人とのかかわりを避けつつ、京都の情報を得て、必要があれば「再接続」をしていた。
=都市の「ひとり住まい」の抱えるモビリティ、
多メディアを介したコミュニケーションなどの原型

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都市は多様な人々が流入し、モビリティが顕著
都市における「ひとり住まい」

①モビリティ 家→学校や職場
②アパート→マンション→一軒家

→2つは移動可能性を持つ
①交通で外部アクセス可能性 ②経済移動可能性
現代住宅双六で見る住まい観
単身者 寮・寄宿舎→木造アパート・公営アパート→マンション→一軒家
=住み替え+社会的移動
寮 4~6畳70年代から木造アパートが主流に。特徴…設備不充足=外部依存が一般的
学生29歳以下がマジョリティ 一時的住まいで住み替え頻度は高い
1969年8割が3年以内に住み替えたい
⇅ 
70年初頭 コンクリート、鉄筋のアパート
単身者 ワンルームマンション 特徴…トイレ、シャワーの完備
=都市部の若年層増加
種類…ビジネスマンション、リースマンションなど 
70年代半ば リースマンションの台頭、定番化→90年代まで流行
特徴…男女比が半分ずつ 学生、サラリーマンで8割を占める 短期2~4年→帰属意識低=精神的距離をとる方向に。 
海外と比べると一部屋がかなり狭いが、区切ったり、収納をつくったりして、空間を使う
→内部完結化 +部屋にあるラジオやテレビ、ポスターなどによって物理的距離を超えた外部接続
個室(遮断)にいつつ、デバイスによる外部接続で、集中できるという形≒飛行機の操縦席
手の届くところにモノがある狭小さ+外部移動可能性→第一のモビリティと関係
都市における自分の居場所を街全体にする=移動可能性の優先順位○高
∴都市に住む人 空間<時間
1990年代以降 デザイナーズマンションが台頭
2000年代 女性単身者の分譲マンション居住が増加→背景には晩婚化・非婚化、就職機会の増加
1970年~晩婚非婚や単身者は年々増加する傾向にあった。その過程で住居は多様化、拡散される
若年単身者世帯内単身者(実家暮らし)、単身者(一人暮らし)、世帯形成者(2人以上)の3つに分類
1990~2005単身者より世帯内単身者が多 
住まいのモビリティの観点で考え直す↓
高度経済成長期…田舎から都市部へ人が流入、その人らの息子娘が単身者へ
=住居住み替えと年齢、所階の上昇という社会的移動が対応しなくなった
2000年代後半 シェアハウスの登場
ウィークリーマンション、マンスリーマンション→一時性を高めたマンション
シェアハウス→一時的でモビリティと資本との関係を提示している

①社会関係資本
②「集まって住む」ことを通じた所有から共有への意識変化
③シェアすることでコストを抑え、他にコストを投じることができる
④居住者とのコミュニケーションと互酬性

モビリティ保持しつつ、社会関係資本を運用
SNSの普及と関係→マッチングをより正確に 
シェアハウスにおける個室「保険」「逃げ場」=選択可能性をもつ
・ワンマン→切断指向、社会関係資本の蓄積はほぼ無
・シェアハウス→社会的ネットワークを含む社会関係資本の蓄積○有、将来性は未定

「ひとり住まい」のPICK

①交通・通信etcを介した外部空間への移動性重視
②住み替えを考えているとき 移動可能性には経済資本と社会関係資本が複合作用
③住宅を所有すること=モビリティを減退させ、地域との対面的接続的関係を作ることが社会関係資本を蓄積する条件だった→緩和された
高齢者にとっての住まい選択にも経済資本と社会関係資本が
複合的作用を起こしている
住まいの多様化=「独居老人スタイル」
住宅の外部空間との接続多、依存する形
仕事や趣味を持ち、何らかの制作、生産をしている
経済資本より仕事趣味を通じた社会関係資本によって図られるべきもの

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