図書室とホットケーキ

最初、一緒にいる子は女の子だった。
今の自分が昔の自分と一緒にいるような、不思議な感覚。全然喋らなくて、暗くて、常に下を向いてるような子。
そんな子がたまに笑顔を見せてくれるのが、夢のわたしはたまらなく嬉しくて好きだった。一生懸命話しかけて笑わせようとして、笑ってくれたら心がホワホワして、わたしも一緒になって笑ってた。
目を閉じた次の瞬間には、もうその子は何処にもいなかった。
本に囲まれた図書館のような空間で、棚と棚の間にドアがある世界。ドアを開けると部屋になっていて、当たり前のように皆暮らしてた。広々として家具も一通りある、住みやすそうな綺麗な部屋だった。
そんな図書室のような空間は、何処を見ても男の子ばっかりで、とにかく浮いていた。別に女人禁制ではないはずなのに「女が何でここに居るんだよ」とばかりにこちらを見てくる。その度に、いたたまれない気持ちになりながら部屋を出入りしていた。
外に出ると普通に女の子も生活している世界だった。
やっと息が出来たぞ!と深呼吸をして堂々とした足取りで学校へ行った。放課後、友達と遊んでいたら随分と見慣れた子がいた。夢の世界を見ているわたしがよくよく目を凝らして見てみたら推しのKだった。
(何でいるのありがとう嬉しい)
小学生らしく無垢な笑顔で遊んでいるKと同級生とわたし。サッカーをしたり、鬼ごっこをしたり。とにかく遊び倒していた。ひたすら笑って、動いて。その時間が何よりも楽しかった。
夕方になって各々家へと帰るため解散になった。またあそこに帰らないと行けないのか…と憂鬱な気持ちになりながらも帰宅。またあの目で見られるのかと思うと体が重くなった。帰りたくなかった。ずっと遊んでいたかった。そんなことは無理なので大人しく部屋へ戻る。
Kは問題児だった。次の場面ではKはそういう設定だった。やたら白い調理室でホットケーキを作る授業があった。その空間だけアニメのように線が緑で、窓が開いていてカーテンがゆらゆら動いていた。そんな場所で一緒にホットケーキを焼いていた。
女の子たちが遠巻きにそれを見てくすくす笑う。Kはいたたまれなくなったのか下を向いていた。
「一緒にいたら笑われる。ごめん」
「気にしない。一緒にホットケーキ作って食べよ」
そんな会話をした。前に動画で見た綺麗に焼けるコツを思い出したのでそれ通りに焼いたらめちゃくちゃ綺麗な焼き色がついた。凄いだろ!とドヤ顔でKを見たら吃驚した顔をしてこちらを見てた。ホットケーキとわたしを交互に見て、何が面白かったのかハハッと笑って一緒になってホットケーキを焼いて食べた。
笑うKはいつも見ているKで、凄く安心した。
遠巻きに見てた女の子たちが居心地が悪くなったのか「…行こ!」とそこから出ていく。
(ざまあみろ!)と心の中で中指立てた。

そんな夢を見た。