音楽バカの集い

2022年4月10日の昼下がり、東京湯島のSports Bar & Dining BRAVOに音楽バカが集まった。
音楽が仕事なのに仕事が休みの時も音楽やってる音楽バカ、重たいキーボードをか細い腕で運び、私汗くさい女になってしまったとTwitterでつぶやく音楽バカ、音楽をやるために生まれてきて、徹底的に歌で空間を支配しようとする音楽バカ、その歌を最善の音で支えるためにギターとその他の楽器の響きを徹底的に追及する音楽バカ、その響きの要求に応えるため何百メートルもデカいウッドベースを歩いて運ぶ音楽バカ
タイから帰国したばかりで、時間を作って会いたい人もたくさんいるだろうに、貴重な時間をライブのために使う音楽バカ
父子という、一緒に遊ぶなんてお互いに微妙だよな、と思っているのに一緒にバンドをやってる音楽バカ

そしてそんな音楽バカが奏でる音を聴くために、一頃ほどではないとはいえ、まだまだ世の中には歓迎されていない感のある音楽の集いに足を運ぶ音楽バカ

2022年4月10日の湯島にそんな音楽バカが幸福感を共有する空間があった。

【RenKon Tips】
おっさん二人の時は「名前はまだない」、女子が入って華やいだら「RenKon Tips」となるらしい。
そのおっさん二人の音楽バカに付き合う女子も相当な音楽バカに違いない。
案の定、仕事を音楽にしているのに、事業としては成立しないのに楽しむためにこんなにクオリティの高い曲を作ってアレンジして、エンタメとして客を楽しませるパフォーマンスをする。。。なんて音楽バカなんだろう。

(参考までにKOJON-Gと森田 理紗子さんの仕事シーン)

【わたなべまき】
「自分探し系シンガーソングライターです。もう探しつくしたかもしれないんだけどね」というMCの印象と曲のタイトルで、彼女の近作『オニオンリング』を”日常描写系作品”なんて思ってしまったが、歌詞をしっかり聞くと自分探しの軸をこれまでとは違う比喩と曲調で表現している気がする。
だとすれば、そこまでして進化しながら自分探しを音楽で表現しようとしているのであれば、相当な音楽バカに違いない。

【BEERHIVE】
初めて見たときは、歌、アコギ、ピアノ、ドラムという編成だった。
でも今はサポートのウッドベースを加えた、歌、アコギ、ウッドベースという編成だ。
この編成を観る前は「どんな変化をしてるのか楽しみだ!」と思ってたのだが、たいして違いがなかった。
でも拍子抜けではなく、いや、むしろ、感動を覚えた。
おそらく、それまでに築き上げた、歌を支えるサウンドの感触を変えずにメンバー補強するという課題への答えがウッドベースだったのではないか、と。音楽バカを2名探すのはなかなか簡単ではないから。
最初からウッドベースを探したのか、たまたま縁があり「ウッドベースがあれば、ピアノが担ってた低音とビートを賄えるし、ギターはそのアンサンブル前提でピアノが担ってた旋律と音色を奏でればいい」と考えたのか。。。どちらにしてもそこまでして歌を支えようとする音楽バカとそれに付き合い会場の空気を支配しようとする歌い手が音楽バカでないはずはない。

【The Kinotetsu、Aya、名前はなだない】
父は友人である国際派ビジネスマンに最初に父子で作った曲の動画出演依頼をした。その友人が公開した動画を見て、息子の叩くドラムと父の作る歌詞が気に入ったという理由だけで、SNSで友人を通してつながってくれた当時タイ在住の声優でありボーカルのAya。
面識がないのにSNSでつながっただけで、コーラスやボーカルをプロにお願いしてしまう父は相当な音楽バカだが、それを引き受けるほうはもっと重症の音楽バカかもしれない。

息子にとって、父というものは、非常に厄介な存在だ。
そんな父は重度の音楽バカで、自分も音楽バカ。そんな父の「息子のボーカルを増やすとより良くなる」という思いを受けて、あまり気がすすまない歌を、やるからにはどうすべきかしっかり考えて叩きながら歌う音楽バカの息子。

アマチュアの父子バンドに対して、仕事でもないのに「感想」という建付けで立ち上げ時期は裏プロデュースをし手助けしてくれた、名前はなだないA
『Grab Loves』をゲストコーラス入りでやるにはベースが必要と思った父からの依頼を引き受け、へたくそな譜面をほめてくれて、最高のベースプレイで支えてくれた名前はまだないB
彼らにとって理想の世界は音楽バカが輝いている世界なのだろう。

2022年4月10日の昼下がり、東京湯島のSports Bar & Dining BRAVOの音楽バカは演者も聴衆も全員輝いていた。少なくとも僕はそう思った。


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