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『大辞泉』にみる辞書アプリユーザインタフェースの変遷


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スマホに辞書のアプリってあるけど、あれって歴史長いんだよね。iPhoneにApp Storeが登場した初期から、ずっとある。やっぱり電子辞書の代替ということで、スマホアプリにするのが分かりやすかったんだろう。弊社もいくつか辞書アプリを開発しているけど、App Storeが始まったその年に公開したはず。もう10年以上続いている、スマホ向けアプリの中でも最も長い歴史を持つカテゴリのひとつだね。

それだけ長くやっているので、ユーザインタフェースもいろいろ変わってきた。弊社で開発している国語辞典のアプリ『大辞泉』を例にして、その変遷を追ってみよう。

第一世代

最初期に出た辞書アプリのユーザインタフェースは、だいたいこんな感じになる。まず、画面上部にテキストフィールドがあって、そこに検索する言葉を入力する。そうすると、その下にあるテーブルに検索結果の見出し語が表示される。見出し語をタップすると画面遷移して、語釈が表示される。

第一世代辞書アプリのユーザインタフェース。検索結果画面
こちらは語釈の表示画面

シンプルだね。初期のiPhoneアプリのユーザインタフェースは、テーブルビューを主軸にすえていたので、それを踏襲したものだ。昔ながらの電子辞書デバイスに倣ったものでもある。

必要にして十分だからこれでもう完成としてもいいんだけど、欠点はある。まず、タップしないと語釈がわからないこと。だから似た言葉が並んでいる時は、ひとつずつタップして確かめないといけない。

「かんい」の検索結果。この中に求めることばあるか、一つずつ語釈を表示して確かめる

そして国語辞典に載っている語釈は、短いものが多い。というか、ほとんどの語釈が1、2行で済んでしまう。なので、語釈の画面ではほとんどが空白になってしまう。

簡潔で分かりやすい語釈。そして画面スカスカ

iPhone 5くらいまでは画面が小さかったからいいんだけど、スマホの大画面化が進むと広い画面を持て余すようになってきた。

第二世代

そんなこんなで新しく考えたのが、第二世代って呼んでいるユーザインタフェースだ。発想は単純で、検索結果を表示するときに、見出し語に続けて語釈の一部を表示するようにした。これなら検索したらすぐに語釈を確認できるので、目的の言葉を探しやすくなる。

「あい」の検索結果表示。語釈も一部表示しているので探しやすい、というかこの画面で完了する

ただしこれだと、一画面に表示できる言葉の数が少なくなる、というトレードオフが発生する。iPadなら問題ないんだけど、iPhoneの画面ではまだキツい。そこでキーボードを表示しているとき(検索している時はだいたい表示している)は、折りたたんで項目を重ねて表示するようにした。これで、言葉を入力している時は候補をたくさん表示できて、確認する時は語釈もいっしょに表示する、という使い分けができるようになった。

検索語の入力中。項目を重ねて表示して数を増やしている

こいつは、なかなかいいね。検索性と一覧性を両立させたぜ。

さらに新しい世代へ

まだまだ進化は止まらない。

まずはiPadの有効活用。第二世代で見出し語と語釈の一部を一緒に表示するようにはしたものの、iPadの広い画面はまだ持て余し気味だ。はっきりいって、幅が広すぎると読みにくい。

iPadでの表示。横に広いと読みにくい

いちおう、検索画面と語釈画面を並べるというユーザインタフェースも試したものの、いちいちタップしないといけないのは変わらないので、抜本的な解決とはいいがたい。

iPadでの試行錯誤。左側に検索結果一覧を並べてみた
横にするとこんな感じ。この画面は当時流行りだったスキューモーフィズムに則ってたので、今見ると時代を感じる

これを克服するためには、紙の誌面の知見を借りよう。それは段組だ。本格的な組版を導入し、段組を行うことで、広い画面で大量のテキストを読みやすく配置するのだ。

段組を実現した最新版の画面。枠も取り払ったスッキリとしたデザインに
縦書きでも段組を実現

段組とか組版とかいうと紙のメタファーにとらわれて、ユーザインタフェースとしての使いやすさを損なうのでは? と考えるかもしれないけど、そこは大丈夫。項目を長押しすればメニューが表示されるし、そのままドラッグして並べ替えることもできる。使い勝手はテーブル表示の時と変わらないね。

長押しでメニューを表示したところ。使い勝手は変わらず

段組を実現したことで、また別の発想が出てきた。語釈の表示は一部ではなくて、全部表示してしまえばいいのでは? となると、これはもう紙の辞書の誌面と同じだ。であれば、電子の辞書であっても本のように、先頭ページから順番に読めるのではないか?

この発想から生まれたのが、誌面モードだ。使い方は簡単。起動したら、辞書の誌面が表示される。あとはタッチしてスクロールするだけだ。これで30万語を一気にスクロールで読めるぜ! もちろん、見出し語の「あ、い、う、、、」の先頭ページにジャンプできるようなしかけも仕込んでおく。

誌面モードでの表示。右端に表示してあるスライダーで、見出し語ジャンプできる

これは辞書アプリの使い方の大きな転換点になるんだ。従来のアプリは、検索主体のユーザインタフェースだった。起動したら空の画面。検索する言葉を入力しない限り読むことができない。これだと、調べようと思った言葉しか見ることができないのだ。

つまり「知っている言葉しか調べられない」のだ。辞書ってのは本来知らない言葉を調べるもの。なのに、言葉を知らないと調べられない、ってのはおかしいよね。「知らない言葉を表示する」ために、誌面モードってのは絶対に必要だと考えているのです。

なぜこれがいままで出てこなかったかというと、技術的な問題だ。30万語の語釈を一度に表示して、レイアウトを自由に変更して、スクロールさせる、というのはハードウェア的にもソフトウェア的にも難易度がとても高い。近年のスマホの発達と、プログラミングで工夫を凝らすことによって、ようやく実現できたんだ。

iOSアプリ『大辞泉 4.0』
動作環境:iOS 15.0以降
価格:2,080円
アプリ内課金あり

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