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【句作_01】うつくしく

(追記:「うつくしく」の漢字表記は「美しく」ではありません。心が明るくなるような句は、この49句の中にはたぶんありません。せっかくページを開いてくださったのに申し訳ないです。)

●2022
▼師走

からっ風柚子湯夢見るスナフキン

繁忙期焦って啜るカップ麺

極月や〆切乱舞てんてこと

暖房の風音響く暗い朝

疲れ目にぼんやり光る冬そうび

徹夜明け床に散らばる木の葉髪

歳晩に響く呻きと腹の虫

数え日と埋まらぬ白紙に胃竦み

手付かずの仕事を数えて除夜の蕎麦

●2023
▼睦月

風邪ごもり横向きで見る紅い花

悴む手すって横目で見る白紙

寒梅の紅に見惚れる深夜二時

やる気出ず湯たんぽ腹に天仰ぐ

風邪ごもりにじむ遠くの冷蔵庫

〆切と熱でグルグル風邪ごもり

暗い部屋体温計のうるささや

風邪ごもりゼリーとポカリ底をつき

鼻鳴らし獣のように梅探し

〆切に急かされ起きる病み上がり

正月の楽しみ忘れ月終い

探梅の歩み遅まる〆切日

熱出せど有給なしの物書きや

のびた爪冷えた手で切る病み上がり

不摂生選り取り見取り風邪薬

▼皐月
夏の夜時計と心狂わされ

吸い殻と孤独がつもる夏の夜

雲母虫誰もお前を愛さない

悪夢にて撫でられた跡なめくじり

まといつく悪夢の香り梔子の

▼水無月
灯取虫過ぎた顕示欲は呪い

香水と苦い記憶を捨てられず

葬りたい影を濃くする西日かな

蝸牛何も進まず五時の鐘

暗闇の沈黙破る扇風機

脂汗かいて目覚める五月闇

五月闇傷痕深く抉られて

五月闇素数数えてやり過ごし

過換気と悪夢で明ける短夜や

短夜に紫煙の鎖ただ繋ぎ

腫れた目を閉じる間もなく明け早し

雨音をただただ数え五月闇

明け早く眠れないまま伸びひとつ

眠れずにひとりあやとり五月闇

眠れずにふらりふらりと桜桃忌

夏の風邪ガーゼのケットにこもる熱

夏の風邪微熱下がらずニャアの声

日盛りの光遮り床に伏す

バリバリとキュウリをかじり熱冷まし

自己嫌悪こころ砕いて夏の風邪

以上、「うつくしく(鬱句49)」。

【お知らせ】
福島県須賀川市のシティプロモーション冊子『須賀川辞典』のテキストをここ3年ほど書かせていただいています。今春、須賀川市の全世帯に配布されたのは「俳句編」となっています。

以下のURLよりPDF版をご覧いただけるので、ご興味いただけましたら、ぜひあわせてご覧ください。