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「およげ!たいやきくん」みたいな私たち

こんにちは。
森健太郎デザイン事務所の森です。

GWはいかがでしたでしょうか?
私は遠出はしなかったですが、地元のいろんなスポットに行くことが出来て充実した連休でした。今週からまた仕事をがんばろうと思います。



「てっぱんの上」と「うみの底」はどちらが居場所か

GWの最終日だった昨日、運転中にYouTubeMusicで音楽を聴いていました。
昔のアニメソング(残酷な天使のテーゼなど)を聴いていたのですが、自動再生で子門真人さんの「およげ!たいやきくん」が流れました。

よくよく聴いていたら、こんな悲しげな歌がなんで流行したのか不思議でした。また、たいやきくんの生涯は自分に似ているかも知れないと思いました。



まいにちまいにち
ぼくらはてっぱんのうえで
やかれていやになっちゃうよ
あるあさ ぼくはみせのおじさんと
けんかしてうみににげこんだのさ

「およげ!たいやきくん」


歌詞の冒頭から自分の事を歌っているようで、共感できるような気が滅入るような気分になります。

たいやきくんが毎日どれくらい鉄板で焼かれているのか定かではありませんが、「まいにちまいにち」似たような事が繰り返されるのは、それがどんな事であっても飽きてしまいますよね。

たい焼きが店主と何について喧嘩をするのか気になるところではありますが、繰り返される日常の中での些細な行き違いが喧嘩になったのでしょう。
海に逃げ込みたい気持ちも分かります。

毎日毎日、遅くまで残業して昇進も昇級もなく、会社での人間関係に疲れてしまうと、独立した友人やYouTubeや本に出てくる起業家や、ノマドワーカーに憧れます。

そうやって私たちも海に飛び込むんです。

はじめておよいだうみのそこ
とってもきもちがいいもんだ
おなかのアンコはおもいけど
うみはひろいぜこころがはずむ
ももいろさんごがてをふって
ぼくのおよぎをながめていたよ

「およげ!たいやきくん」


出社する事もない。上司や鬱陶しい取引先と顔を合わせる必要もない。少し寝坊しても怒られない。最高にストレスフリーな環境ですよね。国民年金と保険料の負担は重いけど、それがなんだというのか。今までのストレスから解放される事を思えば安いものです。


まいにちまいにち たのしいことばかり
なんぱせんがぼくのすみかさ
ときどき さめにいじめられるけど
そんなときゃ そうさ にげるのさ

「およげ!たいやきくん」

会社から近いと理由で住んでいたマンションも引っ越してしまいましょう。
ユニットバスのアパートでもシェアハウスでも好きなところに住めばいい。

「お前はいい歳こいて会社辞めてなにしてんの?」と事情を知らない奴らが何か言ってきてもそんな事は関係ない。俺は社畜として生きながらえるしかないお前らとは違うのさ。と自分に言い聞かせるが、順調に貯金は減っていく。初心者でも簡単に収入が得られると聞いて始めた仕事はどうもうまくいかない。気づいたら時給の良いバイトを探している。自由な時間を焦りが支配する。

いちにちおよげばはらぺこさ
めだまもクルクルまわっちゃう
たまにはエビでもくわなけりゃ
しおみずばかりじゃふやけてしまう
いわばのかげからくいつけばそれはちいさなつりばりだった

「およげ!たいやきくん」


自由と引き換えに経済的な困窮と将来に対する不安が募る。
このままではいけない。そう思い、ネットやSNSでこの状況を打開する為の何かを得ようとする。

「コツコツはじめるマネーセミナー」「資格試験」「経営者に学ぶ仕事術」「一流がやっているマインドセット」。

背に腹は代えられない。何か自分と自分の生活を成長させるものを吸収しなくては。

なけなしの50万円を指定口座に入金する。


どんなにどんなにもがいても
ハリがのどからとれないよ
はまべでみしらぬおじさんが
ぼくをつりあげびっくりしてた

「およげ!たいやきくん」

せっかくお金を払ったのだから週一回の講座とテキストはやらなければいけない。しかし、どうも気持ちが乗らない。ネットに散らばる正攻法や偉人のエピソードや国の政策を批判する記事がいやに目につく。



鯛焼きは鯛ではない

ただでさえ哀愁漂う歌に、さらに暗いサイドストーリーをつけてみました笑

私は実際にこのようになったわけではないですが、近い状況に陥ったことはあります。

たいやきくんは海に憧れていたわけでも、鯛になりたかったわけでもありません。繰り返す毎日にうんざりして、店とおじさんと折り合いが悪かっただけです。

本人からすれば死活問題なのですが、たいやきくんが取るべき行動は海に逃げ込む事ではなく、現状の課題や問題点を把握し、予測の出来る身近な範囲で変化を起こしていく事ではなかったでしょうか。

脱サラしてフリーランスやスタートアップで食っていくことは難しいからやめておけと言う話ではありません。

本当の問題を本人が知らなければ、付け焼刃の解決策に走ってしまい、剥がれる絆創膏を抑える為に上から絆創膏を重ねるような行動をしてしまいます。怒りやストレスに駆られて独立や起業をしてもうまくいきません。

たいやきくんが海で望むような生活が出来なかったのは、知識や資金がなかったからではなく、「望んでいなかった」ことと「適していなかった」ことが要因です。

鯛と鯛焼きは似て非なるものです。違うというだけで、そこに優劣はありません。

鯛が海の生活にうんざりして鯛焼き屋に逃げ込んでも、たいやきくんと同じように居場所がなく苦しむことになるでしょう。

同じことが人間の世界でも起こります。
現実を変える為に必要なのは、現実から離脱する事ではなく、焦らず冷静に現実の問題を明らかにすることです。

そして、自分の価値を認め、自分の行く先を見つめることです。

やっぱりぼくはたいやきさ
すこしこげあるたいやきさ
おじさんつばをのみこんで
ぼくをうまそうにたべたのさ


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