乗代雄介 『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』

(2020年の46冊目)ずいぶん昔、たぶん学生の頃から折に触れて読んできたブログが書籍化、し、さらにその管理者が芥川賞の候補になるぐらいの新鋭の作家として活躍している、という事実には、何重もの驚きを隠せなかったのだが、買い求めた本書のページをめくっていても一向に読んだ記憶のある作品が出てこないのには、また驚いた。

ブログにアップロードされた短編作品たちと、長い評論のような、随筆のようなもの(「ワインディング・ノート」)、それから作者自身を語り手にしながら幾十にもメタ化されたような自意識によって書く行為そのものをテーマ化するような小説(「虫麻呂雑記」)を650ページあまりの分厚さにて収録する。

ショート・ショートには何本かで大いに笑わされたけれど、やはり圧巻、というか、面白かったのは「虫麻呂雑記」で、作者の技術や技巧を感じさせるものであるし、日本の現代作家についてはほとんど無知といって過言ではない私の目には「なるほど、保坂和志とか高橋源一郎とかを読んでいる人は、こういう感じになるのか(ならないのか?)」と思った。こういう力がある人がブログを書いていた、その事実にもまた驚嘆なのだけれど。

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