このコンセプトは良いと思うのだが…… 『世界哲学史1』

(2020年の15冊目)筑摩書房80周年記念事業らしい。新書でダダーッと続く哲学史シリーズ(全8巻)の第1巻。シリーズ全体を見ると中世だけで3冊あるのが、今回の特色と言えるのだろう。そこは間違いなく責任編集者のひとりである山内志朗先生の御力か。でもなぁ、「世界哲学」、これも耳慣れない言葉であるのだけれど本書によれば2018年の国際的な学会で日本の哲学界から打ち出された概念らしい。これだけで「えー、グローバルな盛り上がりじゃないの?」と眉唾感がでてしまうし、この第1巻だけ取り上げても、その「世界哲学」というコンセプトに見合う内容になっているのかどうか。インドとか中国とか今で言う中東あたりの話にもページを割いているけど、それが「世界」とか「魂」というとてもギリシア哲学的(つまりは西洋哲学的な)キーワードによってアプローチ/相対化されていて「結局、世界じゃなくて西洋じゃん!」と突っ込みたい気持ち。内容の詰まり方も講談社からでている『西洋哲学史』シリーズのほうが詰まっている感じがするし(というか端的にリーダブルで、西洋哲学の驚き、衝撃、フックを上手く伝えている気がする)、人にフォーカスを当てていく中央公論新社の『哲学の歴史』シリーズ(すでに手に入りにくいのが残念)のほうがありがたいんじゃないか、っていう気もする。史学的なアプローチにこのシリーズの強みはあるのかな? ともあれ、やや期待外れ。だいたい、出口治明あたりにコメントを求めているあたりで怪しいと思ったんだよ!! 友人・知人も執筆陣に名を連ねているからとりあえずシリーズを追ってみたいと思うけれど、本当に他のシリーズが手薄にしている中世に強みがある、という以外に特色がなくなったら残念。そしてそれは果たして「世界哲学」なのか?笑

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