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工藤吉生の短歌【17】2015年7-9月〈20首〉

【第十七期】2015年7-9月。71首を発表。
「うたの日」に一時参加。
河北歌壇で一席を二度いただく〈1-2〉。
昨年につづいて「東北歌会」に参加。



〈1〉
携帯をカパリと閉じる音さえもすでに懐かしみを帯びながら


〈2〉
薄型のテレビが毎朝映し出す日本列島なめらかな島


〈3〉
遠くには青みがかった街があり青みがかっているオレかなあ


〈4〉
散会の後にプラカードは下がる 危機は今から立ち上がるところ


〈5〉
限界を超えた荷物で下校する中学生の眼のひかり良し


〈6〉
ひとつぶのホクロみたいな天体の中でもぞもぞ終わる一生


〈7〉
ちいさめの大人が乗ったブランコが前後する申し訳程度に


〈8〉
遊びにも緩急があり鉄棒に子供らもたれかかる午後四時


〈9〉
本来は目立つ色だが時を経て自然な色の安全の旗


〈10〉
子を抱いた母親、男、警官のいずれも黒くして夜がくる


〈11〉
石ころがシューズの中に紛れ込み足裏にある今のこころは


〈12〉
なんとまあ。明るく晴れた日曜に泣いてわめいて怒っている子


〈13〉
半袖にしてもずるずる降りてきて長袖になるオレの生活


〈14〉
柄にもなく深刻なことを考えていたら畳がずいぶん近い


〈15〉
イエスに似た外人に道をたずねられ「わかりません」と三回言った


〈16〉
右耳から入れた言葉が左から抜けてすずしい海へと至る


〈17〉
足払いネコにかけても転ばない 裸になれるデブはいいデブ


〈18〉
おじさんのキャリーバッグはおじさんに引かれそのまま男子トイレへ


〈19〉
屋根の上にソーラーパネルを置いている家の子供の歯科矯正具


〈20〉
膝蹴りを暗い野原で受けている世界で一番素晴らしい俺





〈1〉〈2〉河北歌壇、
〈3〉~〈7〉毎日歌壇、
〈8〉〈9〉日経歌壇、
〈10〉うたつかい「夜」、
〈11〉うたらばブログパーツ「足」
〈12〉「歌壇」の読者歌壇
〈13〉~〈18〉塔
〈19〉角川「短歌」 公募短歌館
〈20〉うたの日「膝」



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