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カウント【短編小説】


99324・・・

99325・・・

99326・・・

どうにか10万回はきりそうだ。

時刻は23:56

24時までに今日1日の脈の回数が10万回をきらなければクリアだ。

あと1分・・・

残り500回分も余裕を残してのクリア。


ピローン

メールが来た。

『オメデトウゴザイマス・レベル6・クリアデス

ツギノ・ミッションハ・レベル7

********

1カイ・デス

24ジカン・1カイ・カウントシナケレバ・

レベル7・クリアデス』


何だこれ?今までこんなことはなかった。

何をカウントするか書いてない。

しかも1回って・・・

1回でもカウントしたら・・・


・・・死ぬ


よく考えたら初めから妙なバイトだった。

人体実験!たった1週間7つの条件をクリアするだけで

1億円!!!

バイトを辞め、彼女にもフラれ、やけくそでこんな胡散臭いネットの広告に乗ってしまった。

1億円手にして豪遊しようと思ったが、手続きを進めていくと失敗したら死ぬかもしれないと書いてあった。

まさか本当に死ぬことはないだろうという思いと、本当に1億円ほしいという矛盾した気持ちでそのサイトにログインして登録した。

1週間くらいたって登録したことも忘れかけていたころ、自分宛に封筒が送られてきた。

そこには、小さい紙にQRコードが記されていて、それとカプセルが1つ入っていた。

スマホでQRコードを読み取ると、妙なサイトへと繋がった。

そこには、本日中にカプセルを飲んで、次の日の午前0時から人体実験がスタートするなどと説明が書いたあった。

基本的に、指定された回数をカウントしなければクリアで、ミッションは全部で7つ。7つクリアで1億円らしい。

恐る恐るカプセルを飲むと、23時50分ころメールが届いて、レベル1ミッションと書いていた。

『レベル1・ミッション

ガイシュツ・1カイ・デス

24ジカン・ソトニガイシュツシナケレバ

クリア・デス』

とだけ書かれていた。

1日外に出ないだけで1つクリアなんて、簡単すぎて失敗してもやっぱり本当に死んだりしないのではと、そんなに危険な実験ではないと勝手に判断した。

それからレベル2

歩数、3000回


レベル3

放尿、7回


レベル4

咀嚼、1000回

ソシャクの意味が分からず、辞書で調べたら噛むことらしいので、その日は固いものは食べず、ゼリーとかばかり食べた。


レベル5

瞬き、10000回

ひたすら寝た。


レベル6

脈、100000回

1分間に60回として、24時間で86400回。軽い運動だけですぐに1分間で80とか90いってしまうので、なるだけ動かず、お風呂も脈が上がりそうなので入らなかった。

数えていくのはかなり疲れたが、1億円と思って頑張った。


そして、レベル7

1回・・・

何か分からないが、何かを1回やらなければ1億円。

とにかく寝ることにした。おそらく、今までのミッションから考えて、そう難しいことではない。そして、同じミッションもない。普通にしていたらクリア出来るものばかりだった。

失敗して自分が死んだりでもしたら、この人体実験をやってる側だって困るだろう。

思えば、これまでのミッション。生活する上、生きていく上で必要なことばかりだった。おそらく、食べても、瞬きしても、トイレも、自由にしてもクリア出来る内容な気がする。


23時52分

やはり何も起きなかった。あと数分で1億円。

あと数分でやることなんて何もない。

1億円手に入ったらこれまで出来なかったことをやってやる。

旅行にも行きたいし、こんな狭いアパートなんか引っ越してやる。

毎日飲みに行って、遊びまくってやる。

ブランド品を身に付けて、高級車乗って、自分をフッた元彼女に見せつけてやる。


ふぁぁ

なんだか眠くなってきた。明日には億万長者。

楽しみだ・・・



数日後。男性のアパートの住人から死臭がすると警察に連絡が入り、警察が駆け付けると一人の男性が、幸せそうな笑顔のまま死んでいた。

手にはスマホを握りしめ、争った形跡もなかった。

警察が男性の手からスマホを取って調べると、数日前の24時に一通のメールが届いていた。


『レベル7・ミッション

テニシテイナイオカネデユメヲミル

1カイ・カウントカクニン

シッパイデス・ザンネンデシタ』

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