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引きこもるのでもなく、知人と話すのでもなく。街中で匿名性に身を浸したい夜もある

何日も家にこもって仕事をしていると、だんだんと精神衛生に悪影響がきたされていくのを感じる。適度に外の空気を浴びたり、家の中でできる気分転換を取り入れたりしていても、やはり「外出」でしか発散できないストレスというものがある。

そういうときは、特に喫緊の必要性がなくても、なんとなく街に出てカフェに行ったり、特に買う気もない店を歩いてみたりすることがある。とりわけ疲れているときは、人と話すのも億劫で、知人に会ったり顔馴染みの店に行ったりすることを意図的に避けたくなる。そんなときにする街歩きは、ただ街の匿名性に身を浸しながら、うろうろすることだけを求めているのだと思う。

(※)本ブログは、株式会社PLANETSが発行する雑誌『モノノメ 創刊号』について、そのいち編集部員である僕が、個人的な所感を綴ったものです。このブログを通じて、より多くの方に『モノノメ 創刊号』を手に取ってもらい、既に購入いただいた方にはより多角的に雑誌を読む一助としてもらいたいという目的で書いています。

自室にこもることで得られる完全な孤独でもなく、見知った人とのコミュニケーションでもない。匿名性の中で人と一緒にいること。なぜだか理由はよくわからないが、ときに人はそうした状態に身を浸したくなる

学校や仕事の帰りに、特にあてもなく寄り道してみたくなるのも、休日に自室ではなくなんとなくカフェで本を読みたくなるのも、そうした匿名性への耽溺を求めてのことなのかもしれない。


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PLANETSの新雑誌『モノノメ 創刊号』に収録されている、[妄想設計]「本瀬あゆみ|『飲まない東京カフェ』計画」では、「飲まない東京」プロジェクトの目指す究極の目標である、「飲まない」東京の夜の楽しみ方を体現する施設を実際に「つくる」ための第一歩が示される(「飲まない東京」プロジェクトの趣旨についてはこちら)。建築家の本瀬あゆみさんの協力のもと、「飲まない東京」カフェの構想が具体的に明らかにされていく。

このアイデアはまだまだ検討中のもので、これからも議論を重ねてアップデートしていく予定です。ただ、根底にある都市への考え方はたぶん、変わらないと思います。人間同士が(SNSのように)直接つながるのではなく、飲み物や本という「もの」を通じて間接的につながる。コミュニティのメンバーシップはないけれど、その場にいられるパーミッションがある。お互いがお互いを視界に収めているけれど、気には留めない。でも確実にその場を共有し、その場をいい状態に保ちたいと全員が思っている。いや、自然と思える。そんな場に──まるで理想の「都市」を体現したような空間に──できたらいいなと思っています。(p163)

「もの」を通じた、パーミッションによるつながり。これこそが前述した、「匿名性に身を浸したくなる」ニーズを満たしてくれるものだろう。手前味噌だが、この「飲まない東京」プロジェクトのいいところは、ただ逆張りで既存の飲酒文化を批判して終わりではない点にあると思っている。建設的でポジティブな運動のこれからがとても楽しみになる、街にこんな場所があったら楽しいだろうなと、ワクワクする記事。


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